孤立死弔う僧侶「便利な生活を追求してきたツケが…」

WEB女性自身 / 2013年6月2日 7時0分

中下大樹さん(38)は真宗大谷派の僧侶だ。しかし、普通の僧侶とは違う。まず、見た目。取材日もけさ姿ではなく、黒のジャケットにズボン。宗派を超えた寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」など活動は幅広いが、その一つが独居老人の孤立死防止のための見まわり活動だ。
 
「孤立死が発生しました。すぐに来てほしい」と、民生委員などから連絡を受けると駆けつけ、花や棺の手配、葬儀では読経をして、さらに一時的に遺骨を引き取ることも。その数、年間におよそ80件。これまで2千人の死に立ち会った。ほとんどが無償のボランティアだ。
 
「東京に限っていえば、現在亡くなった方の3割が、葬儀を行わず、直接火葬する直葬なんです」(中下さん・以下同)。貧困や高齢化による家族関係の断絶など理由はさまざまだが、3割もの人が縁ある人とのお別れをせずに葬られる。また孤立死は、若年層にも増えているという。
 
「私は、孤立死を全否定はしません。あえて独りで亡くなることを選択するのも、一つの生きざまです。でも、僕が見た孤立死の現場では、ある共通点があるんです。多くの故人が、柱や家具につかまって、玄関に向かおうとしてこと切れていました。つまり、最期はSOSを出していたのです」
 
東京生まれの中下さんは、生まれたときから母子家庭で父親の顔も知らない。母親は幼い彼に暴力をふるい、次々と交際相手を替えた。やがて、小学校に上る前に3歳の妹と北九州の祖父母宅へ。しかし、そこでも祖父に虐待を受ける。次に身を寄せたのが同じ北九州の叔父の家。優しい叔父だったが、中下さんが小学3年生のときに自宅で縊死を遂げる。発見者は中下さんだった。自殺の理由は借金の保証人になったことだった。
 
その後、中下さんは東京に戻り、生活は新聞配達で支えた。「世界はとことん不平等だと思いました。ただ、誰にも平等に訪れるのが死ぬということであると同時に気づいて。漠然と死に興味を持つようになりました」。新聞奨学生の生活は大学進学後も続いた。25歳で大学院へ。ターミナルケアを学び、その研究の一環でタイの寺院へも通った。
 
「ある寺院は『エイズホスピス』と呼ばれていて、お坊さんがエイズ患者の看取りから葬儀、納骨までしていました。ミイラのように痩せこけた患者たちに寄り添う僧侶と日々を共にするなかで、人間の命の最期のセーフティネットは、宗教者であることを目の当たりにしたんです。帰国後、お寺出身の講師から『僧侶にならないか』と声をかけられました。まさか自分にそんな道があるとは考えていませんでした」
 

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