ソウル駅近辺で日本人が暴行を受けたという謎のツイート 「旅行に行かれる方（略）気をつけて」の真意とは？

疑惑の現場のソウル駅

「韓国　ソウルに旅行に行かれる方へ
今日友達がソウル駅近くで韓国人男性6人くらいに囲まれ袋叩きに合いました。警察に行きましたが全く相手にされなかったとの事です。本来なら明日までの旅行でしたが、本日の最終便で帰国するとの事。
韓国へ旅行する方はくれぐれも気をつけてください。釜山も心配です」

日韓関係が悪化する中、1万回以上（29日夜の時点）リツイートされたこのツイート。実際に読んで「韓国に行けば同じような目に遭うかも」と韓国への渡航を躊躇した人もいるのではないだろうか。

このツイートには、ここぞとばかりに嫌韓を煽ろうとするレスがついた一方で、デマの可能性が高い、証拠を出せといった、信ぴょう性を疑問視するレスも多数ぶら下がった。

ソウル駅は、ソウル地下鉄、仁川空港鉄道、高速鉄道KTXが発着し、それらの利用客数だけでも1日約26万人（2017年、国土交通省、ソウル市の統計）に達する交通の要所で、日本人を含めた外国人観光客も非常に多いところだ。そんな暴力事件が実際に起きたとして、目撃情報がまったくないことから疑問の声が上がるのは当然だろう。

一方でソウル駅周辺では、暴行事件を何度も起こしている太極旗部隊と呼ばれる極右グループが頻繁に集会を行うなど、「治安が悪い」とのイメージも根強い。そのため、彼らに襲われたのではないかとの見方も一部で示された。

このツイートに、韓国メディアが切り込んだ。

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韓国のテレビ局、JTBCは29日夜に放送された「ニュースルーム」の「ファクトチェック」のコーナーでこの件を取り上げた。

取材の結果、ソウル駅派出所は「届け出がなされておらず、他の日も確認したがなかった」との見解を示し、ソウル地方警察庁、日本語での案内サービスを提供するソウル駅観光センター、駐韓日本大使館のいずれも「聞いていない」と答えたと報じた。

その上でレポートは「この暴行事件はまだ事実とみなすだけの根拠がない」と締めくくられている。つまり、デマと断定するのではなく、目撃者の証言、監視カメラの映像など追加で取材を進めれば、何らかの事実が判明し得るとの余地を残した慎重な姿勢だ。

JTBCは英オックスフォード大学のロイタージャーナリズム研究所が38カ国を対象に行なった調査で、韓国で最も信頼度が高いメディアに選ばれ、韓国の時事週刊誌「時事ジャーナル」が毎年行う調査で最も影響力があるメディアとして選ばれた。また、ニールセン・コリアが行う視聴率調査では、29日放送の「ニュースルーム」の視聴率は6.473％と、公共放送KBSの「ニュース9」（11・6％）に次いでニュース部門の2位を記録している。

さらに、コーナーを担当したイ・ガヒョク記者は、朴槿恵政権時代に国政に介入したことで逮捕、起訴された崔順実の娘の、チョン・ユラのデンマークのアジトを突き止めた敏腕記者として知られている。

JTBCは、ツイートの当事者に取材を試みたが、29日夜の時点ではまだ連絡が取れていないとしている。ツイートの当事者は当該ツイートを削除した上で、アカウントに鍵をかけてしまい、アカウント名も変更してしまった。また、「被害当事者」であるツイート当事者の「友達」による証言がないなど、現時点では多くの謎が残っている。

一般論として、韓国が世界でも非常に治安の良い国であることは間違いない。国連薬物犯罪事務所（UNODC）が世界230の国と地域の10万人あたりの殺人件数をまとめた結果によると、韓国は204位の0.60件で、日本（219位0.20件）よりは高いものの、安全な国に属する。

また、外務省がまとめた2017年海外邦人援護統計によると、援護件数の多い在外公館上位20のうち、駐韓日本大使館は375件、12位となっているが、「韓国に所在する公館は『遺失・拾得物』が主な内容となっている」としている。

しかし、韓国が安全だからと犯罪が全くないわけではない。韓国では外国人観光客を対象にした観光警察制度が運用されていて、全国どこからでも観光通訳案内電話1330番にかければ日本語でサポートが受けられることになっている。また、大使館の電話番号などもメモっておけばより安心だろう。（取材・文◎新村弘）

参考資料：
緊急電話のリスト
http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/AKR/AK_JPN_3_5.jsp

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