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【未解決事件の闇8】女性編集者失踪・三重県内に拉致の形跡を探してみる

TABLO / 2014年10月17日 22時0分

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 リアス式海岸が多く、志摩半島を有している三重県は海岸線がものすごく長い。だから目立たずに小船をつけることは実はそんなに難しい事ではないのかも知れない。だとすれば日本海ではなく、太平洋岸に裏をかいて、北朝鮮の小船が着岸することもなくもないのではないか。三重県の何カ所か、拉致または自ら密航したという話を確かめに回ってみた。

 辻出さんが失踪した現場のそばを通る国道23号線を北北西へ2キロほど行くと、宇治山田港の一角らしき入江にぶつかる。このあたりはかつて全国各地からのお伊勢参りの客を乗せた船や物資が集散する港として昭和初期まで発展したところだ。その名残らしき、文庫叺筵船積出地跡碑という石碑が建っていた。勢田川排水機場という施設で仕切られ、池なのか川なのかにわかに分からないような場所だった。小船なら通れるようで何台かプレジャーボートが10隻ほど停まっていた。今にも雨が降りそうな天気なのに、80歳ぐらいのいかにも地元という感じの男性が散歩をしているのか通りかかった。これ幸いと声をかけた。

「地元の方なんですか」

「はいそうです」

「ここって海につながってるんですか」

「はい」

「船は海から行き来できるんですか」

「できますよ」

「そしたらお聞きしますけど、このあたりで北朝鮮の工作船が出没するとか拉致の話とかって噂を聞いたりしますか」

「いやー全然そんなんはないですよ」

「ありがとうございます」

 鳩が豆鉄砲を食らったような感じで答えていた。

 また県南部の尾鷲にほど近い紀伊長島という町の漁港でも漁師に話を聞いてみた。防波堤の内側に50隻ほどの小さな漁船が並んでいるその漁港を訪ねると、小雨交じりだというのに、70歳ほどの真っ黒な顔をした二人の漁師が修理の為なのか網をコンクリートの護岸に引っ張っていた。

 「沖に出たら国道みたいにして貨物船が走りよった。朝鮮の船はな、日本が経済封鎖する前の90年代、よう走り寄った。ここから拉致がされるかって。ここらはないよ。そんな怪しい船がおったらすぐにわかってしまうから無理。拉致するにしてもどうせ日本海側に運ぶんだよ。あっちはたくさん船が来とるし」

 本州のまわりを貨物船が廻っているという調査会の説明を漁師の話は裏付けた。しかしそれでも三重県からの拉致の可能性に関してはやはりとりつく島がなかった。やはり三重から拉致されたり、自ら船に乗ったりして北朝鮮へ行った可能性が皆無だといっていいのではないか。

 ところが辻出さんの友人のなかには、いまだ北朝鮮拉致説を信じている者もいる。

「霊能者の方に辻出さんのことを聞きに言ったことがあるんです。一人は女性の、もう一人はお坊さんかなんかの男性の年の人です。二人とも、『生きている。出てくるまで時間がかかる』と言っていました。女性のほうから、『外国のような影が見える』と言われ、僕は、北朝鮮に拉致されたのではないかとその時思ったのです。以後、その線で僕は見ていました。伊勢志摩の取材で会ったもっとも怪しい人物であるXについては後に知らされました。大方の友人は、今は、そいつに殺されたと判断したようですが、彼女はそう簡単に死ぬ人間ではありません。僕はまだ北朝鮮説を捨てきれません。最後に会ったとされるXは、その北朝鮮拉致になんらかの形でかかわったのではないかと思います。まあ、途方もない話ですが」

 万が一、北朝鮮にいるとしても、彼女本人が出てこない限り、生存を確かめようがない。

Written&Photo by 西牟田靖

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