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野口健氏「韓国で日本人差別」はどこまで本当か...釜山で現地取材

TABLO / 2014年8月15日 12時16分

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 野口氏の証言にある「サウナで追放された」という証言については、その体験にあったという釜山に実際に取材してみることにした。(なお、野口氏はくだのんツイッターでの発言の後、J-CASTニュースの取材に答えて、それは1998年頃と追加の証言をしている)

 長く通訳として韓国で働き現地の観光事情に詳しい人に話を聞けば、この当時釜山でサウナといったら4~5か所しかなかったとのこと。そのひとつ釜山のコモドホテルを訪問した。釜山港を一望に見下ろす小高い丘にある、勇壮な韓国式の外観で知られた老舗のホテルだ。サウナに入りたいと日本語で話すと、カウンターのホテルマンはすらすらと日本語で営業時間と料金を教えてくれた。

 昔から日本人が多いホテルであるとのことで、日本人ということでのトラブルはひとつもないとのことだ。1998年頃は日本からのサラリーマンやそれこそヤクザまでもがサウナを多数利用していたという。昨年公開された韓国映画『わるいやつら』でも、このホテルは釜山と日本のヤクザの交渉場所として使われていた。

 日本との交流の玄関口である釜山には日本人は多い。韓流ブームのはるか前、日本人が韓国に旅行するということであれば、それはほとんどが男性であった。すなわちキーセン観光という名の買収ツアー。距離的に一番手ごろな釜山には、たくさんの中年男であふれていた。そういう釜山で、サウナに日本人が来たからといって「追放」されたりするとは、どうにもこうにも不自然な話だ。本当にこんなことがあるのだとしたら、サウナに入ってくる日本人はかたっぱしからケンカを売られていたはずなのだが。

 98年当時からサウナがあったという釜山の中心部から20分程度の観光地にある「ヘウンデグランドホテル」と釜山の駅前にある「広場ホテル」も訪ねた。こちらの質問に怪訝そうな顔しながら「日本人だからというようなトラブルは聞いたことはない。たくさん日本人は来るので、そういうことはないと思う」とめんどくさそうに答えられた。

 釜山の日本人会には面白い話を聞いた。テレビの番組の企画で、韓国に悪質な人種差別があるとネットには出回っているが本当かどうか検証する、というものがあったらしい。ネットに書いてあったという日本人がトラブルにあった(集団で暴行された)という店に取材し、店の監視カメラまで分析して、それがデマであったということを証明したということだ。

 なお、釜山の警察署にも話を聞いてみたが、そういう理由での被害届はひとつも受けたことはないとのこと。日本語と中国語の案内だらけの釜山の観光センターでは「釜山市はここまで日本からのお客さんを歓迎しているのに、そんなことがあるわけないでしょう」と軽くあしらわれる始末。

 ネットの嫌韓を煽る話には本当に注意が必要だ。昨年、サッカー日本代表の試合が予定されていたソウルには、日本からも大勢のサポーターが駆けつけることになっていた。その時期に、某大手夕刊紙の一面に「韓国で日本人狩り」とのショッキングな見出しがならんだ。バットをもった若者たちが「竹島はどっちの領土だ」などと聞いて、日本人を襲うそうだ。だが、これが完全なデマ。日本代表のサポーター数千人は、日の丸がはいったブルーのユニフォームを着て、ソウルの夜をそれぞれ楽しんだことは言うまでもない。

 野口氏の「体験」は本当にあり得ることなのか。これまで見てきたように、本当にあったとしても、現在の韓国では相当のレアケースの話だということがお分かりいただけたかと思う。

 ちょうど野口氏が「差別体験」をしたと記憶しているという1999年に日本から韓国に渡航した人が年間200万人を突破している。昨今の「嫌韓」風潮で減ったといわれるが、2012年にはなんと年間300万人。そうすると1999年からの累計で3000万人近くが韓国に出かけていることになる。野口氏のように、名前を出してそういう体験を語ったのは野口氏を含めて2名しかいない。そうすると先の渡航者数を単純に母数とするならば、数千万分の一の確率となる。

 もちろん「反日」感情がある国なのは承知である。だいたい政治の話になると、熱くなって竹島がどうのと慰安婦がどうのと始まり、一歩も引かないのは、もう彼らのお決まりである。

 だが、それでは日本は嫌いなのか?と聞くと、そろってあっさりと、「日本人が嫌いなのではない。嫌いなのは安倍総理であり日本の政治家だ」という答えが返ってくる。当たり前だ。街には日本の商品があふれかえっており、若い人たちの間では日本のアニメやマンガ、ポップソングや映画が大人気である。

 その昔、日本で学生運動が華やかし頃、「反米」を旗印にあげ、アメリカ大統領を揶揄して中傷しながら、「アメリカ帝国主義」を糾弾していた人たちは、一方でコーラを飲み、ロックを聴きながら、アメリカ文化に憧れていた。当時のゲバ棒とヘルメットの学生に「アメリカ人は嫌いなのか?」と質問すれば「アメリカ人が嫌いだからではない」と答えただろう。

 韓国で乗車拒否にあたったという児玉氏は、筆者が取材で釜山に行っていたと言うと次のように語った。

「釜山の人は優しい。田舎ほど人がいいのが韓国」

 さて、本当のところはどうなのか。なお、野口健氏には取材を申し込んでいるが多忙ということで実現できてない。願わくば、ネットやメディアの情報ではなく、皆様で韓国を体験されんことを。

Written by 清義明

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