バービー「デブ、ブス、処女という女芸人の役割に違和感」清田隆之らと語る笑いとジェンダー

女子SPA! / 2020年8月28日 8時45分

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「社会のジェンダー意識が変わっていく中で、女性芸人の意識がどう変わっていくのかは気になります」(バービー)

 今までに1200人以上の男女から恋愛相談を受け、恋愛や性差の問題について発信し続けてきた恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さんが、自らが抱える「男らしさ」への葛藤と正面から向き合った本格的ジェンダー・エッセイ集『さよなら、俺たち』を刊行しました。

 刊行を記念して、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさん、フリー編集者のおぐらりゅうじさんをゲストに招き、代官山 蔦屋書店が主催したオンラインイベント「清田隆之×おぐらりゅうじ×バービー このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ――2020年の男らしさの行方と現在地」のトークルポ、後編です! 男性社会であるお笑いの世界で「女芸人」としていじられることへの違和感と同時に抱く、「お尻を出して笑ってもらいたい」という性(さが)……バービーさんが考える、お笑いとジェンダーとは?

◆デブ、ブス、処女…をネタにする女芸人

おぐらりゅうじ(以下、おぐら):17年に始まった『女芸人No.1決定戦 THE W』について、バービーさんにお聞きしたくて。「女芸人」と一括りにされて、ある種のキャラクターを演じているとはいえ、「デブ」や「ブス」といった言葉が平然と使われていることに嫌悪感を持つ人が今はたくさんいますよね。『M-1グランプリ』は男芸人に限定していないのに、なぜ女だけのお笑いコンテストが存在するのだろうか、と。

バービー:17年に始まった当時は、まだ本音は言えない状況だったけれど、今はこうやって違和感や嫌悪感についてちゃんと話せるようになった。この4年間の社会の意識の変革って大きいですよね。

おぐら:『THE W』は第一回大会からずっと見ていますが、「デブ」「ブス」「処女」といったパーソナルなことをネタにしている女性芸人がとにかく多い。出場者はどこまでジェンダーを意識していたんですかね。

バービー:やっぱり、芸人として抜きん出なきゃいけないという舞台だからこそ、「デブ」「ブス」「処女」という、「女芸人」として求められている役割を全力でまっとうしてしまったんだと思うんですけど、後ろめたさを感じているかどうかはわからないです。やっている本人たちの感覚は麻痺していると思います。

おぐら:男性芸人の中に混じって存在感を発揮するためには、自らの容姿をネタにすることが武器になるというのは現実としてありますが、一方で「女芸人はこうあるべき」という男性社会の抑圧がそうさせた部分も大きいですよね。

バービー:確かに。物議を醸しながらも、何年も続いているのはすごいですよね。社会のジェンダー意識が変わっていく中で、今後、女性芸人側の意識がどう変わっていくのかは気になります。

清田隆之(以下、清田):バービーさんはPEACH JOHNの下着のプロデュースをしてるじゃないですか。それを告知したTwitterに、「俺の“手ブラ”じゃダメかな」というセクハラリプがきて、「そのコメントをおもしろいと思ったけれど、どう反応していいのかわからず困った」という話を去年取材で一緒になったときにしていらっしゃいましたよね。

◆“ケツがデカい女”として褒められるのは嫌な気はしない

バービー:そうそう。私自身はおもしろくても、それを見ている第三者に対してどうパフォーマンスしていいのかわからなくて。私は未だにあのコメント好きです(笑)。

清田:自分も正直笑ってしまったんですが……でも「おもしろい」と言ってしまうと、セクハラを容認するようなリアクションにも取られかねないから難しいですよね。ジェンダーについてユーモアを込めて語ったり、笑いにしていくこともあっていいと思うけれど、そのさじ加減や態度の取り方ってものすごく難しいなと感じています。バービーさんはそのあたりどうお考えですか?

バービー:私、ロケで漁師町に行ったりすると、「おめぇ、いい赤ん坊を産みそうだな」とか言われるんですよ。すごくケツがでかい女として褒められるなら、私としては嫌な気はしないというか。「そうでしょ!(お尻を)見て!」って(笑)。

おぐら:うちの実家は埼玉の郊外にあるのですが、地元のおじさんたちはいまだに「姉ちゃんケツ大きいな」とか平気で言うんです。で、ねじれがすごいなと感じるのは、そういうセクハラ発言をバリバリする人が無茶苦茶優しかったりするんですよ。「あいつは学がねぇからさ、俺のところで雇ってやってるんだ」みたいな、能力至上主義ではない人付き合いをしていたりして、もしかしたら博愛なのでは?とも思わせる。

バービー:「この人は言葉は悪いけど、人として愛情がある人だな」ということって、感覚でわかりません? あまり言葉に先に敏感に反応しちゃうクセがつくと、裏に含む意味を感じる能力が乏しくなっちゃうのかなとも思う。だから、言葉の裏に悪意や攻撃性がないことがわかる人に限っては、ちょっとくらい毒が入った発言があったとしても、全部が全部ダメって人格まで否定することはないんじゃないかと思っています。

おぐら:言葉だけじゃなく、その人の背景や雰囲気など、いろんなものを感じたうえで、「おもしろいな」と思えるならOKというのは確かにそうだと思います。でも、読者や視聴者は、現場で感じた生の雰囲気を同じようには共有できないじゃないですか。「バービーさんにセクハラしてるジジイじゃん」としか見えないときに、「セクハラされているのに何で一緒になって笑ってるの」と傷ついちゃう人もいるかもしれない。

◆息子の彼女にセクハラ発言をした父親

清田:個人的な話になってしまいますが、僕の父は下町で電気屋を自営しているんですけど。20代のころに、自分の家族と、当時の恋人と初めて食事をしたときに、父が僕の恋人にいきなり「子どもみたいな体型してるね」って言ったんですよ。それにめちゃくちゃびっくりして。悪意はないんだろうけど、息子の彼女にセクハラとも受け取られない失礼なことをポロッと言ったりする……うちのお父さん結構やばいなって。

バービー:そういういじりみたいなのもありますよね。

清田:「ええええ!なんでそんなこと言うの?」と、僕は固まっちゃって。

バービー:単純に失礼というのもあるし、「息子の彼女を女として見ている」という点でも、それは確かにゾッとするかもしれないですね。

清田:カラッと言っていたし、彼女のほうも、実際にどう感じたかは聞けずじまいでわからなかったけど、「よく童顔って言われるんですよー」みたいに返していて。一応は何事もなく終わったんだけど、自分としてはどういう態度でいればよかったのかわからなくて、「彼女に嫌われたらどうしよう……」って絶望的な気持ちになったことを覚えています。

バービー:男同士だからこそ、発言に潜む暴力性を感じてしまって、ドキッとしたのかもしれないですね。

清田:悪意がないからといって看過するのが難しい発言もありますよね。

◆女芸人界隈ではまだ「コンプレックス=武器」

バービー:テレビだとスポンサーがいて、演者や制作が気にするのは、基本的にスポンサーと視聴率ですよね。大衆向けのエンタメだからこそ、使っちゃいけない言葉や表現など、規制の基準はある程度画一的じゃないといけないと思うんです。これがたとえば、オンラインで視聴者がおカネを払って観にきている番組なら、基準は自由に決めていいと思う。でも、視聴者から直接お金をもらっているわけじゃないからこそ、テレビは一線を引かなきゃいけない。

おぐら:観ている人がバービーさんの対応に違和感を覚えてしまうかもしれないことへの葛藤みたいなものはやはりありますか?

バービー:あります。漁師町のおじさんの発言も、私自身ハラスメントだと思っていなくても、観ている人はそう受け取るかもしれない。

おぐら:女性の芸人さんにとって、自ら容姿をネタにするのは一つの武器だったけど、その武器はもう使えなくなりつつあるという現象が起きていますよね。武田砂鉄さんのラジオ『ACTION』(TBSラジオ)にゲスト出演されたときに、バービーさんが「コンプレックスが武器にすらならなくなるぐらいがベスト」とおっしゃっていましたが、今はまだ、女性の芸人にとってコンプレックスは武器になっていると思います?

バービー:世間一般の女性を見ていると、「自虐よりも自己肯定」という流れを感じるし、変わってきている気はしますけど、女芸人界隈ではまだ「コンプレックス=武器」かもしれないですね。実際問題、その武器を持たないと戦えない人が多いんだと思います。今のお笑いの中でおもしろいとされている基準自体が男性的なので。

 でも、振ってパスして落とすという段積みの笑いは男性的だけど、ニュアンスや空気感で笑わせるのは女性的だったりする。後者はまだ世間の王道の笑いではないけれど、そういう笑いが好きな人たちが増えてくれば女芸人もコンプレックスという武器を使わずに活躍していけるようになるんじゃないかなと思います。

清田:漁師さんの発言は肌感覚で嫌悪感を抱かなかったわけですが、他に仕事で嫌だと感じた発言で、はっきりNOと言ったこととかってありますか?

バービー:芸人を始めたころは全然ジェンダー問題への意識がなくて。男芸人は女芸人のおっぱいを触ることがボケみたいな時代があったんですよね。私も、もれなくそうされる(おっぱいを触られる)感じだったんですけど、舞台裏で二人っきりのときに揉んできた奴がいて(笑)。それは嫌でしたね。

おぐら:舞台上ならOKだと思っていたんですか?

バービー:舞台上はOKだし、舞台袖も第三者が見ていればボケですよね。サンドバッグ代わりです。

清田:マジすか……。ボケとして機能していれば嫌悪感はゼロという感じだった?

バービー:当時はそうでしたね。爆笑が取れたときのおもしろさのほうが優っていたので。でも本当に誰もいないところで無言で触ってきた人に対しては、「はぁ?」って言いました。答えになってますかね。

◆どんなハラスメントでも芸人のボケをシラけさせたくない

おぐら:いま舞台に出て、触られることがあったら、どう対応しますか?

バービー:それがどんなハラスメントであろうと、芸人がボケだと思ってアクションしたことをシラけさせるようなことはしたくない。「それは違うよ」とわからせるような返しで笑いが取れたらめちゃめちゃベストだけど、スカす態度はさすがに取らないと思います。何とか笑いは取ろうとするけど、顔面蒼白にはなるかもしれないですね(笑)。

清田:なるほど……笑いのプロの現場ならではの話ですね。

おぐら:お笑い芸人としてのバービーさんにとどまらず、『FRaU』のコラム連載や、個人として発言されているバービーさんが素敵だという声が高まっていて、オピニオンリーダーとしての期待が集まっていることについてはどう思っていますか?

バービー:芸人としての自分は、逆セクハラのカリスマみたいなところがあるので(笑)、前と同じように過激なことはできないというか、そこはちょっと空気を読まなきゃいけないとは思いつつも、それでもまだやっていきたいというのが本音です。

清田:逆セクハラのカリスマとして(笑)。

◆お尻を出すのが好きなのも私

バービー:私、お尻を出すのが好きなんですよ。単純に自分でおもしろいなと思うことって小学生レベルというか変わってないから、まだまだそういうこともやりたいという気持ちはあって。

10年くらい芸人をやっているんですけど、バービーはみんなに作ってもらったものだと思っているし、連載やこういうイベントだったり、今やっている活動は本当に私の素の部分なので、こっちを好きと言ってくれる人がいることはすごくありがたいです。でも、お尻を出すのが好きなのも私だし、どちらかを切り離して捨てることはないですね。

清田:最後にひとつだけバービーさんに聞いてもいいでしょうか? 

今日のトークのテーマである「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」は元々『ハムレット』から引用した言葉です。当時、ルターの宗教改革やコペルニクスの地動説などによってそれまで絶対的だった宇宙観に揺らぎが生じ、人々の混乱する心の内を表現した言葉だそうですが、僕は個人的に、ジェンダーへの意識が高まってきている今、自分たちの優越性に無自覚に生きてきた僕ら男性にも当てはまる言葉だと思っているんですね。このあたり、バービーさんのご意見をお伺いできればと!

バービー:このままでいいのかと悩んでいる男性は、とりあえず、攻撃とは違う発信をしてほしいですね。

私のYouTubeの内容は、「レディースクリニックに行こう」とか「生理用ナプキンの使い方」とか、結構女性向けの回が多いんです。でも、そういう回に限って、絡みたくてしょうがない男子がすごい量で湧いてくるんです(笑)。「50日止まりません、血が。どうしたらいいのかバービーちゃん教えて」みたいなものすごいゲスい発言がコメント欄に続々と並ぶ。

そこで「男だってつらいんだぞ」というコメントを見つけたんです。でも、つらいんだったら話してほしいと私は思うんですよ(笑)。茶々を入れて攻撃してくるくらい、男性性を背負って生きることがつらいんだったら、まず教えてよ、聞くからさと。何がつらいのかを言えもしないのに、ゲスなコメントをしてみんなを巻き込んで不快にするのはどうかなと思うので。

清田:男性たちが苦しみを自分の言葉で語ってくれれば、そこからどうすればいいのか考えられるけど、なかなか発信されることがないですもんね……。

バービー:今までフェミニストは、弱者の立場からがんばってきたけど、最近の男性は、「自分たちも男性社会で男としての役割を押し付けられてつらい思いをしている弱者だ」と思いはじめているじゃないですか。「話を聞いてくれ」と言っている感じがする。女性も男性も互いに意見を伝えて、「合意点を見つけるために話し合おう」という攻撃し合わない土俵がひとつあったらいいなぁと思います。

清田:そうですね。自分の本もそういう土俵のひとつとして役立てたらいいなと思います。

バービー:今度は、SNSで送られてくるいやらしいDMについての話もしたいですね。卑猥な言葉や写真を延々送りつけてくる男性、たくさんいるので。だからそんなことしてないでちゃんと話そうよって(笑)。

●清田隆之

80年、東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。『cakes』『WEZZY』『QJWeb』『an・an』『精神看護』『すばる』『現代思想』『yom yom』など幅広いメディアに寄稿。朝日新聞be「悩みのるつぼ」では回答者を務める。桃山商事としての著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(共にイースト・プレス)、単著に『よかれと思ってやったのに─男たちの「失敗学」入門』(晶文社)がある

●バービー

84年、北海道生まれ。07年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。男女の恋愛模様をネタにした「イエス、フォーリンラブ!」の決め台詞で注目され、人気を集める。FRaU WEBにてエッセイの執筆、TBSひるおびコメンテーター、TBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティ、ピーチ・ジョンコラボ下着をプロデュースなど幅広く活躍。女性芸人の立場から、ジェンダー問題について考察した発言や記事が共感を呼んでいる。昨年末にスタートしたYouTube「バービーちゃんねる」は、再生回数270万回超の回もあり、好評配信中

●おぐらりゅうじ

80年、埼玉県生まれ。フリー編集者。これまでの主な仕事に、テレビ東京の番組『ゴッドタン』の放送10周年記念本『「ゴッドタン」完全読本』(KADOKAWA)企画・監修、映画『みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショーがやって来る! 「レジェンド仲良し」の秘密』構成・監督、速水健朗との共著『新・ニッポン分断時代』(本の雑誌社)など。編集を手がけた、鈴木涼美・著『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、山内マリコ・著『山内マリコの美術館は一人で行く派展』、川田十夢・著『拡張現実的』(いずれも東京ニュース通信社刊)が発売中

<取材・文/小川知子 撮影/福本邦洋 協力/代官山 蔦屋書店>

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