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結婚詐欺に遭った女性たちの“その後”、いつのまにか「金の話しかしない女」に

週刊女性PRIME / 2021年6月29日 4時0分

詐欺に遭い、男という存在が“貢いでもらう”ものから“利用するもの”に変わった久美子さん

 人生最大のイベントのひとつでもある結婚。晩婚化が進む現在、適齢期ギリギリで婚活を始める女性も数多い。そんな焦る気持ちにつけ込まれ、男に騙された女性たちの“それから”とは――。

 20代の終わりに出会った理想の王子様は、結婚詐欺師。恋愛観をもねじ曲げられた、彼との再会は25年後――。

“男に貢がせたい女”でいたい

「大学進学のために18歳で上京したときの東京は、バブルでしかも女子大生がちやほやされていました。その真っただ中にいた私は、女子大生という立場を生かし銀座のクラブでバイトをして、男性から貢いでもらっていたんです

 こう自身の人生を振り返るのは、久美子さん(仮名・52歳)。艶のあるロングヘアで一見するとセレブ妻という風情が漂う。だが若いころに結婚詐欺に遭うという苦い過去を持っている。当時、頭の中はいつも「男に貢がせたい女」だった。

「バイト先でせっせと客のおじさまたちに媚びて。バッグやジュエリーを買ってもらったこともあります。ゴルフも教えてもらいました」

 だがあるときに、きれいな女子大生は入店してからすぐにいなくなることが多いことに気づく。「美人は得ですよ。愛人になっていたんでしょう」と呟く。

 そんな愛人に“なれなかった”久美子さんは、イベントバイトで知り合った広告代理店勤務の男性や、飲食店のオーナーなど、金持ちに見える男性と付き合うようになる。付き合った理由は、

「ちやほやされて、ブランド物を買ってくれて、美味しい食事や居心地のいいバカンスに連れて行ってもらえるから」

 そんな彼女の“運命の出会い”は27歳のときだった。

「大学を卒業してから、健康機器の販売会社に入社しました。17時に終わり、残業がないのでクラブのバイトはそのまま続けました」

 25歳を越えたとき、学生時代から働いていた店を辞め、違う店に移っていた。以前の店で求められる年齢ではなくなっていたからだ。移った店は、規模は以前より小さいがママがやり手だったため、さまざまな職業の男性が店の常連だった。

「ある夜、常連さんが海外投資家の40代の男性を連れてきたんです。紳士的で礼儀正しくて、清潔感があって。初対面で惹かれました」

 2度、3度と常連さんと一緒に来店し、同席するようになるとデートに誘われた。夜景がきれいな港区のレストランで食事をしたり、ゴルフにも一緒に出かけた。

「交際を申し込まれるかなと期待していたら、連絡がぷっつり切れてしまったんです」

 常連客に尋ねると「急用で海外に戻った」という返事。デートの誘いは店のママを経由していたので、互いの連絡先を知らないままだった。もどかしい気持ちが残ったが、「もっといい男を探そう」と気持ちを切り替えて貪欲に資産家を探し続けた。だが、なかなか理想の男は現れなかった。しかし──。

「2年ぐらいたってから、彼がひょっこりとお店に来店したんです」

 海外から戻ってきたばかりの彼はヘアスタイルがショートになり、年齢より若々しく見える、清潔感あふれる実業家そのものだった。

「黙って海外に出かけた彼を許せなかったので、すねたりしました。その後すぐデートに誘われ、交際を求められたので、じらしましたが、結局は承諾してしまったんです」

 交際後すぐに六本木駅近くの高級マンションに招待されたという。

「そこで株を中心に海外投資の話をしてくれましたが、彼の仕事の内容の一部を語ってくれたという印象でした」

 と当時のことを振り返る。

「私の趣味が部屋の模様替えとわかると、彼はインテリアで有名な国内外のホテルに連れて行ってくれたんです。特にフランス、イタリアなどゴージャスなホテルのスイートで開けたシャンパンが最高でした」

 だがシャンパンの泡のごとく、彼との恋も徐々に終わりへと向かっていく。

結婚式の1か月前に行方不明に

「再会から半年後にプロポーズされました。承諾すると、私の実家のある北陸のホテルで、親族と会食することになったんです」

 ところが会社の役員をやっている彼の父親が急用で出席できなくなり、彼の母親と久美子さんと両親の5人の会食会になった。和服姿の彼の母親は華道の先生と名乗り品がよく、久美子さんも両親も彼が口述する「家柄」にすっかり丸め込まれたという。

「結婚に向けて具体的な話が進展するうちに、彼から海外の投資をすすめられたんです。“今後は2人で財産をつくっていこう”って。その配当金が50万円だったので、すっかり信用してしまって」

 100万円、200万円と投資するうちに、その額は600万円に。

「結婚式場に払う費用も、海外のクレジットカードしか持っていないから払えないと言われて。私、海外のクレジットカードは日本で使えないんだと、信じてしまって……。“悪いね”と100万円をキャッシュで渡されたので、信用して式場に残りの金額、400万円を払いました」

 だが結婚式の1か月前に、彼が突然行方不明になってしまった。連絡してもつながらない。事故に遭ったのではと心配した久美子さんは、マンションの管理人に電話をした。

「管理人は、そこは海外赴任している人の部屋で、人が住んでいないというんです」

 彼の実家の連絡先もつながらない。それまで彼の母親から連絡があっても、久美子さんから電話をしたことがなかったのだ。母親は詐欺のために偽装されたのかもしれないと不安がよぎる。また彼を紹介した常連男性は、一身上の都合ですでに会社を退職したことがわかったという。

「騙されたのかもしれない。結婚詐欺に遭ったのかもしれないと彼を疑いました」

 理想の男性からプロポーズされて、幸福の絶頂だったが、たちまち絶望のどん底に叩き落とされたのだ。

「警察に被害届を出しました。マンションに踏み込んでもらいましたが、人が住んでいる気配がない。プロに合鍵を作ってもらったのかもしれないと警察から言われました」

 結局、投資と称して彼に騙し取られた金額が600万円、結婚式のキャンセル料が諸々で200万円、オーダーメードのドレスやブーケ100万円と、被害額は1000万円近くに達した。

 結婚式をキャンセルし、会社に居づらくなってしまった久美子さんは退職。実家に戻ったが母親から「いつまでゴロゴロしているの」と疎ましい態度をされたという。そこで久美子さんは、1か月もたたないうちに家を出た。

「銀座の店のママを頼って上京すると、“男を見る目を養う”という条件つきで新しい働き先を紹介してくれました。また20代のうちに昼間の仕事を見つけて、夜のバイトから足を洗うこともすすめられました。ママの愛情だったと思います」

 結婚詐欺被害のトラウマから抜け出せないまま夜の店でバイトをしているとき、人生に絶望している自分に気づいた。そんな中で、母親から疎ましい視線を浴びせられたことに対して、無性に腹が立ったという。

「7歳違いの弟を溺愛している母は、娘が人生最大の苦難に直面していても無関心。その悔しさをバネに、仕事で成功してやると決意しました」

どん底に落ちた彼女が求めたものとは

 29歳で医療関係の会社に転職すると、マーケティング部に配属。3年間働いたのちに独立。前職の会社から調査の仕事をもらいながら、医療系のネットワークビジネスに加わった。だが翌年には人間関係が嫌になってやめたという。

「このネットワークでノウハウを学んだので、海外の医療系のネットワークビジネスの日本支部を立ち上げましたが、騙されることが多くて。もうやめようと断念して、医療系のNPO法人に再就職するつもりでした。そんなとき、あるパーティーで知り合ったマネージメント会社の社長が“医療系という専門性をもった女性として発信したほうがいい”とマネージメントを申し出てくれたんです」

 40歳直前に大きなチャンスをつかんだ久美子さん。さまざまな人脈を紹介されるうちに仕事が増えていき、プロデュースする商品を販売。SNS広告の効果もあって、会社の業績がアップしたという。

「いつの間にかお金のにおいがしないものには近づかないようになりました。お金も才能もない人には近づきません。男は生きる活力ですから、常にキープしています」

 と、この15年間は男を切らしたことがない。

「でもね、去年別れた男が“君はどこかの国の人みたいだ。金の話しかしない”って。拝金主義ってことかしら」

 と口をとがらせながら、少し寂しそうだ。そんな中、思わぬ再会を果たしたという。

「25年ぶりに、私に詐欺を仕かけた男を見かけたんです。見るも無残に落ちぶれていましたよ」

 場所は吉祥寺の商店街、うらぶれた路地裏。コロナ禍での男との再会をこう振り返る。

「私が振り向くと彼も振り向いて。マスクも着用せず、くたびれたシャツとズボンでした。“こんな男のために”と、なんとも言えなかった」

 その思いは過去への遺恨なのか。それともその後の愛のない人生に対する無念なのか。久美子さん自身もわからないという。

寄稿/夏目かをる:コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマンの取材をもとに恋愛や婚活、結婚をテーマに執筆活動を。自身の難病克服後に医療ライターとしても活躍。

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