「膣に塗るクリームで生理痛が改善」!?トンデモな噂を皮膚科医が斬る

女子SPA! / 2020年9月29日 8時46分

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“潤い”は、女性をとりこにするワードのひとつです。それはデリケートゾーンも同じようで、「膣も乾燥するから保湿ケアをしよう」という情報がSNSを中心に広まっています。

 さらには、「不足した女性ホルモンを膣の粘膜から補填する」というクリームやオイルまでもが、一部の女性に支持されている様子。「デリケートゾーンをケアすることで生理痛や尿漏れが改善される」などという話題もあり、何かと皮膚から物質を吸収する「経皮吸収」が注目されていますが、本当にそのようなことがあり得るのでしょうか?

 そこで、銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子先生に、膣に塗るクリームや経皮吸収の真偽について伺いました。

◆女性ホルモンを補填するクリームはありえる?

 SNSで話題となっている「経皮吸収」は、皮膚に触れた物質が、毛穴や汗腺、細胞内や細胞の間を通って吸収されるメカニズムのことです。膣や結膜などの粘膜は皮膚よりも吸収率が高く、坐薬を肛門から入れるのも、直腸の粘膜の経皮吸収により成分が早く吸収されるからだそうです。

 ですがそもそもネットなどで販売されている“女性ホルモンを補填するクリーム”に、女性ホルモンは含まれているものなのでしょうか。

「日本の薬機法では濃度の上限が厳しいと思いますが、女性ホルモン含有のオイルなどは存在します。全身へ作用して薬効を発揮するかどうかは臨床試験をしていないので微妙でしょう。海外製品は、医療レベルの高濃度品が出回っているかもしれません。」(コメントは慶田朋子先生、以下同じ)

 とはいえ、女性ホルモンを補填するクリームについては「体内で女性ホルモンが生成されている若い方が補填しても、今以上にきれいになるということはありません」。自身の卵巣で女性ホルモンを作れている閉経期前は、常に体がホルモンバランスを保っているため、閉経後のホルモン補充療法で期待できるような美容効果はありません。

◆余分なケアや洗浄のしすぎで、膣が臭くなることも

 それどころか、「女性ホルモンを人工的に加えるようなことをしてしまうと、本来のバランスが崩れて、女性ホルモンが生成されなくなるなど正常に機能しなくなる恐れがあります」とのこと。

「基本的に、若く健康なうちは膣に何かを塗らなければならないということはありません。温水シャワー便座のビデの機能も、基本的にはやめてほしいです」と慶田先生。膣の中は常に酸性に保たれているのですが、クリームを塗ったり、水で洗ったりする行為を繰り返すうちに、常在菌バランスが崩れて悪玉菌が増え、臭くなってしまうこともあるのだそうです。

◆女性ホルモンを補うことがあるケースとは

 ただ、閉経が訪れた女性についてはその限りではないそうです。

「女性の体は膣を通って内臓に細菌などが入りやすい構造になっているので、粘液でガードしながら清潔を保っているのですが、閉経後はホルモンが出なくなって、膣粘膜が萎縮(いしゅく)し、膣の粘液量も減っていきます。膣の中の粘膜が乾きやすくなることで炎症を起こして出血したり、痛みや性交痛を伴ったり、する萎縮性膣炎を起こすことがあります。粘液が不足すると細菌に感染しやすくなり、臭いがキツくなることもあります」

 そのような場合には、女性ホルモンを人工的に補って、ホルモンバランスを整えることが必要なのだそうです。「女性ホルモンを補填して肌がきれいになったというのは、閉経を迎えた女性が、閉経前に近いホルモン量に戻ったことによる効果だと思います。女性ホルモンが足りている若い女性ではありえないでしょう」

◆経皮吸収をめぐるトンデモ科学にメス

 経皮吸収をめぐっては、女性ホルモンの補填以外にも、「デリケートゾーンをケアすることで膣が柔らかく温められた状態になり、生理痛や尿漏れが改善される」「生理用ナプキンの有害物質が吸収される」といったうわさもあります。

 これらに関して慶田先生は「デリケートゾーンは、お風呂できれいに洗うくらいで、特別なケアをする必要はありません。どうしてもケアしたいのであれば、いろいろな成分の入っていないシンプルなオイルで保湿するくらいで十分でしょう。ただし、あくまで膣口より外側に限ります。膣の中は、医師の指示がない限り、洗ったり、何かを塗ったりしてはいけません。それに、膣内をはじめ、体内は常に37度に保たれているので、デリケートゾーンの皮膚をケアして膣内が温められるといったこともありません」とバッサリ。

◆生理用ナプキンのおかしなうわさ

 生理用ナプキンの有害物質についても、「生理用ナプキンの不織布や給水成分が石油由来であることが理由でしょうけれど、ナイロンやポリウレタン製のショーツを履くと人体に有害でしょうか? 石油から作ったペットボトルに入った水は有害成分が漏出していますか? 石油が原料でも肌に触れて石油に戻るわけではありません。化学知識のない人たちがイメージする精神論は全くもってナンセンス。そもそも生理用ナプキンは血液を吸収するために作られているので、肌に触れる部分に有害な物質が含まれているといこと自体考えにくいでしょう」と、トンデモ科学を一刀両断です。

◆かゆみやトラブルがあれば自己判断せず病院へ

「もしデリケートゾーンや膣内に何かしらのトラブルを抱えているのであれば、市販薬やうわさに頼るよりも、病院を受診してください。なお、『フェミニーナ軟膏』などのかゆみを抑える市販薬は、感覚神経をマヒさせ痒みを感じにくくする目的で、麻酔薬のリドカインが入っているので、漫然と使用するのは非常に危険です。

 デリケートゾーンの相談で受診するのは恥ずかしいという方も多いですが、私たちはたくさんの症例を見てきているプロなので安心してくださいね」

 デリケートゾーンのトラブルは婦人科のイメージが強いですが、膣口より外側は皮膚科専門医が診るべき領域です。膣や子宮、卵巣などの内部の相談は婦人科に相談しましょう。

<慶田朋子 取材・文/千葉こころ>

【慶田朋子】

銀座ケイスキンクリニック院長/美容皮膚科医 /医学博士/レーザー専門医

東京女子医科大学医学部卒業後、同皮膚科学教室に入局。美容クリニック勤務などを経て、2011年に銀座ケイスキンクリニックを開設。メスを使わないナチュラルな若返りを叶える美容皮膚科医としてファンが多い。皮膚科専門医の立場から分かりやすく解説する、正しいスキンケアとインナーケアの情報を多くのメディアで発信。著書『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)など。

銀座ケイスキンクリニックホームページ/インスタグラム

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