達人に学ぶ!相手との距離を縮める声と言葉の使い方
JIJICO / 2017年8月30日 11時50分
達人に学ぶ!相手との距離を縮める声と言葉の使い方
鶴瓶さんの自然体トークに見る「相手の心をほぐす」コツ
出会いのほんの数秒で相手の心をほぐしてしまうテクニックにかけて笑福亭鶴瓶さんの右に出る人はいないのではないでしょうか。NHK総合テレビの「鶴瓶の家族に乾杯」は、鶴瓶さんとゲストがステキな家族を求めて日本各地を旅する長寿番組。アポイントなしのぶっつけ本番で、たまたまその場を通りかかった地元の方に声を掛けて、そこから番組は展開していきます。
有名人がカメラクルーと一緒に自分に近づいてきたら、普通ならどうでしょう?身構えてしまいそうですね。でも、あの気さくな笑顔と自然なトークで心の扉を開かせてしまいます。
最初の声掛けは「学校の帰り?」「何してるんですか?」「いいですね~このまち」などごく短い言葉です。まず、相手が反射的に答えられるような一言で相手の最初の反応を引き出し、「この辺に住んでるの?」「ここは何屋さん?」など短い質問をテンポ良く重ねることで、言葉のキャッチボールを続け、どんどん相手との距離を縮めていきます。
また、相手「私がお嫁に来たときには○○で…」鶴瓶「ふんふん。私(相手のこと)がお嫁に来たときには○○やったんや」のように、相手の言葉を言い換えず、そのまま繰り返すことも多く、これは相手と同じ視点に立って、相手を丸ごと受け入れる包容力を感じさせます。
実は、私も何十年も前ですが、関西のある放送局で鶴瓶さんに出会ったことがあります。当時の私は就職活動中の女子学生。就職セミナーが終了し、エントランスにいたとき、鶴瓶さんが、司会を務める人気番組の公開収録が終わったらしく、ファンに囲まれて出てこられました。
一人ひとりと「きょうはありがとう」と握手をしている様子を離れたところから眺めていると、ふっと鶴瓶さんと目が合いました。すると次の瞬間、私の方まで来て手を差し出し、「きょうはありがとう~って、番組に来てたんと違うわな?(笑)きょうは何?」と話しかけてくれたのです。きっと、放心状態でたたずんでいるリクルートスタイルの私も見て「この子、何だろう?」と思われたのでしょう。就職活動のことを話すと「そうか、頑張りや」と言ってくれた笑顔にとても励まされました。
鶴瓶さんの自然体トークの原点は「人が大好き」という気持ちだと思います。「人が大好き」だから、相手が誰であっても出会いを大切に「この人はどんな人だろう」「今、何をしてるんだろう」と興味を持って声を掛け、相手の懐に飛び込みます。そして、誰でも自分に興味や関心を持ってくれる人に対して悪い気がしないものです。相手も警戒心を解き、お互いに安心してトークを楽しむことができるのです。
阿川さんがゲストのトークを滑らかに引き出す相槌のコツ
週刊文春やTBS系で放送中の「サワコの朝」での対談が人気の阿川佐和子さんも相手を構えさせない自然体のトークの達人です。
阿川さんはとにかく聴き上手。目をキラキラ輝かせ、面白そうに、興味深そうに深くうなずきながらゲストの話に聴き入っています。
そして、相づちが実に豊富かつ絶妙です。相づちは「あなたの話を聴いていますよ」「関心を持っていますよ」を示す言葉です。阿川さんの相づちは「あああ~」「は~」「ええ、ええ」「そうですよね」「へ~~」「ほぉ!」「○○(オウム返し)」と、そのトークを心から楽しんでいるからこその自然な言葉、表情、タイミングで、ゲストのトークをより滑らかに調子づかせる「合いの手」のような効果があります。
ときには「~ということ?」「~みたいな?」と、少し先廻りしたり、要約して言葉を投げかけてみたりもされていますが、それもごく短い一言で、決して自分が喋り過ぎず、相手が「こんなに面白そうに聴いてくれて嬉しい」と思える安心感を醸し出しています。
コミュニケーションの第一歩は「相手への関心」
素のまま相手の懐に飛び込み、自然な言葉のキャッチボールを引き出す鶴瓶さん、自らも楽しむことで相手を寛がせ、合いの手でもっと話したい気にさせる阿川さん、どちらの達人にも共通するのは、相手に興味関心を持っている、この出会いを自分も楽しんでいることをちゃんと声や言葉、表情などで発していること、それがコミュニケーションの第一歩だと言えます。
(川邊 暁美/話し方講師)
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