『恋する母たち』タイトル以上に“ありえない”展開に、ツッコミが止まらない

週刊女性PRIME / 2020年11月13日 20時0分

※左から木村佳乃、仲里依紗、吉田羊

 世間の不倫に対する目は厳しくなるばかりだが、不倫ドラマが絶えたことはない。現在もTBS系『恋する母たち』(金曜午後10時)が堂々放送中だ。
 
 主人公は不動産屋で働く石渡杏(木村佳乃)。その友人である食品会社宣伝部課長の林優子(吉田羊)と弁護士夫人の蒲原まり(仲里依紗)を合わせた3人が“恋する母たち”だ。

 3人はそれぞれの長男が都内の名門私立高のクラスメイトであることから知り合った。独身は杏のみ。11年前に夫の石渡慎吾(渋川清彦)が女性を伴って失踪してしまったが、このほど離婚が成立した。

 3女優とも演技巧者だし、「ドラマのTBS」の作品だけあって映像は美しく、完成度は高い。けれど、ツッコミどころも多いのが特徴だ。ひょっとすると、ツッコミながら観るのが、このドラマの正しい楽しみ方なのかも知れない。

「いつの時代?」
エレベーターに閉じ込められ……

 まず、吉田扮する優子が部下の赤坂剛(磯村勇斗)とオフィスのエレベーターに乗っていたところ、停電が起こる。エレベーターは停まり、密閉空間に長く閉じ込められた2人の距離は一気に縮んだ。けれど、2人のオフィスは新しいビル内にあるので、現実ならばエレベーターに備えられた停電時バッテリーが稼働し、最寄りの下階へ運ばれるはず。

 昭和のドラマでは男女を接近させる手段として多用された停電によるエレベーター停止だが、令和らしい2人の近づけ方はなかったのか? いや、そう見る側に思わせるのが、このドラマの仕掛けであり、おそらく妙味の一つでもあるのだろう。
 
 これにとどまらない。仲が演じるまりの夫・蒲原繁樹(玉置玲央)は、同じ法律事務所の弁護士・山下のり子(森田望智)と不倫している。まりも売れっ子落語家の今昔亭丸太郎(阿部サダヲ)と不倫を始めようとしたところ、車中でのキスシーンをのり子に見られてしまう。
 
 のり子は繁樹の正妻の座を欲しがっているため、この目撃に小躍りした。だが、東京・銀座の地下駐車場でたまたま遭遇するという筋書きなので、視聴者としては「そこまでの偶然、ある?」と、やはりツッコミを入れたくなる。お互いが出くわす可能性は天文学的な確率であるはずだ。
 
 その後、のり子は週刊誌にタレコミ電話をかける。まりの不倫が世間に知れたら、繁樹との離婚に至ると考えた。ところが、電話を受けたのは杏に好意を寄せている記者の斉木巧(小泉孝太郎)。杏とまりは友人だと巧は知ったため、タレコミは握り潰される。まりは窮地を救われた。

 こうなると、もはや神がかりな巡り合わせである。このドラマに向かって「あり得ない」と目くじらを立てるのは無粋なことなのだと思うようになる。その境地に達し、おおらかな気持ちでツッコミを入れられるようになってこそ、初めてこのドラマが隅々まで味わえるようになる気がする。

 優子は一緒にエレベーターに閉じ込められた剛と京都へ出張する。ところが、本来は女性の部下を伴う予定だったため、予約されていたホテルの部屋はツインが1室。剛はほかのホテルを取ろうとするが、空室が見つからない。最終的には優子の判断で同室に泊まることになった。

 優子は部屋に入った途端、「何もしないでよ」と釘を刺したが、ここで再び見る側は「それ、本心?」とツッコミを入れる。剛はそれまでにも優子に対して何度もシグナルを送っていたからだ。優子に向かって、こう言っていた。

「林さんの一番の欠点は結婚してるってことです」(剛)

 おまけに2人は優子の提案で酒まで飲み始めてしまったものだから、結局は結ばれた。剛と抱き合ながら優子は心の中でこうつぶやく。

「いつか、こうなると思っていた」

 そこでまた「そうでしょうね……」とツッコミを入れるのである。
 
 これまでの放送分の世帯視聴率の平均は1ケタ台でもう一つだが、ツッコミどころを除いてもドラマはなかなか面白い。杏と巧、優子と剛、まりと丸太郎の恋の到達点が見当も付かない。男性陣の演技も出色。特に小泉孝太郎が扮する巧が好人物で魅力的だ。

 まりの夫の不倫相手・のり子からも目が離せない。本当はしたたかなのだが、ウブを装い、繁樹を落とした。まりには心的ダメージを与えるため、自分と繁樹のベッドトーク音声をメールで送った。これは裏目に出たものの、正妻の座を簡単には諦めそうにない。これからも姑息な小細工を見せてくれるだろう。

「生涯恋愛」を叶えてくれる
柴門ふみ原作のドラマ

 原作は漫画家・柴門ふみ。言わずと知れた『東京ラブストーリー』(フジテレビ系、1991年)の原作者である。

 『東京――』はヒロインの赤名リカ(鈴木保奈美)が「ねぇカンチ、セックスしようか」という名言を残したが、『恋する母たち』にも同じ臭いを感じさせるセリフがある。

「人は怒ると性欲が高まるらしい」
「それは恋っていうより性欲じゃないかしら」(ともに杏)

 柴門ワールドにおいて恋愛とセックスは切り離せないようだ。「枯れてはいけない」と呼び掛けられている気になる。実際、彼女は作品の上では「生涯恋愛を」と唱え続けてきた。
 
 23歳だった1980年には浪人生と女子大生の恋を描いた傑作『P. S. 元気です、俊平』(ドラマ化はTBS系、1999年)を発表。31歳の1988年には『東京ラブストーリー』を作品化した。これが若手サラリーマンと帰国子女の恋愛を題材にしていたのは知られているとおり。
 
 以後も恋愛漫画のメーンストリームである学生や若い独身男女の恋を描き続けるのかと思いきや、37歳だった1994年には『Age,35(ドラマのタイトルは「Age,35 恋しくて」)』(ドラマ化はフジ系、1996年)を世に放つ。35歳の人妻の不倫が題材だった。
 
 まだ終わらない。54歳だった2011年の時には『同窓生〜人は、三度、恋をする〜』(ドラマ化はTBS系、2014年)を発表。同窓会で再会した40歳男女の恋模様をリアルに描写。やはり不倫も込みだった。
 
 自身の年齢が上がると、作品の登場人物たちの年齢も上昇させた。まるで「自分たちの年代こそ人生のクライマックス」と唱え続けるかのように。それでよかったのだろう。だからこそ、どの作品にも活力や瑞々しさがある。
 
 そして今度は60歳だった2017年から執筆した『恋する母たち』で母たちに恋をさせた。気の早い話だが、いずれはシルバー層の恋物語を描いていただき、どこかの局でドラマ化してもらいたい。

 人生100年時代なのだから。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立

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