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“ゴミ屋敷問題”は部屋を片付けるだけでは終わらない、奥に潜む根深い「心の問題」

週刊女性PRIME / 2021年4月26日 8時0分

天井までゴミが高く積まれた部屋。間取りは1K、6人のスタッフが5時間でピカピカに(清掃後写真右)

「清潔感があって、いつもしっかり仕事をこなす人の家が実はゴミ屋敷、なんてことはよくあることです」そう明かすのはゴミ屋敷を専門で清掃する専門業者のスタッフ。彼女、彼らの「汚部屋」を覗いてみると……。

 お弁当の容器、空のペットボトル、空き缶、大量の洋服──。それらが部屋中を埋め尽くしている状況を「ゴミ屋敷」または「汚部屋」と呼ぶ。

専門業者が語るゴミ屋敷の実態

 清掃専門業者、『ゴミ屋敷バスター七福神』を運営する、株式会社テンシュカクの新家喜夫代表取締役によると、

「私たちが思っている以上にゴミ屋敷化している部屋は多いんです」

 実際にどんな部屋を片づけてきたのか聞いてみると、

「玄関開けたら天井までゴミの山。その上を匍匐前進し、中に入ったことも」(新家さん)

 においもキツイのではと想像し、尋ねてみると、

「ゴミ屋敷って意外とにおいはしないし、パッと見では虫もいないんです」

 と話すのは同社の田中義彦さん。だが、片づけていくと逃げ場を失った虫たちが現れ、壁を上り始める。白い壁はうごめく虫で真っ黒に……。

「作業中、天井からゴキブリがぼとぼと落ちてくることもありますよ」(田中さん)

 そこまでは比較的よくある光景だとか。そんなプロたちでさえ驚愕した衝撃的な現場を教えてくれた。

プロが目撃した衝撃的な現場

「30代半ばの女性から“妹の部屋を片づけてほしい”との依頼でした」

 前出の田中さんはスタッフと現場に入った。玄関を開けてすぐ、ワンルームの部屋は生活ゴミや洋服で腰の高さまで埋まっていた。驚いたのは片づけ始めてからのことだ。

「おしっこが入ったペットボトルが何十本も出てきたんです……」(田中さん、以下同)

 トイレはゴミで埋もれており使用不可能。そこで妹は空いたペットボトルで用をすませていたというのだ。

 スタッフはその中身をバケツに移し、数時間かけてトイレに流したという……

汚れた部屋の中で飼い猫は置き去りに

「次は賃貸住宅の管理会社から住人がいなくなったと片づけを依頼されたときのこと」

 部屋に入ると大量のゴミのほか、あちこちにフワフワした毛玉がいくつも落ちていた。「ぬいぐるみかな」と思っていた田中さん。

 風が吹くと毛が舞い上がり、白骨化した複数の猫の死骸が現れた。その周辺には干からびた無数のウジ虫……。

 エサも水も与えず、飼い猫を置き去りにして住人はいなくなったのだ。猫たちは餓死し全滅。死体は相当長い年月、その場に放置されていた。人間の身勝手さを突きつけられ、憤りを抑えられなかった、という。

 人の死とも直面することもあった。前出の新家さんが語ってくれた。

「ひとり暮らしの弟が行方不明になったから家を片づけてほしいとのお兄様からの依頼でした」

 弟の家の中は雑誌、漫画など天井まで本がぎっしり。いわゆる『物屋敷』だった。

「入ったときから妙なにおいがしていましたが……」

 予感は当たった。崩れた本の中から依頼者の弟とみられる男性の遺体が発見された。

「数週間前、大きな地震が発生していました。彼は地震で崩れた本の下敷きになって亡くなったと思われました」

コロナ禍で増えるゴミ屋敷予備軍

 住人だけでなく、周辺の人も危険にさらされている。火事だ。出火すればゴミに阻まれて消火が困難となる。住人は避難が遅れ、延焼すれば周辺にも被害が及ぶ。

「周辺のゴミが焦げた状態の電源タップを発掘することはよくありますね」

 同社には“ゴミ屋敷となった自宅を掃除してほしい”との依頼が月200件以上寄せられている。昨年の緊急事態宣言以降、相談件数が急増。

「コロナ禍でリモート勤務にかわり、自宅でオンライン会議をすることになった、自宅で過ごさざるをえない時間が増えたことから片づけを余儀なくされた人が増えたと考えられます」

 そしてゴミ屋敷予備軍も増え続けている可能性がある。

「テイクアウトや出前を頼む機会が増えたり、通販で物を買えば段ボールに入って届きます。それに外出も難しく感染への不安やストレスもたまっています。無気力になったり、リモートで出勤しないからゴミを出しそびれてためてしまうこともあるようです」

 通販サイトの段ボールが大量に出てくる現場も増えた。

「スマホで簡単に商品を購入できることも一因と考えます。買い物依存状態になり、タグがついたままの商品が山積みになっているケースも」

 なぜ依頼者はゴミ屋敷にしてしまったのだろうか。

「多いのは不規則な勤務体制の人。ゴミ捨てのタイミングを逃し、そのままズルズルと増やしてしまった」

 ゴミ出しの際、近所の人があさり、分別の仕方を指摘されたことでトラウマになり、ためるようになった人もいたという。

ゴミ屋敷問題の根深さ

 特に「心の問題が大きい」と新家さんは指摘する。

「仕事や職場の人間関係で強いストレスにさらされ、帰宅したら何もできなくなり、気がついたらゴミ屋敷になってしまった人も少なくない」

 ほかにも失恋や死別などの喪失感や、うつ病など精神的な病を患ったことで掃除ができなくなった、と依頼してくる人もいるという。

 依頼者たちの男女比は半々。30代がいちばん多い。

「社会的にも信用のある仕事をしていて、バリバリと働いている方からの依頼は珍しくありません」

 清潔感があり、仕事もしっかりこなしている人が実はゴミ屋敷に住んでいる、なんてことはよくあるのだ。

 前出の新家さんは訴える。

「ゴミ屋敷の問題は部屋を片づけて終わり、ではありません。社会全体で考えていかなければいけない問題です。専門家とも連携し、依頼者のケアをする必要もあります」

 新家さんはある依頼者の男性がこぼした言葉が忘れられないという。すっかりきれいになった部屋で彼は言った。

「“どこで寝たらいいんだろう”って。部屋がきれいになったからどこでも寝られるはずなのに……ルーズだったからゴミ屋敷にしてしまった、では説明できない根深さがある」

 孤独、ストレス、病気……抱えた問題は自宅でゴミに形を変え、たまっていった。

 ゴミでしか隠せなかった心の隙間があるようだ。

【あなたの家は大丈夫?ゴミ屋敷度チェック】

□外出を自粛し、自宅にいる時間が増えた
□帰宅すると疲れてやる気が出ない
□仕事やプライベートでストレスがたまっている
□ネットショッピングや出前を注文する機会が増えた
□ゴミを出す時間に間に合わないことがある
□購入したのに着ていない洋服がたくさんある
□ゴミの分別の仕組みがよくわかっていない
□靴下や携帯電話の充電器など同じものがいくつもある
□部屋の中で物をよくなくす
□床にゴミや空いたペットボトルがいくつも落ちている
□ゴミの入った袋が室内にいくつもある
□部屋のゴミを自分ひとりで片づけることは不可能

 1~4個は十分注意して、5~8個はだいぶ危険、9個以上、もしくは太字にチェックがついた場合は即、専門家に相談を※専門家への取材をもとに編集部で作成

お話を聞いたのは…… 株式会社テンシュカク●田中さん(統括部長)新家さん(代表取締役)
関東・関西を中心にゴミ屋敷の清掃や遺品整理などを担う。2019年には同社が中心となり、一般社団法人『ゴミ屋敷清掃士認定協会』も立ち上げ、清掃業者の認定や育成にもあたる。https://777fukujin.com

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