「正しい避妊」を意外と知らない。“コンドーム妊娠”もありえる|医師解説

女子SPA! / 2021年1月17日 15時45分

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 子どもを産む? 産まない? 産むとしたらいつ? 考え方はそれぞれですが、予期しない妊娠はやはり避けたいもの。そのためには正しい避妊が必要なわけですが……「確実な避妊」の知識、自信がありますか?

「コーラで膣を洗えばOK」「騎乗位なら妊娠はしない」「うがい薬で膣洗浄」といった都市伝説を信じている方はさすがに少ないでしょう。しかし、「生理前後は妊娠しない」「中出ししなければ大丈夫」「排卵日ではないから安全」となんとなく信じていませんか。これらもまた間違い。そして意外にも「コンドームで完全な避妊」というのも、決して正解ではないようなのです。

◆完全な避妊はコンドームとピルの併用

「日本ではコンドームが避妊具として広く一般的に普及していますが、実はコンドームをしていても、100人の女性が1年間で妊娠する率は2~18人(*1)と言われています。途中で外れたり、破れたりもしますし、結構な頻度で“コンドーム妊娠”は存在しているということです。

 もちろん、性感染症予防のためにもコンドームの着用は必須ですが、これだけで避妊ができている、と過信しては危険です」

 そう語るのは、産婦人科医で赤羽駅前女性クリニック院長の深沢瞳子先生。

 では、確実な避妊のためにはどうしたらいいのでしょうか?

「低容量ピルは飲み忘れがなければ、避妊失敗率は0.3%。ピルを飲んでコンドームをすればほぼ100%、避妊ができると言われています。ピルを飲んでいるからコンドームをしなくていい、ということでは決してありませんが、ピルは女性が主体となってでできる避妊。自分自身でコントロールできるというのが、いちばんのメリットです」(深沢先生、以下同)

◆ピルは不妊にかかわる病気の予防にもなる

 深沢先生自身、この19年間、妊娠と授乳期間中以外はピルを飲み続けていて、「産婦人科の女性医師や看護師でピルを服用している人は結構多い」のだそう。それは「ピルには避妊だけでなく、さまざまな効果効能がある」からだと言います。

「ピルを飲むと生理不順がなくなりますし、1日単位で生理のタイミングを調整することができます。生理の量が減るので生理痛の苦しみがなくなり、チョコレート嚢胞や子宮内膜症といった不妊にかかわる病気を予防することができます。

 子宮内膜症は不妊症の原因になるだけでなく、仮に妊娠できたとしても妊娠中の前置胎盤や常位胎盤早期剥離といった早産を引き起こすような産科合併症を増やしたり、卵巣癌などの悪性腫瘍や、脳梗塞(こうそく)や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など一見子宮内膜症とは関係ないような閉経後の病気のリスクまでも増やすことがわかっています。

 生理痛がある人は生理痛がない人に比べて2.6倍も子宮内膜症を発症するリスクが高くなると言われていますので、決して生理痛は我慢しないでください。鎮痛剤や漢方薬で対処するだけでなく、一度婦人科で相談しピルで治療することを検討してみるといいかもしれません」

◆排卵と生理に追われる現代女性

 毎月、当たり前にあると思っていた排卵や生理が、実はからだに大きな負担をかけている。とご存知ですか。

「現在、初経の平均年齢は12歳ですが、昔は16歳位。年間に生理は14回ありますから、4年増えれば、それだけで約60回も排卵と生理が増えるわけです。しかも、近年は昔に比べ出産回数が激減しています。1人出産すると妊娠期間中と授乳期間中を合わせて2年間近くは排卵を休憩しているため、その間生理もありません。昔のように生涯のうちに7~8人出産していると、合計15年くらい排卵と生理を休憩しているということになります。しかし、今は出産したとしても1人か2人が多く、ゼロも珍しくありません。つまり、現代女性はずっと排卵と生理がフル回転状態。現代女性は生涯のうちに450回以上も生理があって、これは6年間ずっと出血し続けているのと同じことになります」

 排卵は妊娠のためには必要なものだけれど、妊娠を希望していないときにはからだに大きな負担を課すものだったのです。

◆増えすぎた排卵を“休憩”するメリット

 現在、子宮筋腫は4人に1人、子宮内膜症は10人に1人、月経前症候群は2人に1人と、婦人科系の病気に悩む人は少なくありません。なかでも、子宮内膜症はこの40年で30倍に増加。

「これらの病気は女性ホルモンが関与しており、排卵回数が多ければ多いほどリスクが高くなります。ピルは排卵が休憩できるので、もちろん避妊効果もありますが、増えすぎた排卵を休憩することで生理痛や過多月経、子宮内膜症、PMS(月経前症候群)、月経不順を改善したり、卵巣癌や子宮体癌などの悪性腫瘍のリスクを低下させたり、ニキビや肌荒れの改善にも効果がある、など様々な報告がされています」と深沢先生は指摘します。

◆ピルの服用と体重増加に因果関係はない

 避妊だけでなく、将来の婦人科系の病気や不妊症への予防になるとは、いいことだらけ。でも、副作用が気になります……。

「服用をはじめてすぐ、不正出血や吐き気を覚える人が10人に1人位います。しかし、内服時間を調整したり、吐き気止めの薬と併用するなど対策はありますし、服用継続と共に次第にこれらの症状はなくなります。

 ピルの服用で体重増加を心配される方もいますが、ピル服用者とプラセボまたはピルを服用していない人を比べた研究でもピルの服用と体重増加に因果関係はないというエビデンスがあります。

 また、ピルの特に有名な副作用が静脈血栓塞栓症VTEですが、発症頻度は1万人に3~9人(*2)。仮にVTEが発症しても適切な治療を行えばほとんどの血栓は消失しますので、血栓によって重篤な肺塞栓症などを引き起こすまでに至るのは10万人に1人以下です。

 あまり過剰に副作用だけに注目するのではなく、服用しないことによって得られないメリットも天秤にかけて考えるべき。ただし副作用ゼロの薬はありませんから、まずは服用できる状態かどうか婦人科で診察し、定期的なチェックをお勧めします。また、ピルにはたくさん種類があり、それぞれ少しずつ効果効能が違います。症状や服用目的によって、自分にあった最適なピルを婦人科で選んでもらうといいでしょう」

◆ピルは自分でコントロールできる確実な避妊方法

 では、服用するときに注意すべきことはあるのでしょうか。

「飲み忘れを心配する方が多いのですが、2日以上忘れてしまうと避妊効果は落ちます。そのときはちゃんとコンドームをする。妊娠が怖いようであれば、服用を再開して1週間過ぎるまでセックスはしないことですね

 生理痛や子宮内膜症の治療のために服用している場合、多少飲み忘れたところでその効果がなくなることはありません。ただし飲み忘れは不正出血の原因になるので注意してください」

 ピルの普及率は、アメリカで20~30%あり、ヨーロッパではなんと40%の国もあるそう!(*3)一方、日本はというと現在5%前後。先進国の中では圧倒的に低い数値。10数年前はたった2%だったことを考えると、徐々にだけれど広がってはいるよう。

「若い女性の間では避妊のためだけではなく生理痛やPMS、ニキビの治療に飲み始める人が増えています。情報が何もなく知らなくて服用しない、服用できなかったというのと、情報はあるけど選択しなかったというのは違います。女性自身がコントロールできる確実な避妊方法としてのピル、だけでなく、婦人科系の病気の治療薬としてのピルもある、ということを知ってほしいと思います」

 避妊だけでなくさまざまな病気の予防も、自分が主体的に選べるのがピル。自分のからだと将来のことを考えて、選んでいきたいですよね。

(*1)Hatcher RA et al.:Contraceptive Technology:Twentieth Revised Edition. New York:Ardent Media,779-861(2011)

(*2)低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ(平成25年12月 日本産婦人科学会)

(*3)避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)

<深沢瞳子 取材・文/鈴木靖子>

【深沢 瞳子】

産婦人科医。赤羽駅前女性クリニック院長。女性のためのトータルケアホスピタルとして気軽に相談できる存在を目指しており、特に生理痛やPMSや月経不順といった生理に関連する諸症状の解決に力を入れている。

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