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認知症や生活習慣病の予防には「奥歯を残す」こと!歯科医がセルフケア法を伝授

週刊女性PRIME / 2021年6月2日 8時0分

イラスト/水口アツコ

 認知症になるか、ならないかの重要なカギは「奥歯の健康」が握っている。そう聞くと意外に思うかもしれません。

「私が『歯の状態と認知症の因果関係』を分析した結果、奥歯がない人は認知症の危険度が増すことが明らかになりました。『奥歯がなく、義歯も使用していない人』は、自分の歯が20本以上ある人より、認知症になるリスクが1・85倍も高かったのです

 そう教えてくれたのは、歯科医の山本龍生先生。

奥歯がなくなると認知症になる3つの理由

 奥歯を失うと、認知症になる理由は3つあります。

(1)脳への刺激が減る

「奥歯を使ってよく噛むと、歯根のまわりや頬の筋肉が刺激されて脳に伝わり、脳の血流がよくなって、脳細胞が活性化します。奥歯を失うとその刺激が得られず、脳の老化につながります」(山本先生、以下同)

(2)脳に必要な栄養素が不足

「かたいものが噛めなくなるために食べられないものが増えて、食事のバランスが悪くなります。その結果、認知症を防ぐビタミンなどの摂取量も不足してしまいます」

(3)奥歯を失う原因となる歯周病が、脳に悪影響を与える

「奥歯が歯周病になると、歯ぐきは慢性的な炎症状態になります。すると活性酸素などが過剰に発生し、血管に入って脳に運ばれ、悪影響を及ぼします。さらに、近年ではアルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病菌が見つかり、この菌自体が認知症の原因になると考えられています」

 つまり、歯周病になって奥歯を失うことが認知症の原因になるだけでなく、歯周病そのものが直接的な認知症の原因になると判明したのです。

奥歯がきっかけで要介護の一歩手前に

「フレイル」という言葉をご存じでしょうか。これは、健康な状態から要介護へ移行する中間の段階を意味します。

 フレイルを放っておくと、やがて介護が必要な状態になり、認知症や寝たきりになるリスクが高まります。それを防ぐための「フレイル予防の三本柱」を紹介しましょう。

(1)定期的な運動
(2)十分な栄養摂取
(3)活発な社会参加

 このうち(2)の「十分な栄養摂取」に、歯の有無や歯の健康が深く関わってきます。

「口の機能が低下することを『オーラルフレイル』といいます。自分や家族がオーラルフレイルになっているかは、記事内の写真ページにある「オーラルフレイルのセルフチェック表」で確認できます。もし3点以上なら、専門の歯科医で診察を受けるなどの対応が必要です」

 オーラルフレイルで最初に起こる重大事は、たいていの場合、「奥歯の欠損」。

「オーラルフレイルの人は、そうでない人に比べて、2・4倍もフレイルになりやすいことがわかっています」

 つまりフレイルになるきっかけも、奥歯にあるのです。

奥歯を失う原因の第1位は

 お伝えしたとおり、奥歯を失う最大の原因は歯周病

「歯周病は、歯ぐきが腫れる『歯肉炎』から始まり、進行すると歯ぐきから膿が出て、歯を支える歯槽骨が溶け出し、最後は歯がグラついて抜けてしまいます。歯周病の直接の原因は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)です。歯肉炎の段階なら、きちんとブラッシングすれば、元の健康な歯ぐきに戻ります」

 歯槽骨が溶け始めると、ブラッシングで元の状態に戻すのは困難に。これが奥歯を失わせる歯周病の怖さです。

「間接的には、喫煙や精神的ストレスによる歯ぎしり、歯並びの悪さ、噛み合わせ不良なども、歯周病のリスクを高める要因になります」

 歯周病は気づかないうちに進行するため、初期段階では自覚症状がほとんどないケースも。まずは写真ページ内の「歯周病セルフチェック」を試してみてください。

 点数の合計が30点以上なら、「歯周病のリスクあり」です。30代の日本人の約8割に歯周病の症状が見られるとの調査結果もあるので、30点以上であれば、すでに歯周病になっていると考えて、早急な対策をすすめます。

メタボも糖尿病も歯周病が悪化させる

 奥歯がカギを握るのは、認知症だけではありません。実は生活習慣病とも密接な関係があります。

歯周病の人はメタボ(内臓脂肪型肥満)になりやすいことがわかっています。そしてメタボは、糖尿病や高血圧症、心血管疾患など、さまざまな病気の原因になります。歯周病によって奥歯がグラついたり、奥歯を失ったりすると、かたいものが噛みづらくなり、ご飯などの炭水化物や脂質の多い食事ばかりとるようになります。よく噛まずに飲み込むため、早食いになることも肥満を促進します。また、歯ぐきで作られる炎症性サイトカインが血液中に入り込み、血糖を分解するインスリンの効きを悪くして、糖尿病を悪化させます

 逆に、糖尿病の合併症で歯周病が起こることも多いため、すでに糖尿病と診断された人や血糖値が高い人は、歯周病にも注意が必要です。

肝硬変や肝臓がんのリスクを高める

「私はラットを使った実験で、歯周病が脂肪肝の原因になることを発見しました

 脂肪肝とは、肝臓内に中性脂肪がたまった状態のこと。脂肪肝になると、肝硬変から肝臓がん、狭心症や心筋梗塞になるリスクが高まります。

「一般に、脂肪肝は飲酒量が多い人に起こりやすいとされますが、飲酒しない人に脂肪肝が発生する『非アルコール性脂肪肝疾患(NASH)』もあります。横浜市立大学が「NASHの患者で歯周病もある人」を対象に、歯周病の治療を行ったところ、肝臓の機能が改善したという研究結果が報告されました。また広島大学によって、歯周病菌が肝臓に到達してNASHを引き起こすメカニズムも解明されました」

 歯周病は確実に、脂肪肝から肝硬変、そして肝臓がんになるリスクを高めることが証明されたのです。

恐ろしい心疾患を虫歯が引き起こす

 歯を失う原因として、歯周病の次に多いのが虫歯。

「重度の虫歯になると、虫歯菌は簡単に血液の中に入り込み、ネバネバした歯垢を分泌しながら、心臓の内壁である心内膜や心臓内の弁などにくっついて固まります。この症状は感染症心内膜炎といわれ、手術が必要となったり、ときには死に至ることもある恐ろしい病気です」

 歯周病とともに、虫歯も予防することが重要です。

歯磨きのポイントは「歯間」と「フッ素」

「奥歯を失わないためには、口腔のセルフケアが欠かせません。なかでも歯磨きは、歯周病予防の基本です」

 先生の「これだけは押さえておきたい歯磨きのポイント」は、次の2つです。

(1)1日に1回、最低でも5分間、できれば10分間ほど「歯間に入る歯ブラシ」や「歯間ブラシ」でブラッシングする

(2)フッ素入り歯磨き剤を1日2回以上使って、歯を磨く

「私がおすすめするのは、ブラシの硬さが「ふつう」で、植毛が「2列」の歯間ブラシ。歯間に入る歯ブラシがない場合は、通常の2列歯ブラシで磨いてから、歯間ブラシを使います」

 フッ素入り歯磨き剤を使うのは、虫歯予防のため。

「虫歯の初期には、歯から唾液中にカルシウムやリンが溶け出しますが、フッ素にはそれを元に戻す「再石灰化作用」があります。成人の場合は、高濃度フッ素配合の歯磨き剤を選んでください」

 毎日の口腔セルフケアで、ぜひ歯と身体の健康を守っていきたいものです。

教えてくれた人…… 山本龍生先生
神奈川歯科大学大学院歯学部教授・歯学博士。予防歯科学、口腔衛生学、社会歯科学の第一人者。
「ボケたくなければ『奥歯』は抜くな」(青春出版社)

(構成/塚田有香)

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