万引きで狂う人生、偽装動画投稿で少年院送致の判断基準
JIJICO / 2015年4月15日 14時0分
万引きで狂う人生、偽装動画投稿で少年院送致の判断基準
万引きを装う動画の投稿で少年院送致に
少し前、スーパーマーケットなどで商品に爪楊枝を入れ、商品を万引きしているような動画がインターネットに投稿された事件で、動画を投稿した少年が偽計業務妨害罪で逮捕されたことがありました。この少年について、その後、家庭裁判所の審判で少年院送致の決定がなされたと報道されています。
この少年に、なぜ少年院送致の処分がなされたのでしょうか。少年事件においては、記録も審判書も非公開とされていますのであくまで一般論になりますが、この点について考えてみましょう。
罪を犯し、処分を受ける際に満20歳未満の未成年であった場合、刑法ではなく少年法により、家庭裁判所の審判で処分が決められます(なお、一定の場合には成人と同様の裁判を行うことも定められていますが、その場合でも保護処分相当として家庭裁判所に送り返されることがあります)。
多くの少年は審判を経て更生している
少年法はその目的として、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」としており、刑罰を目的とはしていません。これは、非行を犯した少年も、取り返しがつかない程犯罪に染まっているということは極めて稀で、多くは生活環境や交友関係などを見直すことで、成人の場合よりも立ち直りやすいため、刑罰による処分ではなく、立ち直りに向けた教育を重視しよう、という考えに基づくものです。
筆者も数十件の少年事件を担当しましたが、多くの少年は審判を経て更生しており、少年法の理念は間違っていないと考えています。具体的な処分として、極めて軽微な事件等で審判や処分が必要ないと判断される場合を除き、大きく分けて「保護観察に付する」「児童自立支援施設に送致する」「少年院に送致する」との3つの処分が規定されています。
少年への処分は何を基準に決められるのか?
保護観察処分の場合、少年は一度社会(家庭)に戻され、保護観察所による保護観察として生活指導等を受けながら、生活の立て直しと更生を行うことになります。少年院送致の場合、一定期間(6カ月程度から数年といわれています)少年院に収容し、少年院での集団生活や矯正教育を受けることで更生に向けたスタートを歩み出すことになるのです。
では、この処分は何を基準に決められるのでしょうか。成人の場合、刑法により刑罰の種類・内容が定められていますが、少年法には犯罪の種類・内容に着目して処分を決めるという規定はありません。少年法の目的が少年に対する矯正、及び環境調整であるので、処分も主に少年にどのような矯正教育が必要という点や、少年の生活環境が整っているかどうか(「要保護性」といいます)という点から判断されます。
少年の立ち直りのために大人が何をすべきか
そのため、例えばガム1個を万引きしたとしても、何度も事件を繰り返している場合や、考え方に偏りがある場合、生活環境が劣悪で保護の必要性がある場合など、社会内での教育では不十分と考えられれば、少年院送致の処分がなされることもあるのです。
以上を前提に今回の事件を考えてみると、事件としては偽計業務妨害と、比較的軽微な類型ではあるものの、複数回の非行を行っていることから、非行は進んでいると判断された可能性があります。また、記録が非公開のため推察になりますが、動機や本人の正確・環境などが、処分を決める要素として考慮された可能性も考えられるでしょう。
少年法については賛否両論ですが、特殊な事件を見るのではなく、たまたま躓いてしまった少年の立ち直りのために大人が何をすべきか、ということを定めた法律であることも大事にしてほしいと思います。
(半田 望/弁護士)
この記事に関連するニュース
-
朝ドラ「虎に翼」タッキー(滝藤賢一)逝く…SNS「どうぞ安らかに」「仕事行きたくない」
iza(イザ!) / 2024年9月13日 9時1分
-
朝ドラ「虎に翼」寝たきりのタッキー(滝藤賢一)に悲痛な声…SNS「もう長くない?」「明日が怖いよ」
iza(イザ!) / 2024年9月12日 9時18分
-
拡散された暴行動画の波紋...高校生殺害で10代4人が罪を認める
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月10日 16時40分
-
「誰も取り残さない社会」を目指す特別番組~「光る君へ」須麻流役・DAIKIと母/ギャラクシー賞「コウセイ(更生/公正)ラジオ」
PR TIMES / 2024年9月10日 14時45分
-
気に食わない芸能人にSNSで誹謗中傷したら休業に…でも「表現の自由」があるから私は守られますよね?【弁護士の回答】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月27日 6時15分
ランキング
-
1〈政治家を志した元女子アナが転落死〉「誹謗中傷とデマに悩んでいた」慶応ミスコン出身、外資系コンサルにも勤務、華々しい経歴も衆院補選の公認が一転取り消しに
集英社オンライン / 2024年9月10日 17時20分
-
2レールの分岐器にカメが挟まる…駅構内の信号が赤から切り替わらず、JR奈良線11本に運休と遅れ
読売新聞 / 2024年9月14日 8時51分
-
3関東〜九州の18都府県に熱中症警戒アラート 猛暑日予想のところも
ウェザーニュース / 2024年9月14日 7時20分
-
4店に行っていないのに万引き疑いで男性を誤認逮捕、先入観で防犯カメラ確認も不十分…その後男性の知人逮捕
読売新聞 / 2024年9月14日 6時50分
-
5兵庫斎藤知事、迫られる失職か議会解散 県議会維新も不信任案共同提出、19日可決へ
産経ニュース / 2024年9月13日 21時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください