子供はいらない女性、欲しい夫から離婚を切り出された胸の内

女子SPA! / 2020年10月14日 15時47分

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写真はイメージです(以下同じ)

 知り合って好きになって、その「好き」が絶好調に盛り上がって結婚。そんな大恋愛で結婚する場合、結婚後の青写真がまったくないというケースが多々ある。

 好きだから一緒になりたい。その思いだけで突っ走ると、「日常生活」や「人生の計画」などを見落としてしまうことがあるのだ。

 夫は子どもをほしがり、自身はいらないと思っていたという女性の話を聞いた。

◆一気に盛り上がって結婚

「恋愛期間は1年くらい。特に短いわけでもなかった。ただ、その間、徐々に気持ちが盛り上がっていって、この人がいなければ生きていけないというような気持ちになっていきました」

 そう話してくれたのは、カナコさん(仮名・37歳)だ。

 33歳のころ、一生できる趣味をと音楽教室に通い始めた。そこで知り合ったのが2歳年下の彼、リョウタさん(仮名)だった。

「ふたりともチェロを習っていたんです。チェロに触るのも初めてという初心者クラス5人だったので、何度か通ううちにみんな親しくなって帰りに居酒屋に行く関係に。20代から40代、社会人ばかりで楽しかった」

 彼が最年少、次に若いのがカナコさんだった。自宅の方向も同じだったため、ふたりはさらに親近感を覚えるように。

「1年ほどたったころ、彼がつきあってほしい、と。私は特に彼を男として意識していなかったんですが、音楽教室に通うきっかけがそれまでつきあっていた人と別れたことだった。しばらく恋などしたくないと思っていたんです。

 でも彼に告白されて、ふっと思い起こすと、彼に会うのを楽しみに通い続けていた側面もあるな、と。友だちとしてつきあってきたけど、男女としてつきあうのも悪くないかもしれない。そう思いました」

 彼女は彼に、恋人にフラれたから音楽教室に来たこと、自分がまた恋愛モードになれるかどうか自信はないこと、でもリョウタさんは信頼していることなどを率直に伝えた。

「彼は正直に話してくれてありがとうと言いました。『カナコさんがときどき、ふっと寂しそうな顔をすることがあったので気になっていた』って。そんなふうに私を見ていたのかとちょっと感激しましたね」

◆交際1年で結婚

 たがいの時間が許す限り、ふたりは会って話をし、映画を観て討論し、ドライブに出かけて自然に触れた。彼のことがわかっていくにつれ、彼女の中の恋愛モードはどんどんギアが上がっていくようになった。

「つきあうようになって1年近くたったころ、私、この人が本当に好きだと思って、自然と涙があふれてことがあるんです。一方で、好きすぎて怖かったし、幸せすぎて怯(おび)えていた。今、どちらかが急に死んだら、ただの恋人同士で終わってしまう。そんな恐怖感も抱きました。

 そういう気持ちを素直に彼に伝えたら、彼は『オレも同じ気持ち。今すぐ結婚したい』と。ふたりで盛り上がってしまって、翌日にはお互いの両親に電話で報告、すぐに婚姻届も出しました」

 そしてふたりは新居を探してすぐに引っ越した。友人たちへの報告が遅れて、ふたりともあきれられたくらいだった。それほどまでに「一緒になりたい、世間に認められた関係になりたい」一心だったのだという。カナコさん35歳の春だった。

◆生活が始まってみると……

 カナコさんはリョウタさんとは週末2日間、あるいは1泊旅行しかしたことがない。同棲もせずにいきなり一緒に住むようになったのだが、不安はなかったという。

「話し合えばすべて解決する。実際、生活しはじめても何の問題も生じませんでした。お互いにひとり暮らしだったから、それぞれ家事の流儀などはあったけど、妥協案を探り出したり相手に寄り添ったり。とにかく彼と結婚したことで安心感が倍増したんです。

 平日も彼はどうしているだろう、今日は会えるかななんて心配をせず、仕事に集中できるようになった。仕事とプライベートの切り替えも上手になったと思います。その結果ですかねえ、結婚して半年ほどで、社内の大きなプロジェクトに副リーダーとして参加できることになったんです」

 うれしくて飛んで帰って彼に報告した。彼も喜んでくれたのだが、そのプロジェクトが2年がかりと聞いて、彼は顔を曇らせた。

「子どもはどうするのって彼が急に言い出して。あ、と思いました。私たち、結婚するにあたって未来の青写真をまったく話さなかったんです。子どもをもつのか、家は買うのか、私は地方出身のひとりっ子、彼は東京郊外に実家がある長男。

 普通は将来を話し合うんでしょうか。私たちは、ただ一緒にいたいという思いだけで結婚しちゃった。他のことはともかく、子どもについてはそのとき初めて、まったく考えが違うとわかりました」

◆彼は子どもをほしがり、私はいらないと思っていた

 カナコさんは子どもをもつつもりがなかったのだ。仕事で自己実現をしたい、そのためには家庭をもたなくてもいいとさえ思っていた。ただ、パートナーはほしかった。手を携(たずさ)えて一緒に歩く人がいれば、家庭という形にはこだわっていなかった。リョウタさんと結婚したのは、「一緒にいたかった」だけなのだ。

 リョウタさんも、もちろんカナコさんが好きで「ずっと一緒にいたい」という思いで結婚した。だが結婚という形をとるからには、当然、子どもを持つものだと思い込んでいた。

「子どもへの考え方がそんなに違うとは思ってもいなかった。私はずっと猫を飼っていて、新居にももちろん連れてきていたし、彼にもすごくなついていました。だからもう一匹いてもいいかなあと考えたけど、子どものことは抜け落ちていました」

◆話をしたけど夫にはわかってもらえなかった

 どうして子どもをもちたくないのかと彼に聞かれ、カナコさんは必死に考えた。子どもが嫌いというわけではない。ただ、「育てる」ことなどできないと思っていたし、自分の人生だけを考えたかった。

「人から見たら身勝手な考え方だと思うでしょうね。でも子育てに自分が向いているとは思えなかった。できないとわかっているのに子どもをもったら、私も子どもも不幸です」

 カナコさんが育った家庭は、いわゆる機能不全家族だった。父方の両親が同居していたため、母はいつも義父母に気を遣い、いびられていた。父はそんな母をかばうこともなく、ときに両親と一緒になって母に嫌みを言っていた。母のストレスはカナコさんへの八つ当たりという形で発散されていた。

「よく太もものあたりをつねられていました。音もしないから虐待しているとわからない。だけど太ももはアザだらけでしたね」

 子どもをもったら自分もそんなことをしてしまうのではないか。そんな不安もあったが、実際にはそれ以前に「子どもをもつ」選択肢を消していたのだ。

「私自身、子ども時代のことはもう封印していたので、結婚前に彼に話すという発想もなかっただけなんです。そんな話もしましたけど、彼にはわかってもらえなかった。オレたちなら協力して子育てできるよ、と明るく言われて。ああ、こんなところに落とし穴があったんだなと困惑しました。

 私自身が解決できずに封印してしまった昔の事実が、今になって引っ張り出されるとは思わず、妙に焦(あせ)りましたね」

◆彼から離婚を切り出された

 その話はとにかく棚上げしたいと彼に話し、彼女は仕事に必死に取り組んだ。そしてつい最近、ようやくそのプロジェクトが成功裡に終了したのだが、ほっとしたのもつかのま、彼から離婚を切り出されたという。

「プロジェクト期間中は、彼にも迷惑をかけました。彼も子どもの話は持ち出さず、私を支えてくれた。コロナの影響もあって大変だったんですが、なんとかやりとげた。

 彼、好きな人ができたのかもしれません。今まで支えてもらった分、今度は私が彼を解き放すべきなんだと思っています」

 まだ結論は出ていない。だがどうしても子どもがほしい彼と、今でもやはりその件は考えられない彼女との間には、あまりに大きな溝(みぞ)ができている。埋めることは不可能だと彼女は言った。

 結婚後のことを詳細に決める必要はない。だが、結婚後の人生のほうが長いことを考えれば、家庭のありようをどうするのか、子どもをもつつもりがあるのか、その程度のことはあらかじめわかっておいたほうがいい。

「子どもをもつのは当たり前だから」と一方が考えていて、もう一方はまったくほしくないと考えている場合、カナコさんたちのように溝を埋める術はみつからない可能性が高いのだから。

―シリーズ「結婚の失敗学~結婚観・家族観のすりあわせを失敗」―

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

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