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相続税改正を巡り、農業団体が大規模デモ、政府との溝埋まらず(英国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月26日 1時30分

英国のスティーブ・リード環境・食料・農村地域相は11月21日、地主、不動産所有者、事業主の団体CLA(田園土地・事業協会)の会合で講演し、「今週初めにウェストミンスターで目にしたように、(相続税の)農業資産控除の改革について、会場の皆さんの多くが感じているフラストレーションと不安を認識している」と語った。10月30日に政府が示した相続税改正案(2024年11月8日記事参照)を巡って、11月19日に英国の農業団体NFU(全国農業者組合)が政府機関や議会のあるウェストミンスターで大規模なデモを行い、多数のトラクターがロンドン中心部を走行した。

リード環境・食料・農村地域相は2023年のCLAの会合で、労働党は農業資産控除には手を出さないと答えていた。これについて「そのように答えたのは、前政府の隠蔽によって、この国の財政危機の全容を把握していなかったからだ」と釈明した。また「農業を営まない人が相続税対策で農地を買うことによる人為的な農地価格の高騰により、若い農家が自分の農場を設立することが困難になっている」として、農業資産控除の改革の必要性を繰り返すとともに、「農業資産控除の見直しの影響を受けるのは年間500の不動産のみだ」と述べた。

一方、CLAは独自の試算により、7万戸の農家が影響を受けると推計している。英国政府の年間500戸という推計に対しても、1世代(40年)で2万戸の農家が影響を受けると主張する。CLAのビクトリア・ビビアン会長は前述の会合で「CLAの全てのモデリングは、農家がこの変更を受け入れる余裕がないことを示している。農場や農場を中心とした多角化事業(農作物の加工販売や再生可能エネルギー事業など)には、この税金を支払うほどの収益性はない」と述べ、複数世代にわたる農村のビジネスにとって相続税軽減は必要不可欠だと主張した。

政府とCLAの試算の違いを巡っては、BBCのファクト・チェックの報道(11月19日付)が政府寄りの主張ではないかとほかのメディアに批判されるなど、報道も巻き込まれる論争となっている。

(林伸光)

(英国)

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