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新型コロナ「一家で自宅療養」の壮絶さ。「39度の熱でも子供の世話しないと」

女子SPA! / 2021年9月7日 8時46分

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 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療のひっ迫が続いている。

“第5波”と呼ばれる今、自宅で自分をケアする「自宅療養者」の数も急増している。厚生労働省のまとめによれば、新型コロナウイルスに感染し自宅療養中の人は、全国で13万5000人超(9月1日0時時点)。そして毎日のように、自宅療養中の患者の死亡や重症化のニュースが報じられている状況だ。

「療養」の本来の意味は、「病気を治すために治療し、休養すること」。つまり、本来は“治す”ためのプロセスである。しかし、実際には悪化していく体調と向き合い続けなければならないケースもあり、その場合に伴う大きな不安と恐怖は計り知れない。

 8月下旬、ついに筆者の身内も新型コロナウイルスに感染した。遠方に住む妹が、一家で感染してしまったのだ。この記事を執筆している現在はまだ完全に回復しておらず、家族で自宅療養を続けている。

 本記事では、妹の体験を例に「患者が患者を看病する」という事態の深刻さを伝えていきたい。

◆職場で新型コロナに感染。最初は立って動けていたが……

 8月下旬のある日、地方に暮らす筆者の妹(30代・ワクチン未接種・基礎疾患なし)からメッセージが届いた。「新型コロナウイルスにかかったかもしれない」という連絡だった。

 きっかけは、妹の職場で1人の陽性者が出たこと。同じ空間で働いていた同僚たちはマスクをして接していたために、管轄の保健所からは「濃厚接触者には当たらない」と判断された。しかし、念のため同僚と話し合って自費で自主的にPCR検査を受けたところ、6人の社員が感染していることがわかった。

 連絡が来た日の夜、妹へ電話をするとすでに発症していた。ただこの時はまだ、「熱が上がってきたけど、動けているから大丈夫。これくらいで済むならいいな」と比較的元気な声で話していたのを覚えている。

 電話の後ろからは、2人の子どもたち(4歳、7歳)がにぎやかに騒ぐ声が聞こえていた。

◆39度を超える熱が続く。発症3日目には夫と子どもも発熱

 妹一家の徒歩圏内には両親が住んでいるが、年齢や持病を考えると家の中に入って看病や子守りを手伝うことはできない。そこで、しばらくは親が食料と日用品を玄関先に置き、1日に何度か安否確認の連絡を入れることになった。

 感染した妹は、発症の翌日から39度を超える熱が続いた。家庭内には子どもが2人おり、トイレも風呂も1つ。検査の直前まで家族で一緒に会話や食事をしていたため、家庭内感染は免れなかったのだろう。

 発熱後は倦怠(けんたい)感と味覚障害で食欲を失った妹。一時期、備蓄食料も親から届けられた食料も食べることができなくなったという。1日のうちに39度前後の熱が出たり下がったりする状況が7日間続き、発症から3日目には夫と子ども1人も発熱した。幸い、子どもの熱は1日で下がったが、夫の症状はまだ続いており、仕事復帰の目処はたっていない。

 1日に何度か事前に購入しておいた簡易的なパルスオキシメーターで血液中の酸素飽和度を測定する。酸素飽和度が90%台前半まで低下したので何度か保健所に相談をしたものの、「ゼーゼーしてどうしても苦しくなったらすぐに連絡してください」と言われるのみだったという。

編集部注)酸素飽和度が低下した場合、肺や心臓のトラブルが推測されるので精査が必要。酸素飽和度が94%以下になると、酸素投与が必要な場合がある(パルスオキシメーターに関して、女子SPA!の医師取材記事参照)

◆「患者が患者を看病する」という壮絶な状況

 今回、妹の話を聞いて感じたことは、自宅療養の家庭内で複数の新型コロナウイルス感染者がいる場合、感染者同士でも「看病する者」と「看病される者」の役割分担が生じるということだ。

 体調や年齢の差によって、患者が患者を看病する事態が起きる。さらに幼い子どもがいる家では必然的に、育児と家事とが親へと降りかかる。

 先述のとおり、妹一家には4歳と7歳の子どもがいるのだ。食事時には洗い物が出ないよう紙コップや紙皿を使っても、床に食べこぼしが積もっていくし、洗濯物はエンドレスに出続ける。ゴミ箱はあっという間にいっぱいになり、冷蔵庫の生ものはすぐに空っぽになる。トイレは排泄物で汚れ、床にはブロックやミニカー、人形が散乱して、部屋は瞬く間に荒れていく。

 本来なら治療を受けて体を休めるべき時期に、家族が生きるための最低限の家事に加えて、子どものぐずり、遊びの対応、ケンカの仲裁など「フルタイム」の育児が続き、体を休める暇がない。39度を超える熱が続いているにもかかわらず、だ。

 そのような状況では当然、夫婦間には張り詰めた空気が流れるだろうし、先の見えない閉塞(へいそく)感からだんだん心も疲れ果ててしまう。

◆「これから、親子総感染が増えると思う」と医療従事者

 下がる気配のない高熱と症状に7日間苦しみ続けた妹。現在、発症8日目にして「ようやく体調が回復してきた気がする。ただ、食欲が戻らない」と語る。

 実家の親は、食料品や日用品のほか、おもちゃや本など、子どもたちが室内の時間を楽しく過ごすためのものを玄関先に置き、一戸建ての窓のカーテンのすき間から子どもたちの気配を探す。

 妹一家や実家と離れて暮らす筆者は、医療用の防護服やゴーグルなど、万が一のときに使えそうな物資や便利アイテムを親宛に送った。「五輪で余った医療用ガウンと医療用マスクを大量に廃棄するんなら、それ、おすそ分けしてよ……」と思いながら。

 実家のある市で医療従事者として働く友人に相談したところ、「市内のコロナ患者の病床がかつてないほどひっ迫していて、軽症と判断された人はもれなく自宅療養だ」と語っていた。夏休み終盤には学童保育で集団感染が起こるなどして子どもの陽性者が激増したため、「これから、親子総感染が増えると思う」と危機感を募らせていた。

◆1人が陰性なことで、社会復帰がさらに遅れるという皮肉

 4人家族のうち4歳の子どもだけが、感染したきょうだいと共に行った検査で陰性。特に症状もなく、「濃厚接触者」となった。しかし皮肉なことに、家族のうち1人だけ陰性となったことで、一家が完全に元の生活に戻れる時期の目途が先延ばしとなった。

 厚生労働省の基準で、「感染者」は元の生活を送れる目途として「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合」と定められている。ところが「濃厚接触者」の場合は「感染者と接触した後14日間は不要不急の外出を控える」と定められている。

 つまり、仮に妹夫婦が完全に社会復帰が可能となった後でも、濃厚接触者となった子どものケアのためにその後さらに2週間は仕事ができなくなるのだ。育児との両立のため、現在パート従業員として働く妹にとって、収入的には大きな痛手である。

参考 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)問3・問4

◆お節介なくらいの安否確認やサポートを

 今回の件で実感したのが、自宅療養には、少しお節介なくらいの安否確認やサポートが必須だということだ。

 妹の場合には運良く、食料や日用品を届け、しつこく安否確認をする家族が身近にいた。しかし、1人暮らしの場合や、近所に助け合える人がいない環境の場合、療養中に欲しい物や助けて欲しいことを伝える相手がいないケースもあるかもしれない。

 育児や介護など「ケア」を担う人が感染した場合、症状の重さによっては、必要なケアを施すことができなくなり、「ケアされる側」の健康や安全までも危険にさらされる可能性もある。四六時中、目と心が離せない乳幼児や要介護者をケアする人たちの自宅療養の苦労は想像を絶する。

 今、自分で自分の身を助ける「自助」が大切で、感染も「自己責任」とされる空気がある。しかし、つながりがある人達による「共助」と、しかるべき人に必要な医療資源が割り当てられる「公助」がいかに大切かを、身を持って感じている。

 この1週間、滅多に愚痴や弱音を吐かない妹は「迷惑をかけてごめん」と何度も言ってきた。私たちは感染症対策をしながらも、お金を稼がないと生活はできないし、子どもと社会を完全に遮断し続けることは難しい。誰もが新型コロナウイルス感染のリスクにさらされている今、「ごめん」と言わずに済む空気が訪れて欲しいと願う。

<文/女子SPA!編集部>

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