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「妊娠しても安定期まで公表しない」暗黙のルール、謎だと思いませんか?|吉川トリコさんインタビュー

女子SPA! / 2021年11月13日 8時47分

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 婚活、妊活、結婚しない人生、子をもたない人生。こんなテーマで話すとき、私たちを悩ませるのは「こうあるべき」という呪縛。思っちゃいけないことなんてないのに、自分の素直な感情よりも、なんとなく世間が望むような受け答えをしてしまって、つい、本音に蓋をしてしまう。そんなことってありませんか?

 こうした女性の人生にまつわる話題から、ダイエット、オタ活、お葬式ファッションまで、作家の吉川トリコさんが本音を炸裂させたエッセイ『おんなのじかん』(新潮社刊)が発売になり、話題を集めています。

 本書のなかでも、吉川さんが妊娠7週目で流産したときのことを綴った「流産あるあるすごく言いたい」の回は、PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門を受賞し、人々の共感を得ました。多くの人が「触れてはいけない」と思っているであろう「流産」という話題に、「もっと気楽に話せる雰囲気があってもいいのでは?」と投げかけているのが大変印象的。

 今回はそんな吉川トリコさんに、流産のこと、不妊治療のこと、そして、私たち世代の気持ちがふっと軽くなるような、楽しいお話を聞きました。3回に分けてお届けします。

◆「流産あるあるすごく言いたい」を発表したときのこと

 38歳で結婚し、不妊治療を始めた吉川トリコさん。最初の体外受精で妊娠判定が出たものの、7週目で流産を経験します。「流産あるあるすごく言いたい」の回では、実際に流産して感じたこと、その時の様子、周りとの関わりかたなどが赤裸々に書かれています。

――流産した当日、病室でカツサンドやプリンを食べたり、ボーイズラブ作品のドラマCDを聴いていたというエピソードが、とてもリアルに感じました。「流産あるあるすごく言いたい」の回が世に出てからの反応はどのようなものでしたか?

吉川トリコさん(以下、吉川)「以前、新聞のエッセイで流産について書いた時もそうだったんですけど、『私も経験があります』『私もです』とツイッターで話しかけてくれる人も多くて、嬉しかったです」

――エッセイが連載されていたサイトでも、長い期間アクセスランキング1位ですね。

吉川「一度にめちゃくちゃたくさんの人に読まれたというよりは、細く長く、必要なひとに届いているのかな、という印象です。1年2年かけて『考える人』のランキングに長くあがって読まれているというのは、すごく嬉しいです。書いてよかったな、と思います」

◆最初は「不謹慎だ、ひどい」と言われないか心配も

――「流産あるあるすごく言いたい」を発表する前に、迷いのようなものはありませんでしたか?

吉川「やっぱり、そうは言っても怖かったんですよ最初は。流産した時にケロっとしていたということを不謹慎だと思われるんじゃないかとか。子どもが欲しくて、でも産めない人とか、流産を経験した人にひどいと言われるんじゃないかとか。そういう心配はありましたけど、でも出してみたら、そんなこともなくて。同じように『流産について隠されていることが嫌だ』と言ってくださる方もいて、あー、こんな風に書いていいんだ、と思えました」

――とくに注意して表現された点はありますか?

吉川「本当に流産して悲しい人が、読んで傷つかないように、という配慮はしたかもしれないですね。こういうテーマだと、つい露悪的(編集部注:悪いところを故意に取り上げるあり方)になってしまいがちなんですけど、はしゃぎすぎないように、というか。

 例えば、病院の手術室に向かう途中、新生児がたくさん並んでいるブースの前を通ったんですね。『こっちは流産しているのに、その前を通らせるのか』と割とドン引きしたんですけど、そういうことをあんまり面白おかしく書きすぎないようにしよう、というのはありました」

◆もし身近な人が流産を経験したら

――本書を読んで「流産した女性は悲しみに暮れるものだとか、流産の話題に触れてはいけないとか、そういう決めつけはやめよう」と思いました。それでも、いざ知人から流産の話をされたら「この人は、触れないで欲しいのか、軽く話したいのか……」と迷ってしまいそうです。相手がどんな対応を求めているか、理解するにはどうしたらいいでしょうか?

吉川「目の前の相手のテンションに注意を払って、寄り添う。やはりコミュニケーションですよね。言うほうも、きっとどういう風に受け止めて欲しいか考えてると思うんですよ。

 私なんかは軽いことのように話すし、軽く受け止めて欲しくない人は、そういうトーンで話すと思います。相手が面白いことを言ったら笑えばいいし、普通のテンションで言ってきたら、それで、どういう風に感じたのって訊き返してみたり。それでいいんじゃないかなと思いますね。

 相手が普通にしてほしいのに、流産という言葉に引きずられて、その人の中のイメージで勝手に重々しい雰囲気になるよりは、はじめは『そうなんだ』ってフラットに接するのが良いような気がします」

――同じ“命”に関する話題でも、死については昔から笑いも含めて多様な表現で扱われています。その一方で流産はタブー感が強いのか、軽いタッチで語られることは極めて少ないですよね。

吉川「本当ですね。私の『流産あるあるすごく言いたい』を(ツイッターで)リツイートしてくれたとある女性は、稽留(けいりゅう)流産になったそうなんです。それで、流産を経験している友達にすぐ相談したら、ちょっと対応に困っているような、微妙な反応をされてしまったと。言っちゃいけなかったのかなと思ったけれども、よくよく話を聞いてみたら、『自分も経験していることだから、余計になんて言っていいかわからなかった』と言われたそうです」

――流産を経験している同士であっても、言葉を選ぶというか、慎重になるという面がまだまだあるんですね。

◆「安定期に入るまで妊娠を公言しない」という暗黙のルール

――本書では「安定期か、最低でも妊娠3ヶ月に入るまでは妊娠したことを周囲に告げてはならない」という暗黙のルールへの違和感についても、触れていますね。

吉川「そのルール、謎だと思いませんか? もし流産した時に周りに気を使わせちゃうから、という話はよく聞きますが、『そんな気遣い、いる?!』と、ちょっと思っちゃうんですよね。だって、流産だけじゃないですか、そんなことにされてるのって。流産って隠すべきものだという考えが根強いから、難しい問題だとは思いますけど、個人的には、もっとおおっぴらにしちゃえばいいのにと思います」

――妊娠初期につわりで苦しむ人も少なくないですし、そうなると周囲の助けが必要ですよね。例えば、妊娠初期でもどんなふうに周囲へ妊娠を告げて、周囲がどんな風に受け止められたら、よりハッピーになると思いますか?

吉川「人にもよるのかもしれないけど、もうちょっと流産の話が一般的になれば、というか、ほんとうはもう既に一般的なことというか、数だけ見れば普通にあることだから、変に隠したりせずに普通のこととして話せるようになったらいいなと思いますね。話題になる機会が増えれば周囲の理解も得られやすくなると思うし、本人も話しやすくなるんじゃないかな、と思います。でもこれは、『もっと声に出して伝えていこう!』ということではなくて、言いたくない人は無理に言わなくていいと思っています」

――本書でも、流産の確率が妊娠全体の15%、40代では50%にものぼることについて触れていました。こうした知識が広まれば、本人だけでなく周囲も含めて、受け止め方がまた変わってくるかもしれませんね。

 インタビュー第2弾では、不妊治療について、子を持つということについて、さらに詳しく聞いていきます!

【吉川トリコ】

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で女による女のためのR-18文学賞大賞・読者賞受賞。2021年「流産あるあるすごく言いたい」(『おんなのじかん』収録)で第1回PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門受賞。著書に『しゃぼん』(集英社刊)『グッモーエビアン!』『マリー・アントワネットの日記』(Rose/Bleu)『おんなのじかん』(ともに新潮社刊)などがある。

<取材・文/日向琴子>

【日向琴子】

漫画家 / コラムニスト / ラブホテル評論家 / 僧侶 / 様々な職業を転々としたのち、2020年末に高野山別格本山「清浄心院」にて得度・出家。運送屋、便利屋のパートで学費を稼ぎながら、高野山大学大学院にて密教学勉強中

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