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一筋縄ではいかない「ネーミングライツ」売却が抱える問題点

JIJICO / 2015年3月6日 14時0分

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一筋縄ではいかない「ネーミングライツ」売却が抱える問題点

収入を期待する施設と宣伝効果を期待する企業

「ネーミングライツ」という言葉を知っていますか?企業名や商品名などを、主にスポーツ施設の名前につけることができる権利です。ネーミングライツは、施設側には収入が得られるメリットがあり、企業側には宣伝効果が期待できます。日本では、2000年代からプロ野球の球場に企業名をつける例が増えており、知っている人も多いでしょう。有名どころでいえば、「福岡 ヤフオク!ドーム」や、「京セラドーム大阪」などがあります。

さて、このネーミングライツですが、以下のような問題を抱えています。
1)地方施設にはネーミングライツの売却希望企業が現れない
2)住民の合意が得られない
3)施設名の変更による混乱が起きやすい
4)企業側の不祥事によりイメージダウンにつながる

地元住民の施設への愛着が名称変更のハードルになる場合も

まず、1については、2年前から滋賀県が県内18施設のネーミングライツ売却を試みたところ、現在のところ1件しか成約していないというニュースを目にしました。企業側は、広告効果による営業収益の増加を目的としてネーミングライツを購入するので、費用対効果を考えます。大きな大会が少なく、大衆の目に触れる可能性の低い施設については、購入に二の足を踏むということにもなるでしょう。

また、ネーミングライツは一般大衆向けの広告ですから、消費者に向けた商品を手掛ける企業にこそ有意義です。そういった企業の少ない都市では、「募集しても売れない」というのが現実となってしまいます。

2については、広島市民球場がネーミングライツの売却を企画した際に「市民球場」という名称を愛するファンからの反発にあい、募集を断念したという出来事がありました。やはりスポーツ施設である以上、地域住民に愛されなくてはいけません。その辺の折り合いは重要になってきます。

施設の名前が定着せず、地域に根付かない可能性も

3については、ネーミングライツの契約期間にも関わってきますが、短期間でころころ名前が変わることで施設の名前が定着せず、地域施設として根付かなくなるという問題です。オリックスの本拠地である旧グリーンスタジアム神戸が、「Yahoo! BBスタジアム」から「スカイマークスタジアム」から「ほっともっとフィールド神戸」と、12年間で3回名前が変わった例があります。私は地元民ですが、名前が変わってからも「グリーンスタジアム」と言われた方がいまだにピンときます。

4については、かつてプロ野球・楽天の本拠地であった宮城野原公園宮城球場のネーミングライツを得ていたフルキャストが、労働者派遣法違反という不祥事を起こして契約を解除されたというケースがありました。こういうことが起こると、企業側はもちろん、名前を売った施設側にとってもマイナスイメージは避けられず、共倒れとなります。

以上のような問題点を考慮すると、ネーミングライツを売る側も買う側も、メリット・デメリットを良く見極めなければいけません。

(河野 晃/弁護士)

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