「マーベル・コミックスの神様」スタン・リーがコミックに絶望した日

太田出版ケトルニュース / 2019年7月3日 16時56分

『ケトル VOL.49』(X-MEN特集号 太田出版)

人気シリーズ『X-MEN』の最新作『X-MEN ダーク・フェニックス』が現在公開されています。『X-MEN』を生み出したのは、『スパイダーマン』『アイアンマン』『ハルク』『ソー』『アントマン』など、数々の名作を世に送り出し、「マーベル・コミックスの神様」とさえ称されるスタン・リーですが、若き頃には不遇の時代もありました。

スタンは1939年、叔父の助けを借りて出版社のタイムリーコミックス(後にアトラスコミックスを経て、マーベル・コミックスに発展)に入社します。社長のマーティン・グッドマンもスタンの遠縁にあたる人でした。

入社してからアシスタント経験を積み、1941年に『キャプテン・アメリカ』(原作ジョー・サイモン、アートワークはジャック・カービー) の脚本を手がけるなど、若い頃から数々のヒーローものを手がけます。しかし、みなさんは若かりし頃のスタンが生み出した、こんなキャラクターたちをご存じでしょうか。

「ブラックマーベル、ブロンドファントム、ジャックフロスト……」

マニアでも聞き慣れないこうしたマイナーなキャラクターたちは、当然ですが昨今のマーベル映画には登場していません。この頃のスタンが後世に残るようなキャラクターを生み出せなかったことには、彼の才能に理由があるというよりも、当時の時代状況が大きく関係しています。

初めてアメリカンコミックスの概念が生まれたのは、1842年に登場した『The Adventures of Mr.Obadiah Oldbuck(オバディア・オールドバック氏の冒険)』。1938年には初のスーパーヒーローものとして、『スーパーマン』が『アクションコミックス#1』に登場して人気を博します。タイムリーコミックスの立ち上げは、そのわずか1年後。新しい娯楽としてスーパーヒーローのコミックスに注目が集まり、スタンもその波に乗って大活躍するはずでしたが、第2次世界大戦の真っ只中ということもあり、彼のキャリアは従軍によって一時中断することになります。

◆表現規制によりコミックスに絶望

終戦後もスタンは時代に翻弄されました。その頃に過激な暴力表現で成功を収めたEC コミックスという出版社の影響で、恐怖漫画や実録犯罪漫画のブームが起こったのですが、その人気ぶりが思わぬところに飛び火してしまったからです。

「スーパーヒーローものの根底には暴力と同性愛への誘惑がある」──そんな考えを主張する、精神科医の著書が出版され、「モラルパニック」という社会現象へと発展します。結果、コミックスの出版禁止や焚書といった運動が盛んになり、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン以外のスーパーヒーローもののほとんどが一掃されます。出版社も立て続けに倒産するなど、アメリカンコミックスに大きな傷痕を残しました。現在「アメコミ=ヒーローもの」というイメージがある理由のひとつが、このモラルパニックによるものと言われています。

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