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内臓の腫瘍が破裂して「死を覚悟した」という中江有里、搬送の様子と“更年期のリアル”を語る

週刊女性PRIME / 2024年12月14日 17時0分

中江有里

自宅で、倒れ込むほどの痛みに襲われたら……。俳優で作家の中江さんは、昨年、腎臓にできた腫瘍が突然破裂し緊急手術を受けた。誰にでもできる可能性があり、破裂すると命に関わることもあるというこの腫瘍。事前に防ぐことはできるのか、またその治療、回復に至った経緯についてお話を伺った。

「1秒前までは何ともなかったのに、突然、腹部の激しい痛みに襲われて、『私、このまま死んじゃうんじゃないかな』と思いました」

死を意識……“内臓にできた腫瘍”の破裂

 そう自身の経験を話すのは、俳優、作家、歌手として活躍中の中江有里さん。実は中江さん、40歳のときに受けた人間ドックをきっかけに、腎臓に良性の腫瘍が見つかっている。

「『腎血管筋脂肪腫』という病名です。その名のとおり、血管や筋肉、脂肪でできている腫瘍で、それ自体は特に悪さをするものではないんですね。主治医からは、一番のリスクは破裂することで、腫瘍の大きさが4センチを超えるとそのリスクが高まると説明を受けました」

 40歳の時点で中江さんの腎血管筋脂肪腫は5センチ。そのため、カテーテルを使った処置を受けたそうだ。

「破裂しないように、腫瘍に栄養を送っている血管をふさぐ手術を受けました。その後は年に一度、検査を受けて経過観察をしていました」

 だが、新型コロナウイルスの影響により経過観察を先延ばしにしていたという。

「私の場合、腎血管筋脂肪腫は何の自覚症状もなかったんですね。ちょうど病院に行こうとしていた時期に新型コロナウイルスの感染拡大が重なったので受診を控え、そのまま3年近く過ぎました」

 中江さんが激痛に見舞われたのは2023年7月末のことだった。

「とにかくこれまで経験したことがない尋常ではない痛みで、その場に倒れ込みました。痛みの波が少し引いたときに、すぐ近くにあったスマートフォンまで這っていって、家族に連絡し、救急車で搬送されました」

 搬送先は腎血管筋脂肪腫の診察を受けていたかかりつけの病院だった。

「すでに私の病気に関するデータがそろっていたこともあり、早い段階で腎血管筋脂肪腫の破裂と診断されたそうです。おそらく搬送されて2時間以内には、以前と同じ手術が始まったように記憶しています」

 腎血管筋脂肪腫が破裂すると体内での出血が続き、治療が遅れると命が危険にさらされてしまう。

「私の場合、搬送された時点でかなりの貧血状態でした。もし、仕事で遠方に出かけていたり、飛行機や新幹線で移動中に破裂していたら、搬送が遅れていたかもしれません。そう考えると、自宅で破裂し、かかりつけの病院に搬送されてすぐに治療を受けられたことは、不幸中の幸いだったと思います」

 9日間の入院を経て退院することができた中江さんだが、特に初めの3日間はつらかったと振り返る。

「熱があって、食べられないのに吐き気に襲われて、眠ることもままならないような朦朧とした状態でした。私は阪神ファンなので、横たわりながらラジオで野球の放送を聴くのが唯一の楽しみでした。実際、阪神が勝つと気分的にちょっとラクになるような感覚があったんです」

ホットフラッシュや腕の関節のきしみ

 昨年末、中江さんは50代を迎えた。

「去年の病気をきっかけに、これからはいろいろな不調のリスクが高まっていくんだろうなと思うようになりました。私自身、更年期の年代になってからホットフラッシュや、腕の関節のきしみや痛みを感じるようになりました」

 年齢的なゆらぎ対策を教えてもらった。

「エクオールや漢方薬を飲むようになってから、ホットフラッシュはだいぶ落ち着いたように思います。それから、関節が痛いときほど無理なく動かすことを心がけています。週に1度、ピラティスに通っていますし、普段から腕を回したり、全身のストレッチをするようにしています」

 年齢とともに肌感覚の変化も実感しているそうだ。

「若いころは洋服もデザイン重視で、素材にあまりこだわらずに好きなものを着ていました。でも、今では自然素材のものが『ラクだなぁ』と感じるようになりましたね。仕事のときには用意していただいた衣装でファッションを楽しんでいますが、プライベートでは、下着でも洋服でも綿素材のものを選ぶことが多くなりました」

 また、食生活にも変化が生じているという。

「ご飯とか麺類とか、炭水化物が大好きなんです。でも、いつのころからか炭水化物をとると眠くなってしまうようになりまして……」

 中江さんは野菜と肉や魚といったタンパク質を意識してとるようにしていると話す。

「若いころほど食べられなくなったので、まずは野菜やタンパク質をしっかりとることを心がけています。それだけでけっこうおなかが満たされるので、炭水化物の量は自然と少なくなりました」

 食材の中でも、中江さんの生活に欠かせないのはブロッコリーだそうだ。

「冷蔵庫には常にゆでたブロッコリーが入っています。栄養価が高いのはもちろんですが、味が好きで(笑)。おやつ代わりにもなりますし、サラダや料理にも使えますから、ほぼ毎日、ブロッコリーを食べています」

表現者としてすべての経験を糧に

 心身共に健やかな毎日を送るためには、メンタルを整えることも大切だ。

「例えば、オリンピックでがんばっているアスリートの人に対して自分の気持ちをのせていくようなことって、誰にでもあることだと思うんですね。腎血管筋脂肪腫で入院した際の経験で、自分が苦しいときでも、がんばっている人を応援することで元気になっていくことを実感しました。私はプロ野球が好きなので、ほぼ1年近く楽しめるものがあるのは幸せなことだなぁと思っています」

 作家としても活躍中の中江さんは8月に最新の長編小説『愛するということは』を上梓したが、作品の一部は腎血管筋脂肪腫での入院の前後に執筆されたものだという。

「書くことも、演技をすることも、歌うことも、表現をする仕事というのは、どんな経験でもまったく無駄にはならないんですよね。腎血管筋脂肪腫の破裂はとてもつらい経験でしたが、幸いにして命を長らえることができました。この経験を何らかの形で生かして、誰かの助けや救いになることにつながっていくといいなと思っています」

 来年には26年ぶりに主演を務める映画『道草キッチン』が公開され、歌手としてもアルバムをリリースするなど多忙な日々を送っている。そんな中江さんが、表現者としてこれから発信していきたいことを伺った。

「ついこの間、10年ぶりに福島の被災地を訪れてきたんです。原発事故から13年がたって、被災地に関する報道が減り、現状が伝わりにくくなっていますよね。ひとりでも多くの人に今の福島の被災地の状況を知っていただけるよう、私の目で見てきたことをいろんな形で伝えていけたらと思っています」

なかえ・ゆり●1973年大阪生まれ。法政大学卒。1989年に芸能界デビューし多数の映画、ドラマに出演。2002年『納豆ウドン』で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。俳優、歌手、作家、書評やコメンテーターなど多方面で活躍中。『愛するということは』『万葉と沙羅』など著書多数。


取材・文/熊谷あづさ

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