架空の「国際信州学院大学」「うどんや蛞蝓亭」ツイート騒動と法的責任
JIJICO / 2018年5月24日 7時30分

架空の「国際信州学院大学」「うどんや蛞蝓亭」ツイート騒動と法的責任
「国際信州学院大学」という架空の大学に関するツイート騒動
2018年5月13日夜に「うどんや 蛞蝓亭」というツイッターのアカウントが、「国際信州学院大学」の教職員50名の貸切予約を受けたがドタキャンされたという内容のツイートの投稿をして、その投稿が拡散されて、そのうどん屋さんに同情する投稿や同大学を非難する投稿などが広まったという件がありました。
しかし実は、蛞蝓(ナメクジ)亭といううどん屋も「国際信州学院大学」も架空のものでした。「国際信州学院大学」は、匿名掲示板の「5ちゃんねる」(「2ちゃんねる」からいろいろあったようです。)のユーザーが創作したとされる“公式サイト“があります。
参考:国際信州学院大学(https://kokushin-u.jp/)
ドタキャンされたというツイートを創作されたネタだと分かって、拡散やコメントをした人もいたのでしょうが、実際に起きたドタキャンだと思った人も少なくなかったようです。
創作された内容の情報発信法的責任は?
今回のような創作された内容の情報発信の法的な責任はどうなるのでしょうか。
今回の騒動では法的な被害を被った人がいない今回は蛞蝓亭や国際信州学院大学は実在しませんから、架空の内容のツイートで迷惑を被った人はいないともいえます。
「蛞蝓亭」や「国際信州学院大学」と混同されてしまうような似た名称の飲食店や大学を検索して探してみたところ、特に見当たりませんでした。そういう点で、「国際信州学院大学」や「蛞蝓亭」のツイートを創作した人は上手だったと思います。
今のところ、今回のツイートで実害が生じたというような話も特に見つかりませんでした。
このような被害者がいない創作情報もっと言えば「虚偽の情報」を発信したとしても、基本的には刑事責任も民事の賠償責任も生じないでしょう。
虚偽のツイートに同情して騙されたことに対する慰謝料請求も、娯楽としての創作情報も流通しているインターネットの状況からすれば、法的に保護されるような精神的苦痛があったとは言えないように思います。仮に慰謝料請求が裁判所で認められても極めて低額でしょう。
ホームページ内の写真は著作権侵害の可能性ありなお、「国際信州学院大学」のホームページは他の実在の大学のホームページの写真を利用しているという指摘があるようです。もし、そうであれば、その写真についての著作権侵害の問題が生じそうです。この点は、創作内容の情報発信とは別の問題です。
実在の人物・企業などが被害を被った場合は法的責任あり
実在の人物や企業などについて虚偽の内容の情報発信をして、実在の人物等の名誉や信用を傷つけたり、業務に支障を生じさせたりする等の被害を生じさせた場合は、その情報発信の行為について法的責任が問われる可能性があります。実在の人物等の名称そのものではなくても、架空の内容を見た一般の人に混同されてしまうような似た名称を使用した場合も問題になるでしょう。
刑事上・民事上ともに法的責任が発生しうる刑事事件としては、発信した情報の内容によっては、刑法の名誉毀損罪(230条)や信用毀損・業務妨害罪(233条)に問われるかもしれません。
刑法以外にも、虚偽の情報の発信が犯罪になる場合があります。たとえば、株式等の相場の変動を目的とする等して、「風説を流布」した場合は金融商品取引法違反の罪に問われることがあります(同法158条、197条1項5号)。
また、選挙に関して、公職の候補者について当選を得させない目的で虚偽の事実を公表する等した場合は、公職選挙法違反の罪に問われることがあります(同法235条)。
刑事責任とは別に、虚偽の情報を発信したことについて民事上の損害賠償請求を受ける場合があります。どの程度の損害になるかはケースバイケースです。
虚偽のツイートで法的責任が認められた事案もある虚偽の内容のツイートをしたことで慰謝料20万円の責任が認められた事案があります。
関西の大学の講義で教授が「阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位を与える」と発言したというツイート(拡散されてネットのニュースにもなっています。)をした学生に対して、その教授が慰謝料請求をした事案で、慰謝料20万円・弁護士費用10万円の計30万円と遅延損害金の支払いを認める判決があります(大阪地裁平成28年11月30日判決)。この学生は、冗談だと分かるだろうと考えてツイートしてしまったようです。
創作的な情報を発信する場合はより注意深くすべき
創作内容を発信する場合は、その情報で迷惑を被る可能性のある人がいないかを熟考すべきでしょうし、創作あるいは虚偽であることが分かるようにすべきでしょう。
冗談だと分かるだろうと思っていても受け手には真実だと誤信されてしまう場合もありますし、真実がどうかに注意を払わずに拡散する人もいますので、情報発信はよくよく慎重にすべきです。
(林 朋寛/弁護士)
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