「妻がDVの怪物になった」うつ状態の夫に浴びせた罵倒と、お金の要求とは…

女子SPA! / 2019年2月20日 15時47分

【ぼくたちの離婚 Vol.9 あなたのせいで、わたしは不幸 #3】

“言葉を使うクリエイター”である田崎博さん(仮名、38歳)は、同業者の皆子さん(仮名、43歳)と同居・入籍して以来、彼女の尋常ではないモラハラを受けるはめに。予定している結婚式の準備でも、皆子さんに理不尽ないらだちをぶつけられてきたが、なんとか田崎さんの実家・新潟での式にこぎつける。

 ただ、披露宴を兼ねた両家の食事会で、皆子さんの母親はほとんど口を開かなかった。

「あとでうちの母が、皆子さんのお母さんが全然しゃべらなくてお礼しか言ってなかったけど、大丈夫? と心配してきました。今思えば、皆子に“式で余計なことをしゃべるな”と釘を刺されていた可能性が高い。はじめて会いに行った時に上の空だったのも、緊張で2日間眠れなかったのも、皆子にプレッシャーをかけられていたんでしょう。皆子が母親の結婚式欠席をほのめかしたのは、皆子にとって都合の悪いことを、田崎家に漏らされたくなかったのかもしれません」

 あくまで田崎さんの推測だが、たしかに辻褄は合う。とはいえ、帰りの新幹線での皆子さんはすこぶる上機嫌だったという。式で撮った写真を仕事仲間たちにLINEで大量に送信し、ブーケの押し花サービスも楽しみにしていたそうだ。ところが……。

◆「こんな人と結婚した私がバカだった」

「式の2日後の夜にまた大荒れして、『離婚届を取ってきて!』と言われました。理由を聞くと、『私は結婚式の間じゅう、ずっと嫌だった。やはり新潟でやるべきじゃなかった。こんなのは私の結婚式じゃない。一生の後悔として、記憶に残り続ける』って。でも、帰りの新幹線ではいい式だったって言ってたじゃないと言うと、『その時はそういう気持ちだったけど、今は違うの!』とまたキレる。もう、手がつけられません」

 その後2、3週間、皆子さんは毎日のように深夜まで田崎さんを罵倒し続けた。罵倒の対象には、田崎さんの親兄弟や親族、そして「新潟」までもが含まれていた。

「『あなたのせいで私は一生不幸だ。こんな人と結婚した私がバカだった』と執拗に言われました。僕は毎晩のように何時間も説得を試みましたが、今回ばかりは聞く耳を持ってくれません。できるだけ優しい言葉で『そんなこと思ってもいないよ』『愛してる』『大丈夫』などと言い続けましたが、『私のことをバカにしてるんでしょ!』と取り合わない。ベッドの中でも暴れて、『新潟に帰れ!』と叫びながら、僕をベッドから突き落とすんです」

◆気づくのが遅すぎた

 田崎さんは悩んだ末、母親とお兄さんに電話で相談した。母親は「どこの夫婦でも衝突はある。結婚式が100%満足することなんてないのよ」という返事だったが、お兄さんは冷静で、皆子さんは一種の病気なのではないかと疑ってきた。

「この時点ではじめて、皆子のふるまいが単なる性格やマリッジブルーの類いではない、精神の異常かもしれないと思い至るようになりました。価値観が歪んでしまってる。言葉で想いが伝われば理解し合える、歩み寄れると信じ、頑張ってきた僕は間違っていたんです。僕がダメなせいで皆子が不機嫌になっているんじゃない。彼女が異常だから、僕が苦しんでるんだと」

 しかし、気づくのが遅すぎた。田崎さんは、結婚直後からときおり過呼吸や動悸に悩まされており、この頃には症状がだいぶひどくなっていたのだ。突然涙が止まらなくなったり、腕がしびれて動かなくなったりしたこともあったそうだ。

「毎日怒られすぎていて、怒られていない時でも『怒られるかもしれない』という不安に覆われて、体に異常が出るんです」

 田崎さんは意を決してメンタルクリニックの門をたたく。結婚生活で感じているストレスを医師に話し、バウムテスト(被検査者が1本の木を描き、そこから心理状態を読み取るテスト)も行った。

「診断結果は“軽度のうつ”でした」

◆「うつ」を笑い飛ばす妻

 しかし帰宅して皆子さんにそのことを伝えると、心配されるどころか笑い飛ばされたという。

「その時の皆子の言葉は、今でも一言一句覚えています。『はあ? 私たちみたいな仕事なんて、みんな鬱みたいなもんだよ。あなたが鬱だったら、私だって鬱だよ!』。そう嘲笑されました。愕然としましたね。現に目の前で僕が弱りきっているのに、なんなんだろうと。涙も出ませんでした」

 田崎さんはメンタルクリニックの先生から、一度ご夫婦でいらっしゃいませんかと勧められていた。しかし田崎さんがそのことを皆子さんに伝えても、取り付く島もない。

「私は異常じゃない。あなたのせいで私がこんなに大変なのに、なんで私が行かなきゃいけないの!?」

 翌日も、その翌日も、ネチネチと「なんであなたのせいで私が行かなきゃいけないんだ。なんであなたのせいで……」と言われ続けた。

「皆子からの罵倒はどんどんひどくなり、『私は一生、新潟なんかに行かないからね!』と宣言されました。それだけならまだしも、僕に『新潟に帰省するな』『家族と連絡を取るな』と命令してくる。最終的には、彼女の目の前で母や兄のLINEアカウントを消せと言われ、その場が収まらなそうだったので、やむなく消しました」

 田崎さんはメンタルクリニックとは別の、夫婦問題専門のカウンセラーにも相談する。皆子さんからの理不尽な仕打ち。苦しみ抜いた日々。正直言って、もう家には帰りたくない、ここで倒れて入院でもしてしまえば、家に帰らなくて済む。そんな気持ちをすべてをぶちまけると、カウンセラーはきっぱりと言った。

「明らかに奥さんからの精神的なDVです。そのことに気づいてください」

 DV、ドメスティック・バイオレンス。配偶者からの暴力。度を越したモラハラでもある。

◆僕の具合が悪いと、妻がキレる

「帰宅し、君のふるまいは精神的DVだと皆子にはっきり告げると、私を脅迫するのかとすごまれました。あなたのその言葉こそがDVだ、私のほうが傷ついた、私が不安な時にあなたはケアしてくれなかった、と。立場を逆転させようとしてきたんです。話しても無駄だと思いました」

 DVやモラハラの加害者は、自分の言動で被害者の具合があからさまに悪くなると、さらにキレる傾向にあるという。結婚後の皆子さんは典型的なそれだった。

「僕が弱っていれば、僕をそれ以上責められなくなる。それが皆子としてはイライラしてしょうがない。結婚後にふたりで旅行に行った時、僕がストレスで朝ベッドから起き上がれなくなったことがあったんです。そうしたら皆子がものすごく不機嫌になって、『なにそれ、私が悪いの!?』と食ってかかってきました。謝り倒して、なんとか許してもらいました」

 本当に気分がすぐれないのに、自分の気分がすぐれないことを相手に謝罪しなければならなくなる。地獄としか言いようがない。

「僕がストレスで過呼吸になっていると、めちゃくちゃ怒るんです。それはなんのアピール? 私になにか言わせないために、わざと苦しそうにしてるんでしょう、と。それで『ごめん、違うよ。そんなつもりじゃない』と謝って遮ると、今度は『私に最後まで言わせないつもり!?』と怒るんです」

◆「あなたが逃げないように、私がお金を握る」

 2018年4月末、決定打となる事件が起こる。

「皆子が、私たちはこのままでは離婚するから、あなたが逃げないように家のお金を全部私に握らせろと言ってきたんです。そして、あなたが自由に使えるお金が多すぎるからいけない、これから私は生活費を一切入れないからね、と宣言されました」

 田崎さんと皆子さんの生活費拠出割合は、おおむね7対3。もともと田崎さんのほうが多い。これを10対0にしたうえで、すべて皆子さんがお金を管理するようにしたい、しかも振り込みなどの雑務は今までどおり田崎さんが担当せよ、という要望なのだ。無茶苦茶すぎる。

「言ってることがどんどん変わるんです。ついこないだまでは、自分から離婚すると言い出し、僕が説得して止める側だったのに、今では離婚を阻止すべく強硬手段に出ようとする。二面性が著しい。昨日言ったことが今日は撤回されている。これが日に日に激しくなっていきました。もう限界。ついていけない。“怪物”だと思いました」

 罵倒され、無能扱いされ、罪悪感を植え付けられ、振り回され、極限まで衰弱した田崎さんは、2018年5月末、ついに家を出る。

「ある日、外で仕事中に皆子から電話がかかってきました。彼女もどこかの出先らしいんですが、電話の向こうで錯乱してるんです。仕事でちょっとした行き違いがあったらしく、かなり取り乱してる。そして『なんであなたはここにいないのよ!』と僕を激しく責めだしました。自分の不機嫌をぶつける僕がすぐ隣にいないのが、腹立たしくてしょうがないんです。

彼女の不機嫌は、僕がなにひとつ関わっていないことも含めて、100%僕のせいになる。これが一生続くのかと思うと、僕の中で何かがプツンと切れました」

◆家を飛び出した後も、妻の生活費を払い続ける

 先に帰宅した田崎さんは、大急ぎで当座の着替えと最小限の仕事道具をまとめ、行くあても考えずに家を出た。ビジネスホテルがどこも満室だったので、その日は漫画喫茶に宿泊。その後、家具付きのウィークリーマンションを経て、都内のワンルームマンションに引っ越した。無論、皆子さんに住所は教えず、メールやLINEはすべてブロック。2019年2月現在、離婚を希望する田崎さんと希望しない皆子さんは平行線のまま。双方弁護士を立てて係争中だ。

「皆子は今でも、僕と住んでいた3LDKのマンションに住み続けているんですが、家賃は僕が全額払い続けています。皆子のほうが圧倒的に収入が少ないので、婚姻費用として家賃分くらいは支払う必要があると弁護士に言われて。

にもかかわらず、それでも生活できないから月々10万円ずつ振り込めと言われたので、追加で100万円を振り込みました。払う義理はまったくないんですが、訴訟になった時、僕が“生活費を入れなかったこと”が『経済的なDV』とみなされる可能性を潰したかったのです。皆子には弁護士を通じて、もっと安い単身者向けのマンションに引っ越してくれと伝えてるんですが、なかなか引っ越してくれません」

 しかも、皆子さんは田崎さんに対する精神的DVを一切認めていない。

「皆子は『夫が家のお金を持って逃げてしまった』『夫がパニック障害でなにもやらず、私が大変だった。夫としての役目をまったく果たさなかった』と主張しているようです。皆子が自分の母親にそう説明し、皆子の母親がうちの母親に連絡したことで判明しました。もちろん、うちの母はそんなこと信じていませんが」

◆「ヒント」に気づけなかった

 田崎さんは交際前や結婚前に、なぜ“怪物”の正体に気づけなかったのだろう。

「それは、いろんな人から言われましたよ。もっと長く交際して見極めるべきだったのでは? とか、女性の友人に会わせて印象を聞いたほうが良かったのでは? とか。でも……あれは絶対わかんないですよ! 交際中に怒ったりイライラしたりというのを、ほとんど見かけませんでしたから」

 皆子さんは、同居後に文字通り豹変したのだ。

「意図的に自分の本性を隠していたとしか思えません。結婚前に同居期間を設ければなにか発見できたのでは? と言われたこともありますが、僕と皆子の両方を知っている女性の友人からは、『結婚前に同居したとしても、彼女ならずっと隠し続けたと思う』と言われました」

 ただ、ヒントはあったはずだ。プロポーズから結婚までの間に、皆子さんは二度『結婚をやめたい』と田崎さんに申し出ている。

「そうですね……。おそらく彼女は、過去に誰かと深い関係になったのち、壮絶な破綻を経験していたんじゃないでしょうか。それを繰り返すんじゃないかと不安になった。その意味で二度の『結婚をやめたい』は、“怪物”の中にわずかだけ残っていた“良心”が僕に発した警告だったのかもしれません。ここから先は引き返せないけど、あなた本当に大丈夫? という。でも、僕はそのヒントに気づけませんでした。……バカでした」

◆“普通の家庭”が欲しかった

 田崎さんは昔を振り返るような目をしながら、しみじみこう語った。

「僕は20代の頃に食えない時期が続いたんですが、30歳をすぎたくらいから、ようやく仕事が軌道に乗ってきて、生活に苦労しなくなりました。欲しいものは、だいたい買えるようになったんです。

でも、その頃から“自分のためだけに稼ぐ”のが虚しくなってきちゃったんですよ。自分ではない誰か大切な人、家族のために稼ぎたい。贅沢なんてできなくていい。子供はいてもいなくても構わない。僕が育った実家や兄の家族のような、普通の、おだやかな、あたたかい家庭。それが欲しかっただけです」

 成熟した大人の人間が抱く、ごくあたりまえの感情。誰もが求める権利のある、すこやかで、ささやかな人生設計。それは叶わなかった。

「皆子と同居中、何十回も“あなたのせいで、わたしは不幸”となじられました。でも僕は、誰かを不幸にするつもりなんて、これっぽっちもありませんでしたよ」

<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>

【稲田豊史】

編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。

【WEB】inadatoyoshi.com

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