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保育士不足なのに保育士の給与はなぜ低い?

JIJICO / 2017年12月24日 7時30分

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保育士不足なのに保育士の給与はなぜ低い?

保育士不足なのに給与がなかなか上がらない現状

政府は、先の衆院選の公約どおり、幼児教育や保育の無償化政策を打ち出しました。しかし、「待機児童対策が先」との批判を受け、当初予定していなかった保育士の待遇改善策を拡充すると発表しました。

保育の現場では保育士不足が深刻で、それが待機児童が解消されない理由の一つだと言われています。なぜ保育士が足りないのか。それは、過酷な労働環境にもかかわらず、それに見合った水準の給与が支払われていないからです。

保育士の給与は、平均で月約22万円と、全産業の平均と比べ10万円ほど低くなっています(平成28年賃金構造基本統計調査)。公立の保育園では、保育士も公務員になるためこれよりも比較的高い水準で安定していますが、民間企業が運営する無認可保育園などでは平均を下回るところもあり、全体として決して高い金額とはいえないのが実情です。

保育士の給与が低いままの背景には何がある?

冒頭で申し上げたように、国を挙げて待機児童対策に取り組んでいる昨今、保育士のニーズは非常に高くなっています。需要が多ければその分お給料も高くなるはずですが、彼らの給与は、なぜ低いままなのでしょうか?

そこには、様々な要因が絡み合っていると考えられます。

保育園の運営費は、主に国や自治体等から交付される補助金(無認可保育園にはなし)と、保護者から支払われる保育料などで賄われており、結果、限られた収入の中から、人件費をはじめとする経費の全てを手当てしなければならない、規制緩和により民間企業の保育園運営が可能になったため、経費削減のために保育士の給与を抑える園が出てきた等々…。

そして、「保育士という仕事に対する評価の低さ」。実は、これが一番大きな問題なのではないでしょうか。

保育士の仕事に対する評価が低いのはなぜ?

今でこそ国家資格となった保育士ですが、以前は「保母さん」「保父さん」といった名称で呼ばれ、(保母資格はあったものの)「共働き家庭の子供を一時的に預かって、面倒を見てくれる人」くらいの感覚でしかなかったように思います。

これは介護業界にも言えることですが、伝統的に女性が家庭で担ってきた役割を外部の人間が「仕事」として請け負う場合、「家事の延長」程度の認識になりやすく、その対価も低く設定されがちです。その感覚が今日に至るまでずっと続いているからこそ、最近話題となった「保育士は誰でもできる仕事」などという発言が出てくるのではないでしょうか。

そこで、保育士が子供と接することにどのような価値があるのか、家庭での育児とどう違うのかなどを多くの人が理解できるよう、新たに導入されるキャリアアップ研修などを活用してその専門性を分かりやすくアピールし、付加価値を上げることが重要だと思います。

政府は既に、今年度から月額6千円程度の賃上げや家賃の一部補助、一定の経験を積んだ保育士に対しては月4万円の手当を上乗せする、などの政策を実施しています。

今後、どの程度の拡充策が行われるのかは分かりませんが、本気で待機児童対策に取り組む気があるのなら、過去の高齢者への3万円の給付金のように、思い切った取り組みをしてほしいものです。

(五井 淳子/社会保険労務士)

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