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お葬式がコロナで様変わり?人生最後のセレモニー、先祖供養への考え方について

JIJICO / 2020年6月22日 14時0分

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お葬式がコロナで様変わり?人生最後のセレモニー、先祖供養への考え方について

日常生活と新型コロナウイルス感染予防を両立させるべく「新しい生活様式」を厚生労働省が公表、人との接触をなるべく避けることを目的として、さまざまなシーンでの実践例が示されました。

外出自粛の期間、集会や式事などが中止・縮小を余儀なくされましたが、その中で延期や中止が簡単ではないものに葬儀、法要があります。葬儀場は、多数の施設が利用自粛の制限下にあった時でも、社会生活を維持する上で必要な施設とされ、自粛の対象ではありませんでした。しかし、当初のクラスター発生場所の一つにもなったために、厚労省の実践例でも「冠婚葬祭などの親族行事」を項目にあげて、特別に注意を促しています。

人の死は予測できないものですから、どのような時節柄であっても、大切な人を見送る気持ちや、葬儀そのものも決しておざなりにできるものではありません。とはいえ、地域の結びつきが薄くなった都市部を中心に、葬儀や法要の簡素化の風潮はコロナ前からも見られました。

少子化により、先祖供養やお墓の管理などを誰がするのかといったことに頭を悩ませている人も多いなか、葬儀や供養などをどのように考えればいいのでしょうか。家族葬に詳しい岡正伸さんに聞きました。

葬儀規模の縮小化が進み家族葬などが一般的に。それでも儀礼的な営みには、遺された人が悲しみから癒やされていくグリーフワークとしての意味もある

Q:感染防止のための新しい生活様式が示されています。葬儀業の全国組織でも葬儀における「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」が発表されましたが、どのようなものですか? -------- 都市部と地方など、地域によって葬儀に関する事情はさまざまですが、外出自粛期間中の徳島県では、東京近郊など都市部ほどの大きな混乱は見られなかったように思います。ただ、県外からの弔問については控える人が多かったようで、「なるべく規模を縮小し、家族だけで葬儀を」という人がほとんどでした。

業界のガイドラインによると、葬儀場の新型コロナ感染防止策は以下のようなものです。

・可能な範囲で、打ち合わせに参加する人の健康状態、「打ち合わせの際は、できるだけ少人数で行うこと」などを確認。 ・打ち合わせには、適宜オンライン(電話やFAX、Eメール、郵便物等)を併用して行う。 ・葬儀の参列者については、遺族にある程度限定することも提案。 ・多くの参列者が想定される際は弔問の時間を長く設定し、あらかじめ遺族、宗教者の了承を得て、焼香または線香のみに。 ・会葬者へのお茶、おしぼりなどは手渡しではなくセルフサービスで対応。 ・葬儀に参列ができない人のために、映像などの配信や録画などをする。 ・会葬者には弁当などの持ち帰りをすすめる。 (参考:葬儀業「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」)

Q: コロナ禍では、亡くなった人や遺族に敬意を払いつつも不安の少ない葬儀を行うために、それぞれの葬儀場でも工夫を凝らしているようですが、どのような葬儀の形が提案されたのでしょうか? -------- 外出自粛中の葬儀についても、都市部と地方で大きく事情が異なるかと思いますが、私の知る地域では、火葬のみを行う「火葬式(直葬)」を選択するケースが多数でした。通常の葬儀では、通夜・告別式を行うことが一般的ですが、火葬式では、遺体を安置してから通夜や告別式を執り行わず、そのまま火葬場へ向かうというものです。おそらく火葬式のあとは、家族やごく近隣の親族などが、自宅で少しの時間を過ごす機会は持てたのではないかと思います。

そのほかでは、通常2日を要して通夜と告別式を行うところ、告別式のみを行う「一日葬」や、家族のみで火葬を行ったあと、日を改めてお別れ会や葬式の機会を設けるといった形を提案する例もあるようです。

Q:さまざまな事情で、一般的な葬儀ができないときでも、省くことができない手順(手続き)はありますか? -------- 死亡診断、火葬、埋葬に関する法令上の手続きは、省略することはできません。特に問い合わせが多いのが、亡くなったあと「安置をすることなく、そのまま火葬が行えないか」というものです。日本の法律では「亡くなってから24時間経過しなければ、火葬は行えない」と定められています。遺族が火葬式を、なるべく早いタイミングで執り行いたいと希望しても、医師などによる「死亡診断書」に記載された臨終の時間から、丸一日たたなければ火葬はできないということになっています。

このほか、役所へは、死亡の事実を知った日から7日以内に「死亡診断書」か「死体検案書」を用意したうえで、「死亡届」を提出しなければなりません。この時に「火葬許可申請書」を提出し、「火葬許可書」を受け取ります。

死亡届を提出する先は「①亡くなった人の死亡地」「②亡くなった人の本籍地」「③届け出をする人の所在地」のうち、①②③のいずれかの市区町村役場で24時間365日受け付けています。届出人の資格を持つのは、親族・同居者・家主・地主・家屋管理人・土地管理人などとされていますが、窓口に持参する人は葬儀社など代理人でも問題はありません。悲しみに暮れながらもさまざまな手配に追われる遺族の代わりに、葬儀社などが代理で提出するケースが多いでしょう。

また、火葬の後、遺骨を墓地や納骨堂に収蔵する際には「埋葬許可証」が必要です。こうした火葬許可証や埋葬許可証の様式は自治体によって異なります。

Q:法令上の手続き以外に省略できないことはありますか? -------- 地域性や個人が信仰していた宗教によって異なりますが、葬儀の一般的な流れとしては、通夜の翌日に葬儀・告別式を営み、出棺・火葬、納骨となります。人の死に関して、どのような事情があろうと、命への尊厳を考えないわけにはいきません。

昔から葬儀や供養に多くの親族が集まるということには、「血縁の絆を深める」とか「喪失感を共有して悲しみを癒やす」などの大きな意味があり、大切な営みであったはずです。葬儀や、その後の節目ごとの儀礼などには、遺された人の「グリーフワーク」という側面もあります。本来の意味は知らずとも、一つ一つの行為を進めていくうちに、悲しみを受け止め、癒やし、喪失感にふさぐ心を整理して立ち直っていくというものです。

そうした儀礼的なことを何もかも省いてしまうと、後日、一段落したときにふと「あのとき、もっと何かしてあげられたはずだ」「なぜこうしなかったのだろう」と、後悔の気持ちが沸き起こることがあります。何か一つでも、気持ちを込めた行いができていたら、そんなときにも自分の心を慰める大きな助けになるはずです。

それは、献花でも、メッセージを書いたメモでも、そのとき折った折り鶴でも、故人と撮った写真でも構いません。メッセージを書く時間、写真を選ぶ時間、そうした少しの時間でも、故人の生前の姿を心によみがえらせたことは、形にならない思いを亡きがらに添えることになります。そこに本来の弔いの意味があり、まさにグリーフワークの始まりでもあります。

Q: 地方から都市部への人の流れや少子化で、以前のように次の世代が代々祖先の供養を受け継ぐということが難しい時代になってきました。葬儀や供養はどのように変わっていくのでしょうか? -------- インターネットを活用した前衛的な法要なども一部ではあるようですが、まだまだ受け入れ難いという人が多いのではないでしょうか。近年、四国の風物詩でもある「八十八箇所巡り」でも、法話をインターネットで配信するなど、現代人に合わせた形が取り入れられているくらいですから、将来的にはありえない話ではないとは思います。

コロナ禍で、やむなく葬儀が簡略化されたようにも見えますが、潜在的にその風潮は進んでいて、家族葬を希望する施主も増えています。例えば先祖代々の土地に住み、家督を継いだ長男筋でもなければ、多くの人が地域の慣習や宗教儀式にさほど重きを置かなくなってきています。コロナ禍では、施主が親族の中の重鎮や宗教者などの指南を仰ぐことができないまま、葬儀を行わねばならず、よくあるような「以前からの慣習と現在の生活に即した形と、どちらを優先するのか」といったことに悩む余地がなかったとも言えるでしょう。

同様に、墓の管理や納骨についても、多くの人が頭を悩ませている問題の一つで、以前と同じ形で継承していくことが難しくなっています。一例に、火葬のあと海に散骨する「海洋散骨」という方法があります。以前は故人の生前からの希望によるものがほとんどでしたが、近年は、地方へ出た人が出身地にある墓の「墓じまい」の際に検討することが多いようです。

いずれにしても、葬儀に関わることは、その人の人生にとって最後のセレモニーになります。どのような状況下であっても、命の尊厳や生きることの意味を考えつつ、故人を送り出すたった一度の機会であることを忘れずにいたいものです。

(岡 正伸/葬儀)

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