廃虚の「ドリームランド跡地」専門家が考える活用プラン
JIJICO / 2014年11月23日 15時0分
廃虚の「ドリームランド跡地」専門家が考える活用プラン
「奈良ドリームランド跡地」競売実施も応札は無し…
関西在住であれば、一度は耳にしたことや遊びに行ったことがある人も多いと思われる「奈良ドリームランド」(奈良市 約29.8ha)。今、夢の国が大変なことになっています。一時は隆盛を誇った「奈良ドリームランド」ですが、競合の増加や趣味の多様化などにより、入場者数は年々減少。今や滞納された税金と古びた遊具の山が築かれています。
先日より競売が実施され、価格も大幅にディスカウントされましたが、応札はありませんでした。なぜなら、莫大な遊具の撤去費用と共に、用途制限(学校や病院といった公共性の高いものにのみ利用可能)があるために、誰も手が出せないのです。
奈良市、デベロッパー、市民に主体性を持って参画してもらう
このような問題が横たわる中で、具体的に何に活用するかは後ほど述べるとして、まずは関係者である所有者、奈良市、奈良市民にとって、ベストな方法を考えるということが重要です。キーワードは「主体性を持つ」ということ。つまり、自身の問題として考えてもらうのです。
そのロードマップとしては、まず、土地を鑑定し滞納債権分を奈良市が没収します。その上で3~10年後の売却を想定した企画を公募し、プランを確定。土地は奈良市、建物はデベロッパーと奈良市民(法人、個人)により出資を募り参画してもらいます。
開発後、マーケットの状況を見ながら3~10年後にREITに土地・建物を一体で売却します。当然、奈良市にはその間の地代収入と売却代金が入るため、収支でいくと十分なプラスが見込めるでしょう。また、施設価値を上げるために様々な行事の企画やそのための支援をする必要が生まれます。当然、デベロッパーは開発利益を得るために知恵を絞り、価値向上に務めるでしょう。市民においても、出資することで当事者意識が芽生えます。
ポイントは、企画、開発、売却という各プロセスにおいて、厳密なコンペ形式を取り、その評価については事業性・公共性・実現性といった各評価指数および市民も交えた評価を行う評価機関によって検討することが重要です。
土地が駅を活性化させる、「逆転的発想」のプロジェクト
では、実際にどういったものが考えられるでしょうか。これはマーケティングの上、具体的な事案として検討する必要がありますが、例えば今、奈良で盛り上がりを見せているプロバスケットボールリーグを軸としたスポーツや、企業のコンベンションにも使えることができる多目的コンベンションホールが一つの候補として挙げられるのではないかと思われます。
もちろん単独では成立が難しいため、奈良に少ない大型の複合商業施設を併設することで収益性と集客性を上げる必要があるでしょう。それが実現できれば、従来から利用面が課題であった無料バス等の交通を整備することも可能となります。
今までの都市開発は、駅のターミナル化により、その価値創造が進んできました。このプロジェクトは、土地が駅を活性化させる、いわば「逆転的発想」のプロジェクトといえるでしょう。
土地を関係者の都合で泣かせてはならない。土地をいかに活かすか、それを考えることが私たち専門家に与えられた命題なのです。
(今西 頼久/不動産コンサルタント)
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