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医師自身は飲まない・勧めない「ジェネリック医薬品」本当のメリットとデメリット

週刊女性PRIME / 2021年7月10日 13時0分

写真はイメージです

「最近、患者さんから“黒柳徹子さんがCMでやってた、ジェネリックという薬を処方してください”という声が増えています」

 とは兵庫県尼崎市の長尾クリニック院長の長尾和宏先生。

 実際に「ジェネリック」という名前の薬があると勘違いしている患者さんもいるようだ。著名人によるCMの影響もあり、ジェネリック医薬品を選ぶ人は多い。

 一方で、今年の2月、3月にはジェネリック医薬品メーカーが製造不正により業務停止命令を受ける事件が相次いで発生した。昨年12月には、爪水虫のジェネリック治療薬に睡眠導入薬が混入し、全国で240名余りに健康被害が出る事件も起こっている。

「ジェネリック」という言葉を耳にする機会はこの10年で一気に増えたが、なんとなく“安い”というイメージだけでジェネリック医薬品を“選ばされている”と感じている人もいるのではないだろうか。

 そもそもジェネリック医薬品は本当に安いのだろうか。また、効果があるのか、安全なのか……薬局で薬剤師に「ジェネリックにしますか?」と質問されたとき、きちんと判断するための知識を長尾先生に教えてもらった。

医師自身はジェネリックを選ばない

 そもそも、ジェネリック医薬品とはどんな薬なのか。

新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を含む医薬品の総称がジェネリック医薬品(後発医薬品)です。新薬の特許が切れたあとにゾロゾロとたくさんの種類が発売されるので、昔は医師の間では“ゾロ”などと呼ばれていました。医療費負担の軽減につながるため、国は積極的にジェネリックの導入を推奨しているのが現状です」(長尾先生、以下同)

 新薬の研究開発には莫大な時間とコスト、労力がかかる。体力のある大手メーカー以外が参入することはなかなか難しく、開発費の回収のために新薬はあらかじめ薬価(薬の公定価格)が高く設定されていることが多い。

 一方で、新薬の特許が切れたあとに、公開された製造情報をもとに各メーカーがつくる薬がジェネリック医薬品だ。イチから研究開発をするわけではないため、製薬コストを抑えることができ、そのぶん薬価も安く設定できる。新薬と同じ成分や効き目で値段も安いというのなら、ジェネリック医薬品を使わない手はないと思ってしまうが……。

「ただ、医師が自分で高血圧などの薬を飲むときに、ジェネリックを選ぶ人はあまり多くないでしょうね。新薬に対する規制はかなり厳しく、品質管理もしっかりされています。長年使われてきた実績があったり、大手メーカーの製品が多かったりという点でも安心感があるのでしょう」

 一方でジェネリック医薬品は、冒頭の業務停止命令の例があるように、品質管理に問題がある場合も。ひとつの新薬に対して大小さまざまなメーカーからジェネリック医薬品が発売されるため、その質については玉石混交だ。

「アメリカには国家食品医薬品監督管理総局というものがあり、品質管理の審査は厳重。対して日本のジェネリック医薬品メーカーは各県の薬事監視員がチェックをしていますが、それでも前述の不正事件が起こっている。一流もあれば三流もあるというのが現状です。名前も知らないようなメーカーの安い薬というのは、医療機関や薬局の薬価差益(薬を出すことで得られる利益)が大きかったりもする。現在は医薬分業がだいぶ普及してきましたが、昔は儲けのために好んでジェネリックを院内処方する医者もいたようです」

 ジェネリックのデメリットはほかにどんなものがある?

「そもそも、ジェネリック医薬品というのは、新薬とまったく同じモノというわけではありません。デパートで同じものを買っても包装がそれぞれ違うように、主成分や容量が同じであっても、添加物などの成分比率は製品により違う場合があります

 食品の添加物を気にする人は多いかもしれないが、薬の添加物まで気にしたことがある人などほとんどいないだろう。しかし、それらが薬の有効性や安全性に影響を及ぼす可能性もないとはいえない。また、ジェネリック医薬品は新薬と「まったく同じ薬効」があるとは、厳密には言い切れない理由もある。

「ジェネリック医薬品は人工胃液を用いた溶出試験によって、新薬と同じように胃で溶けるかどうかの実証が義務づけられています。その結果が新薬と同一でなければ発売することができません。しかし、実際に患者に投与する臨床実験で直接同じ薬効があると確認しているわけではありません。要は、同じ主成分で同じように胃で溶けるから新薬と同じように効くだろうという考え方です」

 人への臨床実験というのはかなりコストがかさむ分野でもある。そこがすっぽり抜け落ちているため、ジェネリック医薬品は価格を安く提供できるというカラクリだ。

 さらには、長く使われ続けてきた先発品と比較すれば、ジェネリック医薬品は副作用などに関するデータがまだまだ蓄積されていないものも多い。万が一副作用が起こった場合、医薬品メーカーにそのデータや知見があるかないかは、服用する側からしてみるとかなり重要な問題である。

医療費を抑制したい政府の思惑

 見方を変えれば、ジェネリック医薬品は「新薬とは異なる成分で、確実な効き目が立証されているわけではない、データの蓄積も少ない薬」と捉えることもできるわけだ。そのようなデメリットまできちんと理解したうえで、安さと天秤にかけて選択する必要があるはずだが、その部分は十分に知らされないまま“ジェネリック誘導”がなされているのが現状だ。では、なぜいまジェネリック医薬品が多く処方されているのか。

高齢化に伴い、医療費が逼迫している日本の医療現場では、ジェネリック医薬品はなくてはならないものになっています。全医薬品を安いジェネリック医薬品にすれば、単純計算で医療費の2~3割を削ることができるので、財務省はなりふり構わず推奨したい背景があるでしょうね」

 高齢化が進む中で、国としても医療費の問題は避けられない。日本のジェネリック医薬品の使用率(後発医療薬のある病気における後発医療薬の使用量の割合)は、2020年の時点で78%を超えるほどだが、未来の財政を考えると“ジェネリック誘導”はさらに加速しそうだ。

 ジェネリック医薬品を処方することは、病院や薬局にとってはメリットも多い。薬局には「後発医薬品調剤体制加算」という制度があり、ジェネリックを多く出した薬局は報酬が手厚くなる。病院などの医療機関にも同様の制度が組み込まれており、簡単に言えば、ジェネリック医薬品をひとつでもまぜて選べる処方にすることで保険点数の加算を得られる仕組みになっているのだ。

 長尾先生のクリニックでは「一般名処方」というかたちをとっており、患者が希望する場合は薬局でジェネリック医薬品にするかどうかを自由に選べるという内容の処方箋を出している。

ジェネリック誘導はもはや国策なので、内心は新薬がいいと思っていても、その潮流に歯向かう医者はほとんどいないと思います。ジェネリック医薬品がなければ病院や薬局の経営は成り立たないし、さらにはこの国の医療自体もジェネリックがないと成り立たないというわけです」

 国や病院、薬局へのメリットが十分にあることはわかったが、患者当人にとってジェネリック医薬品を選ぶメリットはどんなものだろうか。

まずは安さでしょうね。例えば、帯状疱疹で処方する抗ヘルペスウイルス薬の新薬などは比較的薬価が高いものが多いのですが、ジェネリック医薬品に替えることで、薬局の窓口で支払う金額は半額近くに変わります

安くて品質の高いジェネリックも増えている

 錠剤の溶けやすさや飲み込みやすさなど、新薬の使いづらかった部分を改良する製薬工夫ができるのもジェネリック医薬品の利点だ。新薬の場合、許可なしに形状を変更することはできないため、薬の改良も簡単にはできない。ジェネリックならば、新薬の短所をうまく解消することで、お年寄りや小さな子どもにも飲みやすい薬を生み出すことができる。さらには、ジェネリック医薬品はたくさんのメーカーによる競争が起こるため、「安かろう、悪かろう」ということではなく、安くて品質の高い薬品も増えている。

「実際に院内でジェネリックに替えて、数値的にも明らかに快方に向かった患者さんがいたり、逆にぜんぜん効かずに新薬に戻したというケースもあります。胃潰瘍や逆流性食道炎で処方するPPI(プロトンポンプ阻害薬)などは、胃の痛みや胸やけがきちんと解消されているか、患者さん自身が薬の効き目を実感しやすい。ジェネリックに替えたときに“あれ、新薬より効いてるな”などと感じて、そのまま次回からもジェネリックを希望する方もいますね」

 とはいえ、ジェネリックを選ぶ以前の問題として、自分が処方された薬がジェネリック医薬品かどうかを理解しないまま使っている人もたくさんいるのではないだろうか。

「薬品の名前を見ればひと目で確認できます。ジェネリック医薬品は【成分名+容量+「メーカー名」】というルールで名前がついているため、薬の名前の最後に製薬会社名がついていれば、それはジェネリック医薬品。主成分の一般名がそのまま薬の名前になっていますが、新薬は『ロキソニン』など、独自の商品名がつけられています」

 どの薬がジェネリックなのかわかったところで、それを選ぶかどうか、患者にとっては判断する材料がほとんどないというのが実際のところかもしれない。そんななか、薬の賢い選び方というのはどのようなものだろうか。

ジェネリック医薬品の特徴
メリット
○ 薬価が安い
○ 製剤工夫がされている
○ 選択の幅が増える

デメリット
× 新薬と完全に同成分ではない
× 新薬と同じ効き目とはいえない
× 副作用などのデータが少ない

医師よりも薬剤師の方が詳しい

「餅は餅屋というわけではないですが、よいジェネリック医薬品というのは、医師よりも薬剤師のほうがよく知っています。逆に言えば、どのジェネリックは質がいいということをよく理解している医師は数少ないはず。なので、ジェネリック医薬品を選ぶ際は、薬局で薬剤師としっかり相談するのがベストですね」

 とはいえ、前述のようにジェネリック医薬品を使うことで儲かる仕組みができているならば、薬局で相談してもジェネリック医薬品をすすめられるだけなのでは……。

複数の薬を処方されている場合は“どれをジェネリックにすればいいか”“新薬のほうがいいものはどれか”と、優先順位をつけてもらうイメージで尋ねてみるといいかもしれません。処方箋のなかにひとつでもジェネリック医薬品が含まれれば、それはジェネリック処方箋として扱われるため、薬局にとってもメリットがあるかたちで本音を語ってくれると思いますよ」

 筆者も歯医者で親知らずを抜いた際、処方箋を持って薬剤師の方に相談したことがある。そのときの保険調剤明細書が上の画像だ。上段の抗生物質はジェネリック医薬品を指定し、下段の痛み止めは普段から使い慣れている新薬を出してもらった。ジェネリックに替えた抗生物質は、新薬と比べると1錠あたり13円ほど安くなっていた。薬価だけで単純計算すれば、1日3回、4日間の服用で、150円と微々たる節約。しかし、たくさんの薬を毎日常用しているような人にとっては、家計にも大きな違いが出てくることだろう。

「1円、2円の違いであれば、新薬を選ぶほうが無難だと思います。ただし、ジェネリックと新薬の価格差が大きいものはたくさんあり、前述の帯状疱疹に処方するバラシクロビル塩酸塩など、1錠あたり200円以上の差があるものもあります。“どれくらい価格差がありますか”と薬剤師に率直に尋ねるのも、ひとつの賢い方法ですね」

 ほかにも、薬を選ぶうえで患者側が知っておくべき情報はあるだろうか。

「そもそも、その薬が本当に自分にとって必要なものかという意識は持っておくべきです。近年はポリファーマシー(多剤併用)についての問題も多く起こっています。たくさんの薬をもらうことで安心する患者さんもいまだに多いですが、飲み間違いや副作用の可能性も高まる。薬が多い方は、まず薬自体を減らしてもらうように医師と相談するべきだと思います」

 どの薬を選択するかは患者側にある権利。さまざまな背景を理解したうえで、納得して薬と付き合っていく考え方が必要になっている。


●お話を伺ったのは
長尾和宏先生 医学博士、医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長。年中無休の外来診療と在宅医療に従事し、『その医者のかかり方は損です』など著書多数

取材・文/吉信 武

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