不倫と介護は近代家族の矛盾の集積点

経済界 / 2018年3月14日 13時11分

不倫報道2年の果てに見えたキーワード

 ミュージシャンで音楽プロデューサーの小室哲哉が、『週刊文春』で不倫疑惑を報じられ、引退を表明した件には、すっきりしない感覚を覚えた人も多いだろう。「文春砲」と呼ばれる同誌名物の不倫記事は、2016年1月に、バンド「ゲスの極み乙女」ボーカルの川谷絵音とタレントのベッキーの不倫を報じて以降、芸能人や政治家など有名人を続々砲撃目標とし、この2年でワイドショーの不倫報道も増加したという。

 日本人は、いつからこんなに不倫報道が好きになったのだろうか? いや、多くの人は「くだらない」「興味がない」等と答えるはずだが、なぜこの種の報道は、嫌がられながらも耳目を引いてしまうのか。

 あえて言おう。なぜなら不倫は、日本社会の矛盾の集積点といえる問題だからである、と。そう、不倫はかつてボウヤがするものではなく、家父長制でガチガチに守られた「権威ある大人の男性」が、「玄人(ないしはそれに準ずる)女性」と、家庭でも職場でもない安全な中立コロニー、もとい大人の社交場で、ランデブーするものであった。

 だが、時代は変わって宇宙世紀に突入するよりも早く、人類の不倫居住空間は拡大した。職場や家庭など、不倫地帯とは一線を画していたはずの地域との境界線が溶解し、同時に不倫戦に要する費用も安価になった。そんな戦況下、「メカケヲモツノモオトコノカイショー」という名のステルス兵器は、ブンシュンミノフスキー粒子の発明によって無効化されてしまった。かくして、剥き出しの通常兵器による戦いの火蓋は切って落とされた。    

 だがここに来て、このフリンホウドウ2年戦争は、小室の登場で新たなる戦局を迎えた。キーワードは、「老い」「病」「介護」だ。まだ59歳の小室だが、語弊を恐れずに述べるならば、既に彼は「余生」を生きているように見える。

 周知のように、小室の人生速度は速い。常人の3倍とは言わないが、比較にならないほど高速である。

 小室は1990年代に「小室ファミリー」と呼ばれるアーティストの一群を世に送り出し、音楽業界を席巻した。だがその後のブームの終焉と迷走、極めつけは5億円詐欺事件による逮捕、さらには妻であり元「globe」ボーカルのKEIKOが高次脳機能障害を患い介護負担を抱え、自身も病気を抱えるなど現在は苦難の多い人生行路となっている。

 そうした中、女性看護師に精神的に頼ってしまった……と会見で語る姿に、これまで文春砲報道に、それほど悪感情を抱いていなかった人たちまでが疑問を呈し始めた。小室の事例はこれまでの報道に比べ、あまりにも重かった。

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