「杏は一度きりの不倫でも許さない」報道にモヤッ。一度なら許される?弁護士に聞いた

女子SPA! / 2020年8月27日 8時47分

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 8月1日、女優の杏(34)と東出昌大(32)が連名の文書で離婚を発表しました。このとき物議を醸したのが、前日に離婚を報じた『文春オンライン』記事の<杏と東出昌大が離婚 「杏さんは一度きりの不倫でも絶対に許さない性格」>という見出し。

 これに対しSNS上では「不倫された側の問題みたいな表現に悪意を感じる」「一度の不倫くらい大目に見ろということ?」「いや普通に一発アウトでしょ」といった意見が続出しました。「一度きりの不倫でも―」発言は夫妻の知人が杏の性格について主観的に述べたものだそう。東出の不倫は3年に及ぶと報じられており、“一度きり”でないのは明らかです。

◆「一度きりの不倫」について法的に考える

 杏と東出はすでに協議離婚で決着がついているし、許すも許さないも他人が口を挟むことではありません。ですが、もし不倫が原因で離婚調停や裁判となった場合には、法に基づき「アウトかセーフか」が判断されます。

 そこで気になるのが、法的にはどこからが不倫とみなされるのかということ。“一度きりの不倫”は許されるのか――不倫と法律について、東京永田町法律事務所の弁護士・長谷川裕雅さんに話を聞きました。

◆民法上の「不倫」はずばり肉体関係のこと

――「一度きりの不倫」は法的にアウトかセーフかお聞かせください。

長谷川裕雅弁護士(以下、長谷川)「民法第770条では、『婚姻を継続しがたい重大な理由』を5つ挙げており、その中の第1項1号で『配偶者に不貞な行為があったとき』としています。この『不貞な行為』は、ずばりセックスのことを指します。そのため、自由意思で配偶者以外の人と性的関係を持った場合は正当な離婚理由とみなされるのですが、一回限りのセックスでは、不貞行為にあてはまらないとされるのが一般的です」

――なぜ民法上では一度きりならセーフなのですか?

長谷川「日本の民法では、離婚にあたり、夫婦関係の実質を見る『破綻(はたん)主義』を採用しています。不貞行為が一度きりの場合、不倫をした側が離婚を望まなければ、反省して、今後同じ過ちを繰り返すことなく婚姻関係を維持していく意思があると判断されて、夫婦関係の破綻に結びつく事由にはあたらないとされるからです」

◆「一度きりの不倫」で慰謝料請求はできる?

――された側が受け入れられないなど、一度きりの不倫が実質的な破綻を招いた場合はどうでしょうか?

長谷川「たとえば、一度きりの不倫がきっかけで別居に至り、別居状態が数年続いたなど、夫婦関係の破綻が証明できるような場合は、民法第770条第1項5号の『その他の婚姻を継続しがたい重大な理由』として離婚が認められるケースもあります。ほかにも、もともと破綻していた場合や、不倫をした側も離婚を望んでいる場合などケースバイケースではありますが、夫婦関係の破綻が認められない中で、一方が離婚を望まないケースでは、一度きりの不貞行為で一発アウトというのは難しいのが現状です」

――一度きりでは不貞行為として離婚理由に認められないとのことですが、その場合、相手に慰謝料を請求することもできないのでしょうか?

長谷川「一度きりであっても、された側は権利を侵害されたことによる慰謝料を請求できます。逆に、不倫をする前から夫婦関係が破綻していた場合は、不貞行為が権利の侵害にはあたらないとして、慰謝料の請求権が発生しなくなります。慰謝料の請求権についても夫婦関係の実質を見るので、夫婦関係が破綻している中での出来事であれば、権利侵害がないとされるからです」

◆不倫は複数回の肉体関係を立証する必要がある

――セックスの有無や回数が不明でも、明らかに不倫関係だと思われる場合は、慰謝料や離婚を請求できますか?

長谷川「民法上ではセックスの有無が見られるので、頻繁にデートをして、手をつないだりキスをしたりしていても、不貞行為には該当しません。そのため、配偶者の不倫を理由に慰謝料や離婚を求める場合は、セックスをしている証拠を押さえる必要があります」

――セックスをしている証拠とは、例えば2人でホテルに入って行く写真などでしょうか?

長谷川「ホテルにもさまざまな種類があるので、食事や会議でも使われるようなホテルだと、いっしょに建物に入ったということだけでセックスを立証するのは難しいでしょう。同様に、自宅や不倫相手の家も、必ずしもセックスをする場所ではないので、証拠としてはやや力不足です。そのような観点で言えば、ラブホテルであれば何をする場所かが明確なので、2人で入って行った様子だけで不貞行為があったと立証できます。一度きりだと不貞行為と認められにくく、言い逃れもできてしまうので、探偵業者に依頼する場合、複数回その現場を押さえることもあります」

◆夫婦関係の破綻を示す証拠は客観性が大切

――不倫の結果としての夫婦関係の破綻についてはいかがでしょうか? 別居などをしていない場合、不貞行為以上に証明が難しいように感じます。

長谷川「家庭内の様子は傍から見えにくいので、証明は難しいでしょうね。ただ、夫婦間で電気代の精算を行って半分ほど払っているとか、家の中で生活圏を分けて相手のテリトリーに立ち入れないなど、仲のいい夫婦では行わないようなことをしている場合は、家庭内別居が証明できるかもしれません。普通に声をかければ済むような話を、わざわざメッセージアプリを通じてしているなども証拠になるでしょう」

――そのような証拠もない場合、不倫をされた側が精神的なダメージを受けたことから夫婦関係の破綻を立証することは可能ですか?

長谷川「配偶者の不貞行為のせいで、精神科に通って薬をもらったりカウンセリングを受けたりしている状況が1、2年続いているとか、妊娠中だったけれど流産してしまったなど、不倫をされた側の精神的ダメージが客観的に認められる場合は、裁判でも認定される可能性があります。ただ、自分がどれだけ傷ついたかというのは、大袈裟に反応する人もいれば、淡々としている人もいるので、主観的な主張だけだと大騒ぎしているように捉えられて、際物(きわもの)扱いされてしまうこともあります。慰謝料や離婚の請求を行う際は、客観性をもって、冷静に証明することが大切です」

【弁護士 長谷川 裕雅】

東京永田町法律事務所代表。朝日新聞事件記者を経て、弁護士に。著書に『不倫の教科書 既婚男女の危機管理術』(イースト・プレス)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)など。

<取材・文/千葉こころ、女子SPA!編集部>

【千葉こころ】

ビールと映画とMr.Childrenをこよなく愛し、何事も楽しむことをモットーに徒然滑走中。恋愛や不倫に関する取材ではいつしか真剣相談になっていることも多い、人生経験だけは豊富なアラフォーフリーライター。

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