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グーグルやフェイスブックなどが研修に取り入れるマインドフルネストレーニングとは?

JIJICO / 2020年2月20日 7時30分

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グーグルやフェイスブックなどが研修に取り入れるマインドフルネストレーニングとは?

ストレスフルな現代社会。特に新年度が始まる春に向けて、進学、就職その他で新しい環境に変わるという人は、期待と不安が混在する、なんとなく落ち着かない日々を過ごしているのではないでしょうか。

「新天地でのびのび活躍したい」「どんな素晴らしい出会いがあるのだろう」という期待もあれば、「初対面の人にうまく自分をアピールできるだろうか」「新しいコミュニティーの中で親しく交流できる人がいなかったらどうしよう」「同期の中で出遅れはしないだろうか」など、まだ訪れてもいない未来の姿を想像して、重苦しい気分になることもあるのではありませんか。

近年、アメリカの先進的な企業などの研修では、集中力アップやストレス軽減方法の一つとして「マインドフルネス」が注目されています。 日本でも、教育やビジネスの現場で導入されるなど、すでに実践している人も多く話題となっています。

自分を客観的に見つめ、心を整えたマインドフルな状態に到達するため、自分の心の奥に意識を集中する「マインドフルネス瞑想」は、ヨガや禅などの世界観にも似た感覚ながら、宗教色を可能な限り払拭したトレーニングとして、日常生活に取り入れられているようです。

現代精神医学の分野では、ストレス軽減プログラムとして推奨され、瞑想と呼吸を基本とした治療法として、多くのカウンセリングで行われているそうです。

「取り巻く環境がどう変化しようと、自信を失うことなく前向きに生きる」。そんな自分になるための方法のひとつ「マインドフルネス」について、心理セラピストの渡部典子さんに話を聞きました。

呼吸法とイメージトレーニングで「今ある自分」を意識することで、パフォーマンス向上や人間関係がスムーズになる

Q:マインドフルネス、マインドフルネス瞑想とはどのようなものですか? -------- 次々に頭に浮かんでくる思考や雑念にとらわれることなく、冷静に自分の心に向き合うことができる状態を「マインドフルネス」な状態と言います。この「マインドフルネス(mindfulness)」という言葉は、仏教の経典で使われている言語の英語訳としてあてられたもので、「心をとどめておくこと」あるいは「気づき」などと訳されます。

正確にはマインドフルネスストレス低減法といい、心理学的治療の一つで、その手段として瞑想を取り入れていることから、誤解を受けやすいのですが、宗教的な観念はほとんどありません。

日本語では、雑念に縛られて放心状態にあることを、「心ここにあらず」と言いますが、これは英語で言うところの「マインドレス」に当たるとすると、「マインドフル」とは「マインドレス」の反対の状態。つまり「心が今ここにある」状態だと考えると、言葉としてしっくりくるのではないでしょうか。

Q:ここ20年ほどで、マインドフルネス瞑想が、医療や教育、ビジネスの分野で広く取り入れられるようになったそうですが、現状は? -------- マサチューセッツ大学医学校名誉教授のジョン・カバットジン博士が、「マインドフルネス瞑想」を医療分野に取り入れ、慢性の痛みとの共存を目的としたプログラム「マインドフルネスストレス低減法」を開発したことが、普及のきっかけとなりました。アメリカでは、うつやストレスなどの心理的な問題だけでなく内臓疾患など医療の現場でも取り入れられていて、現代医学では方法がなかった「痛みの軽減」に大きな効果が認められています。

また、「自律神経回復」「ストレス軽減」「集中力アップ」などの効果が科学的に実証されており、グーグルをはじめフェイスブックやインテルといった企業の研修でも実施されています。

日本では、近年になって、社員のメンタルヘルス対策としてマインドフルネストレーニングを導入する企業が多くなってきました。心理カウンセリングの現場でも、統合心理学をメインに、いくつかのプログラムのうちの一つとして、モチベーションアップ、心の健康回復などのために用いられることが多いようです。

Q:心理カウンセリングの療法としては、具体的にどのような方法で行うのですか? -------- 私が実際に心理カウンセリングのトレーニングで行うマインドフルネス瞑想の呼吸法をご紹介します。

① 椅子にゆったりと腰かける。 ② 頭の中で1から5まで数字を唱えながら、息を吸う。 ③ 同じく1から5まで唱えながら、息を吐く。 ④ 頭の中に、浮かんできたさまざまな雑念(不安、悩み、この後の予定など)を一つずつ、心の中の川やごみ箱に捨てる、あるいは天に放つという行為をイメージする。 ⑤ ②~④を1分間で約6呼吸、腹式呼吸で10分間行う。

④は、あくまで心の中のイメージで、たとえば「今夜のおかずは何にしよう」や「この後の予定は何だったかな」など、次々に浮かぶ思考を「認識」し、「私はこの思考を捨てたのだ」と思うこと。

本来、心が空っぽになるということはあり得ません。呼吸をすることで、浮かんでくる雑念に「気付く」という作業を繰り返し行うことで、やがて邪念を客観的に見られるようになります。

この方法に慣れてきたら、数字を唱える代わりに、なるべくポジティブな言葉に置き換えるといいでしょう。たとえば「健康」で息を吸い、「安心」で息を吐くというような感じです。「愛情」「幸福」でもいいですし、「豊かさ」「安定」だって構いません。

実際のトレーニングでは、体にセンサーを付けて心拍数など体の状態を可視化する「バイオフィードバック」や、効果的に編集した音楽や映像などを流したりして行うことが多いのですが、呼吸法だけなら、部屋で横になっていても電車の中でも可能です。

Q:身体的な痛みを軽減したい人や、心理的に問題を抱えた人が「マインドフルネス瞑想」を日常的に行うことで、どのような変化があるのでしょう? -------- 現代医学では、どんなに治療を施しても治癒しない「痛み」というものがあります。 同じ症状・同じ治療でも、人によって感じる痛みの程度は異なります。ある人には、気にならない程度の痛みが、別の人にとっては実際よりもひどく、辛抱しがたいほどのものであったりするのです。

こうした痛みにとらわれてしまった人の場合、意識を変える訓練をすることで、痛みの感じ方を軽いものにすることができます。アメリカで、マインドフルネスセンターやペインクリニックを併設している医療機関が多いのはそのためです。ほかに、自律神経の安定、睡眠のコントロール、血糖値や血圧の安定といった効果の実例もあります。

心理的問題では、うつ状態の人は過去に、不安症などの人は未来に、その人の心が偏りすぎていることが大きな原因と考えられます。

「あんなことをしてしまった」「あの時、なぜもっとできなかったのか」と、過去に起こった出来事に後悔ばかりを感じている人。一方で、「うまくいかなかったらどうしよう」「この先、自分はどうなるのか」と、まだ起きてもいない将来の出来事の心配をする人。どちらも過去や未来に意識がとらわれ、現在の自分を全く認識できていない状態にあるというわけです。

このとらわれた意識を開放し、「今、ここに在る自分」に気付かせることで、本来の心の健康を取り戻すトレーニング、それがマインドフルネス瞑想なのです。

Q:ワークショップや企業研修などでのトレーニングは、どのような目的で取り入れられているのですか? -------- アメリカに倣い、日本でも、自己啓発やビジネススキルの向上を目的に行われる研修で、マインドフルネス瞑想を取り入れる企業が増えているようです。マインドフルネス瞑想を行うことで、今の自分に関心を寄せ、心をニュートラルな状態に戻し、本来持っている能力を余さず発揮することができるようになります。

スポーツ選手などが、よく「ゾーンに入る」という表現を使うのがこの状態で、パフォーマンスが格段に向上したような感覚が得られ、本人にとって大きな幸福感へとつながるでしょう。仕事や人間関係などでも、これまで無駄に浪費していた注意力をマインドフルネス瞑想によって適正に使うことができ、少ないエネルギーでベストな状態に近づけることができるようになります。

ネガティブな思考から抜け出し、カッとしたり思い詰めたりといった激しい心の動きを回避する訓練にもなるので怒りのコントロールが可能になり、職場や家庭での人間関係も自ずとスムーズになるでしょう。総じて、日常生活の質を高められるという効果が期待できます。

Q:自分自身で日常生活に取り入れることはできますか?またその際の注意点は? -------- 専門的なサポートを受けている人も、実際に家でセルフトレーニングを行っていますから、すぐにも取り入れることが可能です。前述のように、簡単な呼吸法とイメージトレーニングに、ユーチューブなどの動画ガイドを使うことでも実践できます。

最近では、ワークショップや企業研修で経験したという人も増えているようですから、そうした経験者からポイントを教わるとよいでしょう。

大切なのは、がんばりすぎず毎日続けること。10分のトレーニングを毎日1週間続けて、不眠気味の状態が改善したという人もいます。おおむね1カ月も続けると、自分の中の何かが変わったように感じることができるでしょう。

副作用はありませんが、まれに酸素の吸い過ぎなど、呼吸がうまくできない場合がありますので、そんな時はすぐに中止してください。注意してほしいのは、心の状態が健常とは言えないレベルの人です。耐えがたいほどの問題を抱えているなら、我流で試さず、プロのサポートのもとで行うことをおすすめします。

(渡部 典子/心理セラピスト)

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