不倫夫が気づかない“サレ妻”の終わりなき苦しみ「子どもを抱いて飛び降りたくなる」

週刊女性PRIME / 2021年1月10日 21時0分

※写真はイメージです

 不倫が夫婦の仲を裂き、離婚の契機になることは多い。児童心理士として児童相談所に19年間勤務する中で子どもの問題を抱える多くの家族と出会ってきた山脇由貴子さんは、現在は家族問題カウンセラーとして年間200家族の相談を受けている。夫に不倫された妻の苦悩を山脇さんがリポートする。

ケース1:不倫した夫を信じられなくなった妻

<相談者の家族構成>
夫:稔(仮名・36歳・会社員)
妻:美和(仮名・34歳・会社員)
息子(6歳)、娘(2歳)

 カウンセリングにやって来た妻の美和さんによれば、夫婦の問題は夫の不倫でした。

 夫婦は子ども2人を保育園に預けて共働きをしていました。美和さんの仕事も相応に忙しく、家事と育児をこなすのに精いっぱいでした。一方、夫の稔さんは、もちろん仕事は忙しいですが飲み会が好きで、飲みに行く頻度は多かったと言います。夫婦仲は悪いわけではないけれど、稔さんが育児をあまり手伝わずに飲みに行ってしまうことに美和さんは不満を抱いていた、と言います。美和さんは言いました。

「はっきりとは言いませんが、合コンに行っているのも気づいていました。でも、休日は家事や育児を手伝ってくれるし、それに私はお酒が飲めないので一緒に飲むこともできないし、仕方ないかな、と思って我慢していました」

結婚指輪をなくした夫を問い詰めると

 そんな中、稔さんの不倫が発覚したのです。きっかけは、稔さんが結婚指輪をなくしたこと。

「まず“どうして外したの?”と聞くと、“手を洗うときに外した”と言ったので、“それなら会社か飲んだお店にあるはずだから聞いてみたら?”と言うと、急に返事が曖昧になって。“どこで外したか覚えていない”とか“もうないと思う”と言い出したので、これは会社でもお店でもないな、と思いました」

 美和さんは稔さんを問い詰めました。合コンに行っていることも気づいていたことを伝え、美和さんは稔さんの親しい同僚に電話をしたのです。その人は、稔さんが飲みに行く相手をとして頻繁に名前を出す人でした。

「夫から電話番号を聞き出しました。“後ろめたいことがないなら連絡して構わないでしょ”と言って。電話の相手は驚いていましたが、結局その人とはそんなに頻繁に飲みに行っていないことがわかりました」

 さらに「見せないなら離婚する!」と言い、美和さんは稔さんのスマホを見ました。そこには不倫相手とのやり取りがあったのです。

「許せなかったです。《早く会いたい》《会えなくて寂しい》とか。身体の関係があるのも明らかでした。最後には《やばい、指輪ホテルに忘れてきたっぽい》って……。やっぱりそういうことか、と思いました」

 美和さんはもちろん離婚を考えました。けれど稔さんは「離婚したくないから関係は絶対に終わりにする」と約束したそうです。一度は離婚を踏みとどまった美和さん。それでも稔さんへの疑惑は消えません。

「夫の言うこと全てが信じられなくて。合コンのこともそうですが、もともと小さな嘘が多い人だったので。不倫も1回だけだと言いますが、信じられません」

条件反射のように口説いてしまう夫

 その後、夫婦喧嘩は毎晩。美和さんは毎晩泣き、最近では稔さんは「もう終わったって言っているだろう」と開き直ったり、言い争いにうんざりして深夜なのに出かけてしまったりするそうです。

 稔さんにもカウンセリングに来てもらい、浮気の原因を探る為に、「はい」「いいえ」式で答えてもらう質問紙と『ロールシャッハ・テスト』(10枚のインクのしみを見て、何に見えるか答えてもらうことで潜在意識がわかる)という心理テストを受けてもらいました。

 稔さんの浮気の原因は、美和さんへの不満ではなく、人から嫌われる不安が極端に強く、誰からでも好かれたいと思ってしまうためでした。目の前にいる人に自分を好きになってほしい。そう思ってしまう人はいるのです。

「もしかして、誰でもよくて、条件反射のように口説いてしまうことがあるのではないですか?」

 私がそう尋ねると、稔さんはそれを認めました。そんな夫をどうしたら信じられるのか──美和さんの苦しみは深まりました。2人でカウンセリングに来たときも、美和さんはずっと泣いていました。稔さんはカウンセリングの場でも「もう絶対に浮気はしない」と言い、「飲み会は減らすし、行くときにはメンバーの写メを送る」と約束しました。それでも美和さんの不安は消えるはずがありません。その後もひとりでカウンセリングに通ってきた美和さんは毎回泣き、つらさを訴えました。

「夫の顔を見ると、不倫相手とのことを想像してしまって苦しくなります。唐突に涙が出るし、食欲もないし、吐いてしまうこともあります。悪夢でうなされることもあります。夫の言葉も写メも信じられません。全部嘘にしか思えないんです」

子どもたちも親の異変を感じるように

 それでも、まだ夫のことが好きな自分がいて、信じたい自分もいて。そして子どものことを考えると離婚にも踏みきれない。夫が帰ってきても顔を見るとイライラするし、帰りが遅いとまた浮気か、と悲しくなる。その繰り返しでした。そして美和さんが不倫の話を持ち出すと、稔さんは「また蒸し返すのか」「もうその話はやめてくれ」と言うのだそうです。最近は、子どもたちも2人の様子を見て異変を感じ、急に泣き出したりするようになったそうです。

 美和さんのつらさが理解できているのか、もう一度稔さんに来てもらったところ、「苦しめたのは理解できているつもりです。だから努力もしています」と言いましたが、不倫する夫の多くは、自分の行動が妻を苦しめていることに気づいていません。稔さんには、美和さんのつらさを理解してもらうために、カウンセリングを続けてもらっています。条件反射のように目の前の相手を口説いてしまう、癖のようになっている行動を修正するためでもあります。ですが、まだまだ時間はかかるでしょう。そしてときどき離婚を考えながらも、稔さんを信じようとしている美和さんの苦しみも続きます。

 時間が解決してくれる部分もありますが、最終的には稔さんがどれだけ努力できるかにかかっています。

ケース2:不倫して妻を傷つけても悪びれない夫

<相談者の家族構成>
夫:敏明(仮名・34歳・会社員)
妻:明美(仮名・32歳・契約社員)
娘(3歳)

 夫の不倫で相談に来た妻の明美さん。

 夫の敏明さんの帰宅は毎日深夜。仕事だけでなく、キャバクラにも行っていると言います。でも明美さんはキャバクラに関しては頻繁ではないので、責めたりはしていなかったそうです。問題は、不倫のきっかけとなった敏明さんの趣味でした。

「夫はインスタグラムに写真をアップするのが趣味なんです。だから休みの日も出かけてしまって家にいません。家事も育児も手伝ってくれません」

 しかも敏明さんは、生活費を全く入れてくれないというのです。趣味にお金がかかるから、と言って1円もお金を渡してくれず、明美さんの収入だけでは生活は苦しいものの、どうにかやりくりしていました。

インスタにアップされる女の子との旅行写真

 そんな中、許せないことが起こったのです。

「夫は、ネットで知り合った20代の女の子にモデルを頼んでいたんです。“何人かいるし、男の人にも頼んでいる”と言っていましたが、私は夫のインスタのアカウントを知っていたのでずっとチェックしていました」

 アップされる写真のほとんどが決まった女の子だった、と言います。

「撮影のためだ、と言って、その子と旅行したりもしてるんです。“撮影だから何もない”と言い張っていましたけど、そんなはずない、って思っていました。それに、私は夫と付き合っているころから、1回も旅行なんて連れて行ってもらったことはないんです。家族旅行もありません」

 これだけでも、妻としては当然許せないことです。けれど敏明さんは頑なに「撮影だけで身体の関係はない」と言い続けるし、フォロワーも増えているから、とインスタグラムをやめようとはしなかったのです。

「私の言うことは聞いてくれないので、あきらめかけていたときに、見つけたんです」

 下着姿のモデルの女の子の写真がインスタにアップされていたのです。明美さんは敏明さんを問い詰めました。最初はまた「撮影しただけだ」と言っていましたが、ホテルの部屋で下着姿の写真です。最終的に敏明さんは身体の関係を認めました。敏明さんは形だけ謝り、関係は終わりにする、と言いましたが、彼女をモデルに撮影は続けているのだそうです。

「家事や育児を手伝ってくれないことも、生活費のこともずっと我慢してきたんです。でも、本当に許せなくて……」

 でも、明美さんは離婚を考えていませんでした。

「夫は借金もあるみたいなんです。だから慰謝料も養育費も払わないと言っていますし、実際、払えないと思うんです。今の部屋は夫名義で借りていて、引っ越す費用もありませんし」

 ギリギリの生活をしているので、これから貯金する余裕もない、と言います。敏明さんに離婚を切り出すと、「金払わないけど」のひと言で片づけられてしまうのだそうです。でも、と明美さんは続けます。

妻の気持ちなど考えもしない夫

「ワンルームに住んでいるので、3人で一緒に寝るのですが、夫と同じ部屋で寝ていると気持ち悪くなるんです」

 そして今の明美さんのいちばんの悩みは別にありました。

「死にたくなるんです。駅のホームで電車を待っているとき、子どもを抱いて飛び降りたくなります。だから最近、電車に乗るのが怖いんです」

 もともと明美さんに対して何の気遣いもせず、明美さんの気持ちなど考えもしない敏明さんは妻の変化に気づくこともなく、まるで何事もなかったかのように過ごしているというのです。生活費を払わないのも変わらず。明美さんを踏みとどまらせているのは、子どもの存在でした。

 夫婦カウンセリングでは、夫婦仲の改善を目指すことが大半ですが、明美さんの話を聞き終わって、私は言いました。

「死にたくなってしまうほどなら、離婚を考えてもいいのではないですか?」

 人生100年時代。これから40年、50年、敏明さんと一緒に暮らしていけるかを尋ねると、明美さんは大きく首を横に振りました。

「考えたくもありません」

 ひとり親家庭にはサポートもたくさんあるし、本当にお金に困ったら“部分生保”(生活費の一部だけ生活保護を支給してもらう制度)もあるということを説明すると、明美さんの表情は少しずつ明るくなっていきました。

「それに、ご主人はお給料をもらっているのだから、お給料から養育費を払ってもらうことはできるはずですよ」

 私がそう言い、知り合いの弁護士を紹介する、と伝えると、さらに表情は明るくなりました。

「離婚しようと思えばできるって、思えただけでよかったです」

 最後は笑顔で帰りました。

 数日後、明美さんから弁護士を紹介してほしい、という連絡が来たので、離婚問題に詳しい女性弁護士を紹介しました。弁護士は敏明さんの給料からきちんと養育費を支払ってもらう手続きを進め、明美さんは離婚の方向で動いています。すっかり心の整理ができ、これからの人生を楽しみにできているようです。

  ◇   ◇   ◇  

 不倫は配偶者を苦しめますが、特に不倫した夫の多くは、なかなか妻の心の痛みを理解できないものです。カウンセリングに来る多くの妻は、夫に何度伝えても、自分の苦しみをわかってくれない、と言います。そういうときはカウンセリングを通して専門家から夫に妻の気持ちを伝えることも考えたほうがよいと言えます。特に、心理テスト結果として伝えると、多くの夫は根拠を示されるので、受け入れます。

 また、夫に不倫をされて思いつめてしまう妻は多いですが、自分のこれからの人生のため、幸せのために何をすべきかを考える必要があるのです。我慢するしかない、そんなふうに考えずに、自分の幸せを考えましょう。


山脇由貴子(やまわき・ゆきこ)
1969年、東京都生まれ。横浜市立大学心理学専攻。大学卒業後、東京都に心理職として入都。都内の児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。現在は家族問題カウンセラーとして活動。テレビや雑誌で虐待などの家族問題についてコメントすることも多い。2006年、いじめ問題の核心をついた『教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために』(ポプラ社)が17万部のベストセラーに。2016年に『告発 児童相談所が子供を殺す』(文藝春秋)を出版。近著は『夫のLINEはなぜ不愉快なのか』(文藝春秋)。

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