アンジュルムから主要メンバーが3連続卒業 辛い時期を乗り越えた勝田・中西はなぜ今卒業するのか|大塚ナギサ
TABLO / 2019年10月2日 14時33分
ハロー!プロジェクトのアイドルグループ・アンジュルムの“かななん”こと中西香菜さんが、12月10日の豊洲PIT公演をもってグループから卒業し、さらに芸能界を引退することが発表されました。
アンジュルムとしては、今年6月に初期メンバーである和田彩花さんが卒業し、さらに9月には2期メンバーの勝田里奈さんが卒業しており、中西さんで今年3人目の卒業となります。まさかの次々続々な卒業に、ファンからの「チョトマテクダサイ!」という叫びが聞こえてきそうな展開です。
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公式サイトでの中西さんのコメントによると、〈いま、美容や飲食関連といった新しいジャンルの事に興味を持ち始めています。経営という分野も一から学んでいきたいと思っています〉とのこと。芸能活動に区切りをつけて、新たなジャンルに進むべく、卒業という決断に至ったというわけです。
中西さんがアンジュルムと改名される前のスマイレージに2期メンバーとして加入したのは2011年のこと。同期はハロプロエッグで研修活動を重ねてきた竹内朱莉さんと勝田里奈さん、ミュージカルなどの出演経験がある田村芽実さんの3人です。つまり、中西さんはスマイレージ加入の時点で唯一、歌もダンスも経験がないメンバーだったということです。
スマイレージ 「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」 (レッスンV) – YouTube
当時のレッスン動画はアンジュルムの公式YouTubeでも見られますが、明らかに中西さんは後れを取っている。先行きが本気で心配になるくらいに踊れていません。
すでに歌とダンスのレッスンを受けているメンバーたちの中にいきなり放り込まれて、そこから怒涛のアイドル生活を送っていくなんて、どう考えても正気の沙汰ではありません。数日で逃げ出したとしても、「仕方ないよ」と許せてしまうレベルです。
でも、中西さんは逃げなかった。そして、中西さんは驚くほどに泣き言を口にしません。謙虚な中西さんなので、自分が足を引っ張っているということで常に申し訳無さそうな表情を浮かべるのですが、だからといって経験がないことを言い訳にはしない。ただただ必死で頑張り続ける。中西香菜は、誰かのせいにしないで何事も「やったるで!」とチャレンジするヤッタルチャンなのです!
スマイレージ 『ヤッタルチャン』(S/mileage[Yattaruchan]) (MV) – YouTube
未経験の状態からとてつもない努力を重ねて、立派なアイドルへと成長していく中西さん。成長の過程こそがアイドルの魅力だともよく言われますが、まさに中西さんはそんな魅力を完璧に体現したアイドルだったと言えるでしょう。
参考記事:「アンジュルム婚」とは何か 蒼井優・山里亮太夫妻が愛するアイドルだからこそ“多くを語らなかった”記者会見 | TABLO
今回卒業を発表するにあたって、これまでの活動をこう振り返っています。
〈今まで約8年間色んな経験をさせて頂き、大変だなぁと思ったことはありましたが、辛いなぁと感じたことはほとんどありませんでした。周りの皆さんのおかげです〉
アイドルが届けるべきものは辛そうにしている表情なんかではなく、最高の笑顔である。成長の過程が魅力的だからといって、追い込まれるアイドルを見せるべきではない――。そんなこだわりに満ちたアイドル生活を送ってきたのが中西さんなのです。
さて、アンジュルムは1年で3人のメンバーが卒業することとなります。しかも、それぞれがまったく異なる道へ進んでいきます。
アイドルの解釈の幅を広げるためにソロのアイドルとして活動する和田彩花さん、芸能活動は継続しつつファッション関係の仕事に軸足を置く勝田里奈さん、そして芸能界を引退し新たな道を切り開く中西香菜さん。グループ内の多様性を尊重し、メンバーの個性を自由に発揮できる場であるアンジュルムらしい、それぞれの進路だと言えます。
しかし、中西さんと勝田さんについては、発表から2〜3カ月で卒業となり、ファンにしてみれば、心の準備をする期間が短く、少々ショッキングなものであったのも事実です。
あまりにも急展開な卒業には、いろいろな事情もあるとは思いますが、中西さんは〈勝田里奈の卒業をサブリーダーとしてしっかり送り出したかったので このタイミングとさせていただきました〉とコメント。勝田さんも〈皆さんへのご報告は、和田さんが卒業した後にしたいと思っていたので、このタイミングでの発表とさせていただきました〉とコメントしています。
つまり、先に卒業するメンバーの邪魔にならないようなタイミングで自らの進路を発表したということ。その背景には、メンバー愛やらグループ愛というものが、少なからずあったとも解釈できるのです。
アイドルグループというと、メンバー誰もがセンターポジションを狙っていて、バチバチやり合っているというイメージもあるでしょう。しかし、アンジュルムはそうではない。自己主張はするけど、同時に自分以外のメンバーのことを絶対的に尊重する。多様性を認めるということは、他者を認めるということ。それをしっかりと実行しているのがアンジュルムです。
もちろん、多様性を認めるグループなのだから、アンジュルムのメンバーとして活動を続けつつ、自分のやりたいことを追求する、という選択肢もあり得たかもしれない。ただ、それが本当に実現可能かどうかというと、なかなか難しい。自分のやりたいことを優先させると、グループの活動に影響が出て、他のメンバーに迷惑がかかるかもしれない――。そういったジレンマを抱えたうえで出された結論が卒業なのです。
言い換えれば、多様性を認めるアンジュルムの思想を実現し、そのアンジュルムという場を大切にしたいがための卒業だとも言えるでしょう。アンジュルムの思想を信じているがゆえ、アンジュルムを愛しているがゆえの決断に、より一層寂しさがつのるのです。
和田彩花さんは、自身の卒業をもって“アンジュルムの第2章”がスタートすると表現していました。メンバーの増減があるグループでは、第1章、第2章といった形で区切るのではなく、緩やかに形を変えていくことが多いので、わざわざ“第2章のスタート”という言葉を使うことに多少の違和感もありました。
しかし、実際にはその直後に、新メンバー・橋迫鈴さんの加入、そして勝田里奈さんと中西香菜さんの卒業という大きな動きがあり、アンジュルムは一気に姿を変えたわけです。和田さんが“第2章のスタート”という言葉を使ったのは、ただ単に自分の卒業を区切りにしたということでは全然なくて、アンジュルムが大きく変化することを示唆していたのかもしれません。
メンバーが相次いで卒業することにショックを受け、“自分の中のアンジュルムは終わった”などとネガティブな反応をするファンも少なくないでしょう。でも、今年1年の動きは、“終了”ではなく、“アンジュルム第2章のスタート”です。初代リーダーである和田さん自身がポジティブな表現を使ったのは、メンバーの卒業という寂しい現実を“積極的な進化”に転換するためだったのではないでしょうか。
そのままの姿であってほしいと願う保守層からの異論を封じ込めんばかりの強い意思が込められていた「アンジュルム第2章」という言葉。ある種の扇動的な意図も感じられますが、これまで以上にメンバー自らが意志をしっかりと主張するグループへの変貌を予感させるものだと言えるはずです。
激動の2019年を経験した若いメンバーたちがどのようにアンジュルム第2章を作り上げていくのか。本当に楽しくなるのは、むしろこれからなのです。(文◎大塚ナギサ)
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