ヤマトHDが人手不足よりも恐れる「送料無料」という意識

経済界 / 2017年10月23日 9時0分

サービスドライバーの負担は減るのだろうか

新たな中期経営計画の発表で喫緊の課題である人手不足の解消と収益力強化を図るヤマトホールディングス。大口顧客の8割ほどが値上げに同意、働き方改革に向けて多額の投資も発表した。新たな成長への道筋を示したが、一抹の不安もある。そのひとつが消費者に染みついた「送料無料」の呪縛だ。文=古賀寛明

増えていく荷物と減っていく働き手

 2016年末にセールスドライバーの長時間労働や残業代の未払いなどが発覚し、事業の見直しを進めてきたヤマトホールディングス。幸い労働組合と会社による迅速な話し合いによって、企業イメージを損なうことは免れたが、17年3月期には、サービス残業の未払い金230億円を計上し、連結純利益が前期比54%減の180億円となった。そのため、今年度以降の経営計画の見直しも迫られていた。

 こうした事態に陥った背景にあるのは、小口貨物の想定以上の増加と深刻な人手不足にある。国交省が発表した宅配便の取り扱い個数(トラック輸送分)をみても、10年に、32億個だったものが、16年には38億個超と激増している。その要因はeコマース市場の拡大で、B2Cの市場規模は10年の7兆7千億円から、16年にはほぼ倍の15兆1千億円にまで拡大した。配送が必要な物販系分野でみても16年は8兆43億円と、1年前と比べて10%の伸びを示すなど、その勢いはとどまる気配がない。

 ヤマトホールディングスも羽田クロノゲートや厚木、中部、関西の各ゲートウェーといった物流ターミナル施設の完成で大動脈のネットワークは効率化できたが、毛細血管といえるラストワンマイルのところで再配達などの問題を解消できずに、結局はつまずいてしまったといえる。

 加えて、日本の社会全体で労働人口が減っており、とくに物流業界は深刻。そのしわ寄せは現場のドライバーにきていた。ヤマトを含め宅配便は社会インフラとなっていることもあり、その維持をしようとすればするほど、結果的にドライバーの長時間労働とサービス残業という問題につながっていったのだ。

 4月末には、デリバリー事業の構造改革を発表し、労働環境の改善、宅急便総量のコントロール、基本運賃やサービス規格の改定などを行うとした。さらに6月には、配達指定時間のいちばん遅い時間である「20~21時」に配達が集中するため、「19~21時」と、時間帯を広げることで混雑を和らげ、さらに「正午~14時」を配達しないことで、ドライバーの昼食を取りやすくするなど負担の軽減に努めた。その後、宅急便の取扱量の約9割を占める法人顧客、中でも大口顧客との出荷調整や値段交渉のめどがある程度ついたことで、9月28日に都内で新たな中期経営計画「KAIKAKU 2019 for NEXT100」の発表を行うこととなった。

深刻な人手不足は解消できるのか

経済界

トピックスRSS

ランキング