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メディアから消えつつある震災の中間報告~風化する大川小学校の悲劇

TABLO / 2014年2月3日 11時20分

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 東日本大震災で児童74人(うち4人が行方不明)、教職員10人が犠牲となった宮城県石巻市の大川小学校の学校事故検証委員会(委員長・室崎益輝神戸大学名誉教授)は19日、最終報告書案を作成した。しかし、これまでに明らかにされた内容以上のものがなく、事実関係の明らかな間違いもあり、傍聴していた遺族からは怒りと落胆の声が聞かれた。

 傍聴していた遺族らが最も知りたい部分は、2011年3月11日午後2時46分に地震が発生してから、子どもたちが津波に飲まれるまでの「当日の行動」だ。「なぜ、子どもたちが亡くならなければならなかったのか?」という思いがある遺族からすれば当然のことだ。しかし、検証委は、その当日の行動を「核心部分」としながらも、周辺の情報を調べた上で、核心部分を示すという方針を示してきた。そのため当初から、なぜ核心部分を議論しないのか、という不満の声はあった。

 大川小では地震発生後、子どもたちを校庭に集めた。その後すっと校庭におり、津波に飲まれる前に避難行動を開始している。しかも避難先は新北上川の堤防付近。いわゆる「三角地帯」と呼ばれるところだ。しかし、2日前の地震では「山」への避難を検討することが話題になっていたが、具体的に話を進めなかった。津波警報が出た後、「山さ、逃げっぺ」と子どもが言っていたこと、教職員の中にも避難先を山と考えた人もいた。しかし、それらの意見や進言は無視されたと言われています。

 私としては「もしかすると、核心部分の詳細な検討をして、明らかにすると衝撃も多いので、最終報告書までは発表しないということもありうる」とは思っていました。あれだけ核心部分に触れない理由がわからないからです。そうした中で、前回の検証委で「核心部分」が示された。しかい、市教委や遺族が調べてきたこと以上のことが出されなかったことに落胆する声が続出していた。

 19日の最終報告書でも、遺族が知り得る情報以上のものがなく、または間違った情報さえあった。教職員13人中、10人が犠牲となり、津波に飲み込まれるまで学校にいた教員で生存したのは1人。学校長は休暇を取っていて、学校にいなかった。避難所だった学校に来ていた地域の人たちの多くも亡くなっているため、当日の詳細なやりとりがわからないのは仕方がない部分もあった。

 一方、生存した教員が証言した内容が、周辺の証言と明らかに違っている部分がある。検証委でも生存教員の聞き取りも行なっているが、報告書では「証言によると」とか「~という証言もある」といった表現に留まり、証言そのものの信憑性については言及していない。細かい部分をあげればきりがないが、私が取材した部分だけでもいくつか曖昧な部分がわかる。

 たとえば、生存教員が、児童一人と裏山を超えて、林道を経て、自動車整備工場に避難をしている。同教員が山に避難する際、「頭から水をかぶった」との証言を掲載している。と同時に、工場の関係者の証言として教員が「大川小学校の関係者とわかった」と書かれている。しかし、私が取材したところでは、その関係者は「教員とは名乗らなかったので、用務員の人だと思った」と言っていた。なぜ、教員と名乗らないのか?との検証はない。

 また、同じ関係者の証言として、教員と児童一人が「ほとんど汚れていなかったために、負傷者や津波に巻き込まれて汚れた人のいる事業所側ではなく自宅の座敷に二人を通した」ことの掲載している。ここまで書くのであれば、私がこの関係者に聞いた「その座敷に敷いた布団を使っていた」こともあわせて書くべきではないか。そのとき、その関係者は「濡れていたら、布団も濡れるでしょ?」と取材に答えていた。この証言の信憑性を問う作業は報告書ではなされていない。

 この部分だけ見ても、細かな検討がなされていないか、検討したことがわかるようにはなっていない。もちろん、様々な情報が検証委には収集されているはずだ。生存教員が裏山にのぼり、工場に避難するまでの検証をしていることが記者会見で明らかになったが、報告書には検証作業について触れていない。例えば、証言および情報リストのようなものを作り、報告書に採用したかどうかを「○」「×」で提示し、理由を添えることくらいはできるのではないだろうか。検証作業そのものを検証できるようでなければ不十分ではないでしょうか。

Written Photo by 渋井哲也

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