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振り込め詐欺で山口組系幹部が逮捕「切羽詰まったヤクザの関与は増えている」

TABLO / 2014年6月12日 19時11分

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 銀行やコンビニのATM等で、あれほど警告の貼り紙があるのに、いまだ減らない振込詐欺被害。なぜ、被害者たちはこうまでして振り込んでしまうのだろうか。先日もこのような事件が起きた。

 親族らを装って、高齢女性から現金500万円をだまし取ったとして、警視庁と島根県警の合同捜査本部は28日、詐欺容疑で指定暴力団山口組系山健組傘下の組長、長田直樹容疑者(53)=東京都立川市若葉町=ら男2人を逮捕した。「だましていない」などといずれも否認しているという。

 警視庁捜査2課によると、長田容疑者は振り込め詐欺グループの中で、現金受け取り役をまとめるリーダー格とみられる。警視庁と島根県警が今年、受け取り役の男らを逮捕し、組織の実態解明を進めていた。

 これまでに長田容疑者らを含む11人が逮捕され、被害は、東京、千葉、神奈川の3都県で少なくとも約20件、総額1億円に上るという。(時事通信 5月28日(水)17時)

 振り込め詐欺に指定暴力団の関与が明らかになった例は少なくない。今回の事件発覚に関して、関東の指定暴力団幹部に聞いてみた。

「警察の締め付けがきつ過ぎるから、カタギにしわ寄せが行くんだ。昔はダンベと呼ばれる旦那衆がいて、こいつらを男にしてやろうとか、その様な男気を持ったカタギの人間が大勢いたけど、今はその様な人間も密接交際者としてマークされてしまう。そうなると何処からも金は出てこない。その結果、カタギを泣かすようなことしか出来なくなってしまうんだろう」

ーーその論理はおかしい。確かに昔は企業もヤクザを利用したり、ダンベと言われる人間もいたが、その様な存在を全部ヤクザが食ってしまったのではないか。

「それもある。だけど今、ヤクザやって何ができる? 不動産は借りれない。会社も作れない。銀行口座も作れない。生命保険も入れない。どんな小さいローンも組めないし、携帯も作れないし、名刺も作れない。車も買えない。ゴルフもできない、ミカジメ取れない、飲食店や風俗店の経営もできない......。ありとあらゆる行動が制限されてるから、振り込め詐欺か薬物を売るしかないのが現状。非合法な商売しかできなくなっている」

ーーここまで取締りが厳しくなっているのに、ヤクザが振り込め詐欺に手を染めるのはなぜなのか。

「手っ取り早く大金を稼げるからに決まってるだろ。初期投資もそんなに必要ない。たとえば最近、裏社会では、振り込め詐欺用のスターターキットのようなものまで売り出されている。CD-ROMに焼き付けた電話帳の名簿データ、架空契約の携帯電話20~30台のセット、それに勧誘から金の受け渡し方法がマニュアルになって100万円前後で流通しているよ。それでも固定電話10万件に電話して、その中から1件引き当てれば元は十分に取れる。今時、固定電話を持っている家はたいてい大家族だ。そこを片っ端から電話をかけるだけなんだから、切羽詰まったヤクザにはお手軽なシノギ。まだまだ増えていくよ」

ーー10万分の1の確率でカモを探し続ける。その数打ちゃ当たる戦法はかつての出会い系業者とも重なる。

「実際同じ感覚だよ。出会い系サイトと同じで、一度騙された人間は何度でも騙される。これは詐欺商売の基本だね」

 かつてヤクザは、カタギに迷惑をかけるのは恥ずかしい行為とされていた。だが、現在では平気でお年寄りなどの弱い立場の一般人を詐欺のターゲットにしている。任侠道を貫くものなどいないのだ。

「ヤクザはきれいことだけじゃ食っていけない時代なんだよ」

 彼が最後に言った言葉が頭に残った。まだまだ猛威を奮う振り込め詐欺にはくれぐれも注意していただきたい。

Written by 西郷正興

Photo by Halii_

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