アメリカのBTSと銀河で一番静かな革命 『うたた寝は生活を狂わす』(第三回)

太田出版ケトルニュース / 2019年6月11日 12時59分

BTSはBTSでも…

なんてことないことがなくなったら、なんてことあることしかなくて大変だ。これは、カルチャー誌『ケトル』の副編集長である花井優太が、生活の中で出会ったことをざっくばらんに、いや、ばらっばらに綴り散らかす雑記連載です。おそらく毎週更新されます。おそらく……。第三回目は、アメリカのBTSと最近読んだ小説の話。

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「BTSを世界的なスターに育てる、モバイルゲーム『BTS WORLD』が6月にリリース」。「Rolling Stones」が6月7日に配信したニュースの見出しである。考えずとも、これが防弾少年団の情報であることはわかる。韓国が生んだスーパー・グループ、今となってはすぐにそう理解できる。でも、このBTSという文字の並びに出くわすと、違うものを思い浮かべてしまうのだ。

ビルト・トゥ・スピル、略してBTS。USインディの良心であり、デスキャブもストロークスも憧れる最高のバンド。ベン・ギバードの歌い方なんて思いっきり影響丸出しだし、僕もバンドをやっていたころはだいぶ彼らからアイデアを拝借していた。フィードバックも、クリーンのアルペジオも、気持ちよく入るトレモロも、ジョージ・ハリスンとジョニー・マー譲りのトリッキーなフレーズも、何もかもである。お気に入りのアルバムは『キープ・イット・ライク・ア・シークレット』と『エンシェント・メロディ・オブ・ザ・フューチャー』の2枚(年齢がバレますなあ)。郊外の中古レコード屋から始まった、僕のアーバン・ブルーズへの憧憬。

そんな背景があるもので、数年前にテレビから初めて「BTSが今、女性に人気です」と聞こえてきたときには、至極驚いた。なんだと!? あの髭をたくわえたオッサンが大人気だと……。どうなっちまってるんだ。まったく錯乱で硬直。俺の青春、初代iPodから幾度となく流れた「Carry The Zero」、耳コピを諦め海外のサイトでTAB譜を探し求めるために酷使したWindows XP、全てがいっぺんに脳内スクリーンに映し出された。興奮しながら、そしてキャッキャとしながら勢いよく画面に顔を向けたら、ぜんぜん違うじゃん! 初めてコンバージョンを表すCVを目にした際、キャラクターヴォイスだと思ったぐらいの衝撃。こんなとき、どうしたら良いんでしょう、大塚明夫先生。アイオニオン・ヘタイロイでどうか亡き者にしてほしい。

ただ、BTSという文字を見るたびに、ビルト・トゥ・スピルから連想してシェラックやペイヴメントのレコードを棚の奥から引っ張り出し、USインディに浸るなんて時間が今でも生まれるわけだ。YouTubeを開いては、おはよう愛しのシー・アンド・ケイク、こんにちは麗しのザ・ディスメンバメント・プラン。ごきげんよう。「ピッチフォーク」をスマホで見て、スネイル・メールみたいな新しい才能に出会えたり、KEXPでレジェンドたちの近影を認識したりする。2代目BTSこと防弾少年団には、心より感謝申し上げます。

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