【大阪・クラブ摘発で無罪判決】警察の横暴と風営法の問題点
TABLO / 2014年4月28日 12時55分
無許可で客にダンスをさせたとして、風営法違反の疑いでクラブ「NOON」の経営者が逮捕された事件に関して、25日大阪地裁は「風営法違反にはあたらない」とし、無罪判決を下した。(求刑は懲役6ヶ月 罰金100万円)
ダンスの違法性が問われた裁判は過去に例がないが、今回の判決により、現在超党派の議員連が今国会に提出予定の風営法の改正論議に影響を及ぼす可能性がある。なお、弁護側の「ダンス規制は人権侵害であり違憲だ」とする主張は退けられた。
◇
さて、以前にも風営法の問題点を指摘する記事を何度か掲載したが、ここでおさらいをしておこう。現在風俗営業と看做される業態は次の通りだ。
[風俗営業の種類]
1号営業 キャバレー(キャバレー等の客への接客のある営業)
2号営業 料理店・社交飲食店(待合、料理店、カフェ等 / 1号営業店は除く)
3号営業 ダンス飲食店(ナイトクラブ、ディスコ等 / 1号営業店は除く)
4号営業 ダンスホール等(ダンスホール等)
5号営業 低照度飲食店(照明が10ルクス以下の飲食店で1~3号に入らない営業)
6号営業 区画飲食店(ネットカフェ等の狭い個室を提供する営業)
7号営業 マージャン店、パチンコ店等(客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業)
8号営業 ゲームセンター等(客の射幸心をそそる可能性はあるが7号に入らない営業)
今回の大阪のクラブ「NOON」は、上記の内3号営業の許可を得ていなかったとして摘発された。
ところが、当日現場に入った捜査官や、それ以前に内偵を行っていた捜査官の証言によると、「何をもってダンスと看做すか?」の判断基準がバラバラで、とてもじゃないが法に基づいて公正な判断がなされたとは言えない。こうした警察のいい加減さや横暴さが無罪判決の決定打になったように思われる。
というのも、今回の裁判で複数の捜査官が証言をしたのだが、「ステップを踏んでたらダンスだと思うが、軽く身体を揺する程度ではダンスではない」と言う者がいたり「音楽に合わせて身体を動かす時点で享楽的なダンスだ」と言い張る者がいたりと、問題となったクラブの何が法に違反しているのか、問題点をズバリと指摘できるような状態ではなかった。何が問題なのかがモヤモヤしているのに、摘発・逮捕・勾留だけされたという話なのだ。これを横暴と言わずに何と呼べばいいのだろうか?
少々話が逸れるが、先日アップしたJKリフレの記事中ではこのように書いた。
◇
(http://n-knuckles.com/case/society/news001431.html)
こうしたアホの子を言いくるめて日陰者の立場に追いやる流れを食い止めるには、JKリフレのような入り口の段階で摘発し、「未成年者を性産業の道具にすることは絶対に許さない」という姿勢を見せるよりほかないのだが、先程も述べたように現行の法では労基法くらいにしか抵触しない。したがって、警察からすればどう考えても悪いと解っている業者がそこにいるのに、かなり無理やりな方法を採らないと逮捕・摘発もままならないのである。
◇
現在の風営法や児童福祉法などでは、『店舗型のファッションヘルスなどと同じようなシステムで未成年者を働かせ、密室で客に対して(性行為自体はないものの)身体が触れるサービスを行わせるような業態』 を裁けない。JKプロレスリフレに限って言えば、容疑は労基法違反である。
ところが、クラブでDJが音楽をかけ、フロアの客が身体を動かすと、それだけで風営法違反とされて摘発を受けてしまう。これではいくらなんでも話がおかしすぎ、いったい何を守り、何を裁くための法なのか? という疑問しか浮かばない。
そもそも現在の風営法は戦後すぐに作られたような骨董品が元になっており、時代に合わせてヤッツケで文章を追加したかのような代物である。ダンス規制にしても、元々はダンス自体を規制したかったのではなく、それに密接に付随していた「売春を防ぐための策」であった。
しかし現在は売春防止法があるので、売春自体はそれで裁けるようになっている。にも関わらず、必要のなくなったダンス規制だけが残ってしまっているのだ。今回の意味不明の摘発劇は、このような 「法の不整備」に起因している。早い話が風営法それ自体に大きな欠陥があり、それを警察が手柄欲しさに悪用していると受け取るしかない状況なのだ。
だが、クラブ文化やクラブを取り巻く環境は良いとは言えず、確かに治安や風紀を乱すとされても仕方のない違法行為の温床となっている。客同士のケンカ騒ぎや、ドラッグの売買、ヤクザ・準暴力団・半グレ集団の暗躍など、摘発せねばならない事案は山積みだ。警察からすれば、クラブというブラックボックス自体をどうにかしたいと考えたとしても仕方のない一面もあろう。
ところが、上に挙げた問題点にはそれぞれ「それを裁くための法」が用意されている。客のケンカが起きたなら傷害なり営業妨害なりで裁けばいいし、ヤクザがいるなら暴力団に対する法なり条例なりで排除すればいい。ドラッグに関しても同様だ。それを「疑わしいしよく解らないから箱ごと潰しちまえ」では法がある意味がない。すべてが警察の胸三寸で決まってしまうなど、それこそ憲法に違反する人権無視の越権行為である。
今回の無罪判決により、警察の横暴さと、風営法改正の必要性が、広く世間に伝わるだろう。守るべきを守れ、公正に罪が裁かれる国になって欲しいと切に願う。
Written by 荒井禎雄
Photo by Gînfălean Ovidiu
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