「着衣の女性を撮影で逮捕」は妥当?

JIJICO / 2014年9月10日 15時0分

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「着衣の女性を撮影で逮捕」は妥当?

迷惑防止条例違反となることは十分あり得る

先日、神奈川県で、電車に乗車していた女性の顔や足などの写真を撮った男性が逮捕されるという事件がありました。これについて「この程度の事で逮捕されるのか?」と思った人も少なくなかったようです。

報道によると、逮捕容疑は県迷惑防止条例違反とのこと。この条例は「何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」で「卑わいな言動」をしてはならないと規定しています。

本件の場合、被害者が「公共の乗物に乗っている人」であることは間違いありません。また、事件の詳細がわからないので断定はできませんが、顔や足などを本人の了解なく撮影していますので、少なくとも被害者が羞恥し、または不安になる方法であるといえると思われます。問題は写真撮影が「卑わいな言動」に当たるかです。

条例は同じ条文で、着衣の上から人の体に触れること、及び下着をのぞき込んだり盗撮することを禁止していますので、「卑わいな言動」の意味も、これら痴漢・盗撮行為に準じるものと考えるべきでしょう。本件では、詳細が明らかではありませんが、撮影行為や撮った写真の内容が、下着等の盗撮に準じる卑わいなものと判断されたのであれば、迷惑防止条例違反となることは十分あり得ると思われます。

逮捕できるかどうかと犯罪の重さは必ずしもイコールではない

では、この事実関係で被疑者を逮捕することは妥当なのでしょうか。報道では「女性が被疑者を取り押さえた、現行犯逮捕」となっています。現行犯逮捕とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者、または法律が規定する「罪を犯したことが合理的に疑われる要件」を満たす者については、何人でも被疑者を逮捕できるというものです。逮捕は被疑者の逃亡・証拠隠滅を防ぐために行われる手続きです。この事件であれば、そもそも被疑者がどこの誰かもわからず、見失ってしまうと特定することは困難です。また、デジタルデータは消去が容易なので、被疑者を逃がしてしまうと証拠を消去されてしまう可能性もあったといえます。特に現行犯の場合、逮捕の必要性を厳密に判断していると被疑者を逃がしてしまいますので、速やかな逮捕も可能とされています。

以上の事情を考えると、本件では逮捕はやむを得なかったと言うべきでしょう。また、逮捕できるかどうかと犯罪の重さは必ずしもイコールではありません。軽微な犯罪でも逮捕の必要性がある場合もあれば、重大犯罪でも逮捕されず在宅で捜査がなされる場合もあるのです。なお、法律は逮捕して身体拘束をすることができるのは逮捕から72時間までであり、期間は厳格に定められています。引き続いて身体拘束を行うためには、改めて「勾留」という手続きを取る必要があります。今回のケースでは、勾留されずに釈放されるということも十分あり得ることでしょう。

多くの都道府県では、神奈川県と同様の迷惑防止条例が定められています。痴漢・盗撮が許されないことはもちろんですが、条例違反に当たるかどうかだけではなく、相手方が不快に感じる行為をしないという当たり前のルールもきちんと守られなければなりません。他方で、刑罰を伴う条例ですので、その適用範囲が不当が広がることのないよう、注意していかなければいけないと思います。

(半田 望/弁護士)

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