愛犬のつらい抗ガン剤治療。お願い、少しでも食べて

女子SPA! / 2019年6月20日 8時45分

<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.25>

 心理カウンセラーの木附千晶さんは、16年一緒に暮らしたゴールデン・レトリーバー「ケフィ」を2017年1月に亡くしました。

 ケフィはメニエール病などと闘い、最後は肝臓がんのために息を引き取ったのです。前後して3匹の猫も亡くし、木附さんは深刻なペットロスに陥ってしまいます。自分の体験を、心理カウンセラーとして見つめ、ペットロスについて考えます(以下、木附さんの寄稿)。

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◆「いつものこと」でも、「いつものように」はならないケフィ

 抗ガン剤を増やした影響はすぐに現れました。ケフィの白血球の値が、どんどん下がってしまったのです。「毎日1錠」だった抗ガン剤を「1錠と2錠の日を交互に」しただけ。ほんのわずか増やしただけなのに、1週間で正常値の7200から正常値にぎりぎり入る5300に、さらに1週間後には4000まで落ちました。

 激しい下痢にも襲われました。獣医師たちの意見は概ね次のようなものでした。

「薬を増やしたことが下痢の原因とは考えにくい。ただ、抗ガン剤によって白血球が下がっているので下痢が治りにくくなっている可能性はある」

 確かに、ケフィは子どもの頃から季節の変わり目によく下痢をしました。そう考えると、下痢は「いつものこと」なのかもしれません。しかし、ケフィの体は「いつも」とは違い、免疫力が極端に低下していました。例年は数日で止まる下痢が、2週間以上たっても止まりませんでした。

◆「食べなくなるのは、死ぬとき」

 食欲も落ち、ケフィはみるみる衰弱していきました。今までは下痢をしても食欲はありました。ところが今回は、下痢が始まって1週間もたつと、ほとんど何も口にしなくなってしまったのです。

「この犬が食べなくなるのは、死ぬときですよ」

 ケフィが子犬の頃、大食漢のケフィに訓練士さんが言った言葉が何度も耳にこだましました。ほほえましいエピソードだったものが、足かせのように感じられました。

 例年は下痢が止まるまでの間は、かぼちゃ、鶏ささみ入りのおかゆを少量ずつ与えるなどして胃腸を休ませていました。でも、今回は状況が違います。悠長に回復を待っていたら衰弱死してしまいそうでした。

 私は、犬用流動食や「老犬でも食いつきがいい」と評判のシニアフード、栄養補給剤を買い集め、次々とケフィに与えました。自分からは食べてくれないので、注入器で食べ物を流し込みました。

◆愛猫・でんすけの最期と重なる

 ぐったりしたケフィを抱えながらミルクを飲ませていると、前年に亡くなった愛猫・でんすけ(でん)の最期がオーバーラップしました。

「死に逝くときはお腹を空っぽにすると聞いたことがある」

「でんもそうだった」

「もうケフィも長くないのではないか」

 そんな不吉な考えが襲ってきて気が遠くなりそうでした。私は心のなかで何度も手を合わせ、でんにお願いしました。

「もう少しだけ、ケフィを私の側に置いておいて。でんのところに連れて行かないで」

 夜間に緊急搬送された翌日でさえ、家族と鍋を囲んで大喜びしていたケフィ。あれからまだ半月しか経っていないのに・・・・・。横たわるだけのケフィを見ながら私は思いました。

「ケフィはもう眠りたいのかもしれない。無理に食べさせようとするのは、生き続けて欲しいと思うのは、私のエゴに過ぎないんじゃないか」

◆「祈る」とは「行動する」こと

 無理に食べ物を流し込む行為に迷いを感じていたとき、一条の光が差し込みました。長年、ガン治療を受けている知人がこんなことを言ったのです。

「私も抗ガン剤を増やすと急激に白血球や血小板が減って下痢が始まり、食欲が落ちる。そのとき無理やりにでも食べるのが大事。がんばって経口摂取を続けると、また食欲が回復する」

「眠りたい」のではなく「薬の影響」なのであれば、ケフィはまた回復するかもしれません。今までにも、メニエール病(2014年)、心タンポナーデ(2015年)という大病を乗り越えてきた犬です。

 私の迷いは吹っ切れました。天に祈る気持ちでとにかく小まめに食べ物を与えました。ミキサーを使って流動食を手作りし、人間用のケーキや味付け肉なども、私が咀嚼してから食べさせました。「犬の体にいいかどうか」なんて言っていられませんでした。

 ふと、クリスチャンの友人の言葉を思い出しました。

「『祈る』っていうのは、受動的な行為じゃない。願いを叶えるために『行動する』ことなんだよ」

◆思いもよらない宣告

 それから1週間後、三度目の奇跡が起きました。ケフィの鼻先にアップルパイを近づけると「ぱくっ」と食いつき、15センチ四方の量を平らげました。続いてヒレステーキも「ぱくっ!」。あれよあれよという間に、200グラムを食べきりました。そして、その翌日、ついに下痢が止まったのです!

 ……とはいえ、今回の長引く下痢や食欲の減退の原因も気になったので、再度、全体的な検査をしてもらうことにしました。前回の検査からちょうど1月が経っていました。「念のため」と軽い気持ちで臨んだ検査。そこで、私は思いもよらなかった宣告を受けることになりました。

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<文/木附千晶>

【木附千晶】

臨床心理士。子どもと家族カウンセリングルーム市ヶ谷共同代表。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など。

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