ベビーシッター紹介サイトの暗黒面、虐待承知で利用者が集まるワケ
TABLO / 2014年3月19日 20時20分
今月17日、自宅から幼児の死体が発見されたとして、埼玉県に住む男が死体遺棄の疑いで逮捕された。 男はネットのベビーシッターマッチングサービスに登録しており、そこを経由して子供を預かっていたという。
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『ベビーシッターの男逮捕 2歳男児遺棄疑い 窒息死、「以前にもあざ」』
埼玉県富士見市のマンション一室で横浜市磯子区の母親(22)の長男(2)が遺体で見つかった事件で、神奈川県警は18日、遺体を放置したとして死体遺棄の疑いで、この部屋に住むベビーシッターの 物袋勇治 (もってゆうじ) 容疑者(26)=富士見市東みずほ台2の14の6=を逮捕し、室内を家宅捜索した。
長男は 山田龍琥 (やまだ・りく) ちゃんで、司法解剖の結果、窒息死の疑いがあり、口や鼻の周りの数カ所に皮膚の変色がみられた。死亡したのは、遺体が見つかった前日の16日ごろと推定される。県警は死亡の経緯を調べている。
母親は18日夜、取材に応じ、物袋容疑者に以前、龍琥ちゃんと次男を複数回、預けたことがあったと明らかにした。その際、顔を腫らし、背中にあざをつくって帰宅したことが2回あったという。これ以上依頼するつもりはなかったが、物袋容疑者が今回は別の名前を使ったため、気付かなかったという。
逮捕容疑は17日午前8時ごろ、遺体を保育室としても使っていた自宅のマンション一室に放置、遺棄した疑い。県警は18日、物袋容疑者を送検した。
(47NEWSより http://www.47news.jp/47topics/e/251498.php)
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このニュースが報じられるや、ネットではベビーシッターの男だけではなく、サービス提供会社や預けた母親に対する非難の声も巻き起こった。それも多分に仕方ない一面があり、まずネット上のやり取りだけで、顔も見た事のない他人に子供を預けるという点に危機意識の欠片も感じられない。
またマッチングサービスの提供会社も同様で、こうした事件が起きる可能性は充分に予知できたはずである。それに対する防御策をもっと考えておくべきだった。しかし、そうした点を踏まえてもなお、今回最も非難を浴びるべきは、そして早急に対応すべきは "政府" だと断言させていただく。
少子化が叫ばれてどれくらい経ったか解らないほどだが、今の日本は「子供が作れなくて当たり前」の状況にある。世襲で代々政治家様をやっているような貴族階級の皆様には伝わっていないのかもしれないが、経済的な後ろ盾を何も持たない大多数の国民(特に若者)にとって、結婚はともかく出産なんて「最も無責任な行為」と化してしまっている。自分の人生すら先行き不透明で、老人になって寿命が訪れるまで生きていられるかどうかすら不安視しているというのに、子供を作るなど以てのほかだ。
まず正規雇用者になれなかった非正規雇用の身では、自分が暮らしていく分の金を稼ぐのが精一杯である。恋人(もしくは夫婦)2人で共働きしつつ同棲するなどすればいくらか楽にはなるが、それでも子供が大人になるまで養えるほどの経済力は手に入らない。そもそも両家の親が納得するような結婚式を挙げられるかどうかも危ういのだから、子供の将来まで考えられるはずもないだろう。
◇総務省発表 平成25年度 労働力調査(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/)
上の調査結果によると、現在正規雇用者であっても年収のボリュームゾーンは200万~300万円未満である。 また非正規雇用者となると年収の平均は100万円未満~200万円未満となってしまう。これでは仮に男性が正規雇用、女性が非正規雇用だったとして、夫婦合わせても (マシな方で) 400万円ほどの年収で生活せねばならない。これが日本の現状である。これでは女性が専業主婦として家で子供の面倒を見るなど不可能だ。
また子供を保育園に預けようとしても、待機児童の多さが問題視されているのは今に始まったことではない。預けようにも施設に空きがなく、運良く預けられても時間の制限(17時を過ぎたら預かれませんとか)が厳しくなる一方だとか、自分の勤務先から時間内に引き取りに行くには労働時間を減らすしかないとか、「子供を預ける」という一点だけ考えてもハードルが高すぎる。今では条件の合う保育園がある土地に引っ越すのが当たり前とすら言われているほどだ。しかしこれには新しい土地に移り住めるだけのお金や、それが許される勤務先が必要となる点を付け加えておく。
こんな状況では、健康な親が自宅の近所に住んでいるか、もしくは親と同居でもしていない限り、夫婦が共働きをして子供を育てるなど不可能なのだ。
そう考えると、今回事件を起こすキッカケとなったベビーシッターのマッチングサービスは苦肉の策以外の何物でもない。別の言い方をするなら "クモの糸" に感じる方も多かろう。危険を承知で、なおそれを使いでもしなければ、夫婦+子供の生活が成り立たないのである。
少子化問題の解決のために移民を入れるだのなんだのと一足飛ばしの案が出されているようだが、それより前に「今現在日本で七転八倒しながら生きている国民を助ける手段を考えろ」と言いたい。いったいこの日本は誰が為の国なのか? 安倍政権・自民党は保守だと言われているが、彼らが何を保守していると言うのだろう? ごく一部の財界や自分達の利権限定の保守派なのだろうか?
このままでは「子供なんて作る方が悪い」「若くして結婚して子供を作るなんて後先考えないクソバカDQNの思考」といった考え方が定着しても不思議ではないが、果たしてそれが今後100年の日本にとってプラスに働くのだろうか?
現在結婚適齢期にある日本人は、心のどこかで「自分の生活に無理をしてまで子供を作る意味があるのか?」「夫婦だけで仲良く暮らして行ければ子供なんていらないんじゃないか?」「作っても将来に責任が持てないのだから、子供なんて作るべきではない」など、生命の根源の部分を否定するような悩み を抱えている状況だということを忘れないでいただきたい。
最後にもう一度だけ言わせていただくが、このような事件で母親やサービス自体を批判しても意味がない。強く批判し、早急な対応を求めるべきは、何を保守しているのか意味不明な国家に対してである。
Written by 荒井禎雄
Photo by AVAHarmsworth
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