セクハラを訴えたら焼き殺されたバングラデシュの女子学生と同じく、私が見た焼かれるイスラム社会の女性
TABLO / 2019年4月20日 16時0分
何とも痛ましいニュースを耳にした。4月18日付のBBCニュースジャパンによれば、バングラデシュに暮らすヌスラト・ジャハン・ラフィさん(19歳)が、学校で灯油をかけられたうえに、火をつけられ、焼き殺されたという。
事の発端は、事件二週間前のこと、ヌスラトさんは、首都ダッカの南約160キロにある小さな町フェニにあるイスラム教の学校、マドラサで勉学に励んでいたのだが、校長室に呼ばれ、校長に繰り返し体を触られたとことにあった。彼女はセクハラを受けた日に、家族の協力を得て警察に行ったのだった。
女性の立場の弱いバングラデシュで、警察に被害届を出すことは、それにより彼女自身が不利益を被る可能性は十分考えらたが、彼女は勇気ある行動に出た。警察が校長を逮捕すると、事態は思わぬ展開をみせた。地元の人々が校長の釈放を呼びかけただけでなく、ヌストラさんを責めはじめたのだった。
それでも彼女は毅然として学校に通った。事件が起きた日はちょうど期末試験の日で、彼女は屋上に呼び出された。そこで学生と思しき人物に囲まれた彼女は、校長への訴えを取り下げるよう脅されたが、拒絶すると灯油をかけられ火をつけられたのだった。
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全身の八割に及ぶやけどを負ったものの、救出されたため、彼女は自分を襲った学生の名前を伝えることができた。懸命の救命措置を施されたが、4月10日に亡くなったのだった。
事件が起きたバングラデシュは、人口の約9割をイスラム教徒が占めている。今回事件が起きたのもイスラム教の学校マドラサである。
イスラム教徒の女性観というものは、この事件を見てもわかるが、日本人には理解し難いものがあるが、バングラデシュやインド、ネパールなどの南アジアでは、イスラム教徒にかかわらず、女性の地位は極めて低い。
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今から10年ほど前のことになるが、南ネパールのインド人が多く暮らす地域で、ヌスラトさんと同じように火をつけられたイスラム教徒の女性に出会ったことがある。
ネパールというと、ヒンズ教や仏教というイメージを持つ人が多かもしれないが、南ネパールの平野部にはイスラム教徒も少なくない。宗教にかかわらず、総じて保守的な生活を送っている人々が大多数を占めている。
ネパールの一部に今も残る風習が幼児婚である。十代前半もしくは、それより幼い男女が、父親同士が決めた相手と結婚するというものだ。私が出会った火をつけられた女性というのは、15歳で嫁いだものの、夫の家族とうまくいかず、被害に遭っていた。
彼女の名前はサンギタ。首にまかれた紅いショールを取ると、顎から首筋にかけて無残なやけどの跡が今もくっきりと残っていた。
「嫁いでからしばらくして、夫が他の女と結婚すると言い出したんです。それで私のことが邪魔になって灯油をかけられ火をつけられました。幸いにも近所の人が助けてくれて命だけは助かりました」
元夫の家族は、明らかに彼女を殺そうとしたわけだが、何の罪にも問われず、さらに元夫は新しい妻を娶り以前と変わらぬ生活をしているという。一方で彼女は警察に訴え出るわけではなく、受けた屈辱に静かに堪えていた。
死んだヌスラトは、己を含め虐げられるイスラム教徒の女性たちの姿に黙っていることはできなかったのだろう。彼女の死が無駄死にならないことを願うばかりだ。(文・写真◎八木澤高明)
参考記事:日本で初めて起きた宗教対立による殺人事件 夏休みのキャンパスで狙われた『悪魔の詩』翻訳者|八木澤高明 | TABLO
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