残念な夫と家庭内別居したら…快適すぎて夫婦は思わぬ方向へ

女子SPA! / 2019年6月3日 8時47分

※写真はイメージです

 何らかの事情で一度関係の壊れかけた夫婦でも、思わぬきっかけで再生することがあります。男女関係や不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、夫婦の“再生物語”をレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)

 夫婦は何をもってして「破綻した」「再生した」といえるのだろうか。何人かに話をきくうち、そんな疑問もわいてくるようになった。今回、聞いたのはトモヨさん(53歳)。結婚して22年、昨年春から完全家庭内別居を始めたという。

◆子どもたちが成人したら離婚するつもりだった

 トモヨさんが結婚したのは30歳になってすぐのころ。相手は2歳年下、職場の後輩だった。31歳で長女、34歳で次女を授かった。下の子が身体が弱かったこともあり、一時期、トモヨさんは専業主婦として暮らした。

「ずっと働きたかったけど、そうもいかなくて……。『今はとりあえず分担しよう』と夫とも話し合って。あのころ夫は物わかりがよかったんですよ(笑)。子育てと家事にあくせくしている私を思いやってもくれた」

 子どもが小さいころ、育児に疲弊する妻を顧(かえり)みないことで夫婦の溝が深まることは多いのだが、トモヨさんの夫は常に労(いたわ)り思いやってくれたという。

「むしろ子どもたちが大きくなって私が社会復帰したあたりから、少しずつズレが生じてきたような気がします。夫にしてみたら、私が弱い立場であれば思いやれるけど、仕事を再開して対等の立場になるとやさしくできなくなったのかもしれません」

 このあたり、夫の複雑な心理が浮き彫りになる。言葉にしなくても「家族を養っている」という思いが、夫の自尊心を満足させていたのかもしれない。妻が再就職すると、夫は家庭内での微妙な力関係を気にし始めるのだろうか。

「子どもたちに『ママは家にいたほうがいいよな』と吹き込んだりしていましたね。ただ、当時11歳になっていた長女は、『ママは仕事しているほうがかっこいいよ』と。周囲のママ友もみんな働いていましたからね」

 ママに家にいてほしいのは、子どもではなく夫の真意なのだろう。

◆夫は心を閉ざし、浮気に走った

 子どもは成長していくばかりだが、夫は退化してくばかりだとトモヨさんは笑った。娘たちも母も生き生きと自分の人生を開いていったが、夫はどんどん職場にも家庭にも居場所を失っていったようだ。

「5年ほど前、夫が離婚してほしいと言い出したんです。聞くと好きな人ができたという。子どもたちの学費もあるし、そういうことがすべてクリアできるなら応じないわけでもないけどと言ったら、夫が泣き出して。『どうしてそんなにオレに冷たいんだ』と。冷たくしているつもりはなかったのでこっちが驚きました」

 夫は「いい人」なのだが、仕事でも家庭でも自分から人を引っ張っていくタイプではない。そのため出世街道からははずれた。だがトモヨさんはそんなことはどうでもいいと思っていた。家族にやさしければそれでいい、と。だが夫は、仕事や家事をバリバリこなす妻にもどこか負い目があったのだろう。だんだん心を閉ざしていくようになった。しかも、そのことに妻は気づいてくれなかった。

「それで浮気したらしいんですが、離婚はあくまでも私の気持ちを試したかっただけみたいです。かわいそうだなと思う半面、なんだかそんな夫がうっとうしくなってしまったのも確か。娘たちなんて、いっそ離婚すればいいじゃんと言ってましたね」

 働く母をもった娘たちはたくましい。長女はやりたいことがあると遠方の大学に進学、次女もまた遠方の大学へと旅立って行った。ふたりともアルバイトで生活費をまかなっているから、ほとんど仕送りもしていない。

「夫婦ふたりになったのを機に、私は離婚したいならすると夫に言いました。夫は離婚するつもりはないと。だったら家庭内別居をしようと私から提案しました」

 食事も家事も、それぞれ自分のことだけをする。ルームシェアの感覚だ。これは娘たちからのアドバイスだったという。

「今、おとうさんを自立させなければこの先、おかあさんが大変だよ」

 その娘たちの言葉にトモヨさんも奮起した。

◆「完全家庭内別居」はとても快適だった

 家庭内別居を始めて約1年。

「これが快適なんですよ。休日も相手のことはいっさい気にしないでいい。地元のヨガサークルに行ったり1日中読書したり。自由に暮らせるって贅沢ですよね」

 最初は拗ねていた夫も、時間がたつにつれて自分でやるしかないと覚悟を決めたようだ。最近、夫は料理にはまっているという。

「最初は試食してみてくれないかなと言っていたんですが、今では週末の夕食は夫が作ってくれるように。食べてみるとこれがおいしいんですよ。夫も本格的な料理学校に通うようになって。『本当はオレ、料理人になりたかったんだよね』と昔からの夢を聞くこともできました。まだ定年には間があるし、夫が本気ならふたりで店をやってみることも考えてもいいかも、店じゃなくて総菜屋さんでもいいかも、などと会話がはずむようになりました」

 離婚も見据えての家庭内別居が、ここへ来て別の方向に急展開しているのだという。

 家族は時間とともにその形態を変えていく。お互いに自立していれば、老後の生活にも対処していけるはずだ。期せずして夫の精神的自立がうまくいきつつあるトモヨさんはこう言った。

「今のまま夫が成長を遂げてくれれば(笑)、離婚は回避できそうです」

―夫婦再生物語 Vol.7―

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

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