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命名権ビジネス明暗、成功と失敗の分かれ目

JIJICO / 2015年6月10日 10時0分

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命名権ビジネス明暗、成功と失敗の分かれ目

広告は世相を映す鏡

命名権(ネーミングライツ)の契約によって「ボディメーカーコロシアム」との名称が付けられていた大阪府立体育会館が、4月から元の名称に戻っているとの報道がありました。年間2500万円の契約料を支払っていた企業が、費用に見合う効果が得られないと契約継続を拒否したためです。この一件から、命名権ビジネスの難しさが浮き彫りになった格好です。

広告は世相を映す鏡といわれています。例えば、新聞は記事の下にある広告収入があるため、毎月の購読料を安く抑えることができます。書籍広告、死亡広告、謝罪広告、全面商品広告など、洗練された広告の活字を追うだけでも、今が読み取れるものです。

今や世界最大の広告会社はグーグル

今や世界売上高最大の広告会社は、電通でもWPPでもオムニコムグループでもありません。誰もが知っているグーグルが、世界最大の広告会社です。ご存知のようにグーグルのビジネスは主力の検索事業を基軸に多様なサービスを提供していますが、一部の例外を除き、利用料は無料です。フリー化により多くのユーザーを囲い込み、広告を配信するビジネスモデルで年商8兆円に迫る収入を上げています。

かつて、グーグル日本法人代表だった村上憲郎氏の話を聞いたことがあります。
当時、検索エンジンの双璧だったヤフーとグーグル。この2社は表向きには検索を売りにしていますが、目指す方向が違っていたと話していたのが印象に残っています。

広告主に受け入れられる要因は、三方よしのビジネスモデル

「書籍になぞらえるとヤフーは目次を目指し、グーグルは索引を目指した」。ヤフーはポータルサイトとして知りたい情報や興味があることをカテゴリーごとに整理し、ユーザーに素早く、欲するコンテンツに導く「目次」のような機能を強化しました。一方、グーグルは書籍の中に出てくる用語や固有名詞などを「索引化」し、検索窓に入力されるキーワードを商品化しました。

それが、アドワーズやアドセンスといったこれまでにない全く新しい広告手法につながりました。さらに、無償で海外の観光地の街路が見渡せるストリートビューや店内までのぞくことができるインドアビューといった新しい広告モデルが出てきています。

地方の中小企業にとってはこうした格安でありながら、広告の効果測定が容易にできるグーグルのインフラを活用しない手はありません。忘れてならないのは、両社ともユーザーの利用料は無料が原則になっていることです。

つまり、広告主に受け入れられる要因は、三方よしのビジネスモデルになっているということです。ユーザーにとっては、無料あるいは低価格で商品やサービスを利用できます。広告主にとっては、より効果的にターゲットに訴求することができます。媒体は広告効果が上がるように切磋琢磨し、結果として社会にとり有益な情報がもたらされることになります。

命名権はユーザーメリットがあって初めて成り立つ

冒頭で紹介したネーミングライツも、比較的新しい媒体といえます。当方は福岡市在住のため、ネーミングライツと聞けば真っ先に現在の「福岡ヤフオク!ドーム」が浮かびます。

1993年、福岡ドームは当時の福岡ダイエーホークスの本拠地球場として建設されました。2004年、球団はダイエーの業績不振からソフトバンクにオーナーチェンジし、2005年、ヤフーが球場の命名権を5年契約25億円で取得し、「福岡Yahoo!JAPANドーム」として一新しました。そして、2013年から現呼称に変更しています。

ネーミングライツのメリットは、地域に愛される企業イメージの醸成、NHKなどの国営放送でも企業名を露出できる公共性などが挙げられます。反対にデメリットはスポンサー企業の不祥事などで施設イメージの毀損や広告効果が測りにくく、広告料が割高になりやすいなどが挙げられます。

そもそも、広告の社会的使命はモノやサービス料金の低廉化を促すことです。利益率の極めて高い命名権の付与は、財政難の自治体などにとってはまさに打ち出の小槌です。とはいえ、全ての命名権ビジネスがうまくいっているわけではありません。単純に名前の使用権を与えるだけではなく、施設とスポンサーの副次的な協力、つまり、サービスの向上や利用料金の低減などユーザーメリットがあって初めて成り立つ広告手法に思えてなりません。

(村上 義文/認定事業再生士)

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