木村佳乃『恋する母たち』の落とし穴みたいな恋。心の隙間が大きいほどハマる

女子SPA! / 2020年10月30日 15時45分

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画像:TBS『恋する母たち』公式サイトより

 木村佳乃主演の連続ドラマ『恋する母たち』(TBS系、金曜午後10時~)が10月23日から始まりました。木村が吉田羊、仲里依紗とともに、どんな「母たち」を演じるのか――話題の本作を、男女関係や不倫事情について長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが読み解きます。これを読めば、2話からでも十分に楽しめるはず!(以下、亀山さんの寄稿)

◆「恋する母たち」は、「恋する妻たち」ではない

 柴門ふみさん原作・大石静さん脚本のドラマ『恋する母たち』が始まった。3人3様の環境にいるが、息子たちを同じ私立有名進学校に通わせる「母たち」が、それぞれに恋をする物語だ。

 不倫を推奨するのかという声が上がるのは想定内のことだろう。

 30数年前のドラマ『金曜日の妻たちへ』(TBS系)を持ち出す感想まである中、やはり「妻」が恋をするのではなく、「母」が恋をすると宣言してしまうところに、ある意味での女性の進化を感じるし、逆にいえばそこを叩かれてしまう今の時代の息苦しさがじわりと滲(にじ)む。

 つまりは、妻も母も「役割」でしかなく、その役割を担っているのは、ひとりの女そのものなのだ。

◆「人は怒ると、性欲が高まるみたいだ」

 石渡杏(木村佳乃)は、夫の慎吾にいきなり失踪される。その後、「うちの妻があなたのご主人と駆け落ちしました」と登場するのが斉木巧(小泉孝太郎)。最初のうち、彼女は「心につきささる好きという感情」を夫に抱き続け、駆け落ちを認めようとしない。だが斉木に、「この世でいちばんの由香へ」と書かれたハガキを見せられ、それが海外出張のおりに「この世でいちばんの杏へ」と夫から来たのと同じ絵はがきであることを確認した杏は、斉木の胸で初めて泣き、流れで関係をもってしまう。

「人は怒ると、性欲が高まるみたいだ」

 杏のこのひと言が興味深い。自分の夫が駆け落ちした女性の夫と、復讐のように関係をもったと受け止められるかもしれないが、おそらく彼女は誰でもよかったのだ。高まった性欲を満たしてくれるのが、たまたま目の前にいる「同じ傷をもつ人」だっただけ。男女はそんなことで関係をもつこともあり得る。人肌でしか癒やせない傷もある。いや、傷は決して癒えないのだが、それでもあえて人肌を求めざるを得ないことがあるのだろう。

◆タワマン住みのセレブ妻が抱える孤独

 そこから11年たって、息子が進学校に入ったところからドラマは始まる。義母の援助を受けつつも、シングルマザーとして働きながら女手ひとつで息子を育ててきた杏。

 そして同級生の母である蒲原まり(仲里依紗)は夫が弁護士でタワマンに住んでいるセレブ妻。だが夫は寝室ではいつもアイマスクに耳栓をしてダブルベッドに寝る。しかも夫は自分の事務所の新人弁護士を愛人にしている。出張と偽って彼女と海外旅行をするのだが、まりは、その準備をしながら夫の携帯で愛人とのやりとりを見てしまう。

 帰国後、その愛人が妻のまりに会いに来る。妻を値踏みするかのように見る愛人の表情が興味深い。若い彼女はセレブ妻には怖じ気づかない。タワマンに住んで「97パーセントの人間を見下ろしながら」生きていても、どんなにブランドもののファッションに身を包んでいても、まりは孤独を抱えている。

そんなまりが、100年にひとりと評判の天才落語家・丸太郎(阿部サダヲ)から熱烈に口説かれる。

 夫には従順で、子どもにはいい母、世間ではセレブ妻なのに気さくでちょっと跳ねていて、実は案外お人よしなところもある複雑なまりを、仲里依紗が自然に演じているのに目を引かれる。

◆家では息子が引きこもり、会社ではパワハラを受ける

 もうひとりの同級生の母・林優子(吉田羊)はバリキャリ女性。売れない小説家の夫と、不登校で自室にこもる息子と暮らす。大手企業の宣伝部課長で、女性初の役員と目されているが、上司からはパワハラまがいの仕打ちを受け、母としても仕事人としても自信が揺らぐ日々。彼女を慕いつつライバル心をむき出しにもする若い部下の赤坂(磯村勇斗)と何か起こりそうだ。

 優子は「正義の人」だ。自分の正義を貫くあまり、若干融通性に欠けるが、それもまたキャリア女性として魅力になっている。

◆落とし穴にすっぽり入るように、恋に落ちる

 シングルマザーであろうと夫がいようと、誰の心にも隙間はある。そしてその隙間に「恋」は忍び込む。おそらく、そのとき必要とする人が、必要とするタイミングで入り込んでくるのだ。恋をしたくてするわけではなく、やはり落とし穴にすっぽり入るように、恋に落ちるのではないだろうか。心の隙間や穴の大きさと、そこに入り込む恋の深さは比例するものなのかもしれない。

「母が恋をして何がいけないの」と開き直っているわけではない。「母であっても恋をしてしまうことがある」という話なのだ。最初から善悪の判断からは逸脱していると考えたほうがいいかもしれない。

 恋を通して、人は自分をより深く知る。そして恋を知る前とは明らかに変化していく。3人の女性はどうやって恋をして、どういう経緯を辿り、どんなふうに変化していくのかが楽しみだ。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

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