平成は携帯・スマホの時代に 「会えない恐怖」を知っている民がこの世界からいなくなった|中川淳一郎・連載『俺の平成史』
TABLO / 2019年11月19日 6時30分
平成時代の画期性はなんといっても携帯電話が登場したことにある。平成初期の頃、経費使い放題の会社の従業員はお笑い芸人の平野ノラがネタにするように巨大な携帯電話を使っていたが、1994~1995年ぐらいから携帯・PHSが一般にも普及し、小型の携帯端末を持つ者が増えてきた。
結局私が携帯電話を持つのは周囲の人は全員持っていたけど「そろそろお前も持ってくれ」と言われた入社3年目の1999年だった。これがあることにより、仕事でも役だったし、突然飲み会に誘われたりするなど良い点は多くあったものの、一つ問題点もあると感じる。
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これが何を変えたかといえば、「“約束”の重みが下がった」ということだ。携帯電話がある前の飲み会の約束は、「とにかくその場に来い」だった。学生の飲み会の場合であれば、駅前で待ち合わせをし、そこから行く店を決めるスタイルが多かった。
何しろ「予約」の概念さえ考えないことだらけだったのだ。「飲み屋なんてどっか空いてるだろ?」的な感覚だったのだ。だからAが満席だった場合(そんなことはないことがほとんど)、Bに行き、そこで「5人ですけど~」のように言えば、店に入ることができた。
こうして2軒の飲み屋を回ることはあったものの、基本的には「駅前に18時集合」ということが平成初期~平成7年(1995年)あたりまでの飲み会の約束風景だったのだ。だからこそ、駅には「掲示板」があり、「山田! お前、遅すぎ!『つぼ八』に取りあえず行く。ここにいなかったら店員に聞いてくれ。さらにいない場合は諦めろ」といったことが書かれた。
約束の時刻から掲示板に書くまでの時間は10分ほどだったと思う。当時、約束に10分以上遅れることは大問題行為だった。10人が18時待ち合わせの場合、2人は17時54分には着いており、そこから17時59分までに7人が集まり18時1分に1人が来て、18時5分に9人目が来る。そして来ないのが10人目の男「山田」であり、10分を過ぎたところで掲示板に山田宛てのメッセージを書き、「来られないんだったらお前が悪いだけ」というやり取りをしていたのだ。
こうした飲み会の約束をし続けただけに、平成中期以降の「渋谷に着いたら電話するね~」「近くに来たらLINE送るね~」という「約束様」をないがしろにするやり取りには抵抗がある。
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この考えを古臭いとか堅苦しいと言うのは全然構わないが、「一旦日時場所を決めたんだったらその通りに来いよ」としか私のような46歳、上記のような「約束は大切です!」という時間を過ごした人間は思えない。
今やありとあらゆるスケジュール伝達ツールはあるものの、平成初期~スマホ登場までもう少し「約束」の重みは重かった。何しろ「会えない」恐れがあったのだから。
だからこそ、きちんと定時に駅前とかハチ公前にやってきた人々は「本当に来てくれたんだ!」と思ったし、飲み会も楽しかった。今も楽しいが、何度か「デートの約束がキチンと伝わっておらず、会えなかった」という経験をした者としては、こうして人がキチンと定刻の時間に来たことが嬉しかった。
デートの約束が合わない、については、たとえば「南口」と「北口」を間違えたとか、「武蔵小金井」と「東小金井」を間違えた、といった程度の話で発生していた。それから数年経て「あの時来てくれなかったから“脈ナシ”だと思われたの!」「えっ、オレこそあなたが来なかったから“フラれた”と思ったのに!」みたいな会話になることも。
こうして懐かしい話を書いたものの、言いたいことは一つだけ。
「連絡は取れるからといって、安易に約束するな。そして、約束したのならばそれは遵守しろ」だ。(文◎中川淳一郎 連載『俺の平成史』)
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