PC遠隔操作事件の片山被告は保釈へ、メンツ重視の警察・検察が失態か?

TABLO / 2014年3月5日 18時31分

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 PC遠隔操作事件の犯人とされ、一年以上も勾留され現在公判中の片山祐輔被告に対し、3月4日に高裁が保釈を許可し、片山被告側は保釈金1000万円を納付した。

 ところが検察側の特別抗告により、一転して最高裁によって判断されることとなり、保釈処分が停止された。今後は最高裁の決定を待つこととなる。

 ちなみに抗告とは、裁判所の下した決定や命令に不服がある場合、それより上級の裁判所(地裁の決定に不服なら高裁、高裁に不服なら最高裁) に対して申し立てを行うこと。今回は特別抗告なので、高裁の決定に対して最高裁に不服申し立てを行ったということだ。通常は憲法判断を行う必要がある場合に限られるため、特別抗告は "違憲抗告" と呼ばれることもある。

 次に保釈についても説明をしておこう。そもそも事件の容疑者や被告がなぜ身柄を拘束されるかというと、証拠の隠滅や逃亡などの可能性があるからだ。 逆に言えば、その危険がないのであれば身柄を拘束する理由はない。あくまで「裁判を滞りなく進めるための処置」である。保釈とは、証拠隠滅や逃亡のおそれのない人間を釈放し、自宅などから裁判所に通うことを認めるものだ。

 保釈金とは、保釈されるにあたって納付しなければならないお金で、これは実は裁判が終わったら返って来る。言い方は悪いが、その人間に対して「失うには充分に重い金額」を設定し、それを人質に取るという考え方で概ね間違いないだろう。

 この辺りを勘違いしている方が多いのではないかと思うのだが、裁判の最中であっても「粛々と裁きを受ける」のであれば、判決が確定するまで自宅で生活できるし、もし可能ならば仕事だってしていい。被告の立場であっても認められる正当な権利だといえよう。

 身元引受人を立て、裁判所に保釈請求書を出し、保釈の許可と同時に設定される保釈金を納付すれば、保釈されるのが当たり前だと考えるべきである。何故なら保釈は「逃げない」「証拠隠滅しない」「裁判の進行を妨げない」などが前提になるのだから、上でも述べたように "であれば身柄を拘束し続ける意味がない"のだ。

 では保釈金とはどのように設定されるのだろうか? 普通は1~300万円辺りが相場だと思うのだが、事件の重要性や被告の資産などによって増額される。 大金持ち相手に300万円なんてはした金は人質にならないので、そういう場合は億単位の保釈金を設定される可能性もある。

 余談だが、保釈金の最高額はハンナン事件=牛肉偽装事件の浅田会長の20億円で、弘道会の高山組長が15億円、山口組6代目の司忍が10億円、イトマン事件の許永中が6億円、ホリエモンは3億円とも5億円とも言われている。

 こうした例に沿って考えると、今回の片山被告に対する "保釈金1000万円" というのはいかがなものだろうか? 保釈金には立て替え制度があるのだが、その上限は数百万円程度である。ということは、片山容疑者側は少なくとも500万円は自力で用意しなければならない。彼や彼の家族などはそこまで大金持ちなのだろうか? あくまで個人的な意見ではあるが、まず保釈金の設定からして嫌がらせを感じてしまう。

 そして保釈金を納付した後にまさかの特別抗告である。このニュースを受けて過去に特別抗告を喰らった人間のリストが出回っているが、「片山被告は山口組の5代目渡辺組長や、6代目の司組長と並んだ」 という情報はデマだと思う。司忍(当時若頭補佐) は10億の保釈金を積んで保釈されたはずだし、渡辺芳則についても特別抗告を受けたなどという話は聞いたことがない。(私が不勉強なだけかもしれないが)

 この事件は明らかに警察・検察に落ち度があり過ぎ、メンツの問題で引くに引けなくなっている様子が素人目にもよくわかる。おそらく保釈金1000万円という妥当性があるのかないのか微妙すぎる設定をやすやすと乗り越えられてしまったがために、最後の手として特別抗告に及んだのではないかと勘ぐってしまう。

 そもそもPC遠隔操作事件は片山被告以外に数名の逮捕者を出し、その内2人が起訴されている。しかし片山被告以外の全員が誤認逮捕だったことが発覚した一大不祥事だ。まずこの前提を忘れてはならない。

 また片山被告にしても警察発表ではさんざん証拠がある、決定打があると言い触らしていたが、現段階で表に出た情報はすべて疑わしいもので、そもそも「片山被告の能力で自作トロイが作れるの? C#書けるの?」という点から確証がない。

 これは重箱の隅をつつくような内容になるが、当初警察はこの事件を「コンピューターウィルスで遠隔操作して~」などと言っていたが、この時点で日本の警察のIT知識(笑)のなさがハッキリしてしまった。この事件で用いられたプログラムはウィルスとは呼ばない。ウィルスはあちこちに感染していくからウィルスと呼ぶのであって、この事件に使われたものには感染力がないのだ。従って自作のトロイの木馬、悪意のあるプログラムなどと呼称すべきである。現時点で日本の警察はIT犯罪に対して "このザマ" と言うよりほかなく、そんな連中が強権を振りかざして魔女狩りをしているのだ。

 片山被告以外にすでに数名の罪なき日本人が被害に遭っているが、警察は彼らに対してどのようなフォローをしたのだろう? これで片山被告まで......となれば、警察権力の失墜どころか、過去に例を見ない大不祥事として歴史に記録されるだろう。

 警察は明らかに退き時を間違え、また自分達の能力・知識のなさを知らなすぎた。非を認めるべきところで認められず、ウソにウソを重ねたがために、片山被告は「古今稀に見る大物」と化してしまった。これは後の世で落語かなにかのネタにされてもおかしくない笑い話である。

 これは書くべきか伏せるべきか悩んだのだが、二日酔いで頭がぐわんぐわんするので勢いで書いてしまおう。知人の警察関係者が以前ふと漏らしたこんな台詞が頭から離れない

「片山君ってしぶといらしいね。捜査関係者がボヤいてたよ。彼らはこう願ってるんじゃない? ゆうちゃん○○でくれないかなって」

 特別抗告は憲法問題が絡むという前提から違憲抗告とも呼ばれているが、警察・検察のメンツ優先で暴走している無様な姿こそ、片山被告の基本的人権を全否定するも同然の憲法違反である。

■3月5日16時 追記

 この原稿の寄稿後に片山被告の保釈を認める決定が下された。理由は、本来ならば権限のない地検検事が抗告してしまったため、最初の保釈停止が無効と判断され、改めて高検検事が特別抗告と保釈執行の停止を申し立てしたものの、そちらも「保釈に問題なし」と判断されたため。

 この無様な慌てぶりを見て解る通り、この事件はもはや真相の究明などそっちのけになっている。すべては警察・検事のメンツを守るためで、「誰か生贄を置かないと上げた拳が下げられない」のであろう。この国は本当に21世紀の法治国家なのだろうか?

Written by 荒井禎雄

Photo by Kazutaka Sawa Portfolio

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