捏造ドキュメンタリー番組は『イッテQ』スタッフが作っていた! 日本テレビ『24時間テレビ』のヤラセ疑惑問題
TABLO / 2020年1月3日 12時13分
「18年暮れに週刊文春が『イッテQ』のヤラセを報じた際、日テレはすぐに全面降伏をしたわけですが、それには裏があった。実は『(TABLOが報じた)〝本丸〟をこれ以上探られたくないため早々に降参した』というのが正直なところなのです。TABLOの報道を見て、日テレの制作スタッフたちは『この件がついに世に出てしまったか』と戦々恐々としていますよ」(日テレ関係者)
24時間テレビといえば、日本テレビ(代表取締役 会長執行役員 大久保好男・代表取締役 社長執行役員 小杉善信)のお家芸的看板番組だ。過去に〝感動捏造番組〟と揶揄されたことはあったが、ここまで露骨にヤラセが報じられたことは歴史上、初めてのことだった。現在、日テレ局内は報道について「このまま時がすぎるのを待つべきだ」「早期に事実関係を認めるべきだ」という2つの意見の間で揺れているという。
関連記事:ヤラセの証拠撮った! 日テレ24時間テレビの捏造疑惑 女優・黒木瞳のそばでずっと黙っていた“アイツ” | TABLO
捏造は前年から始まっていた
別の日テレ関係者が同局の姿勢を批判していう。
「実は、TABLOが指摘した24時間テレビのドキュメンタリーを制作したのは、文春がヤラセと断じた『イッテQ』のスタッフなのです。長年高視聴率を維持し続けてきた同番組の成功体験は、いつしか制作スタッフの姿勢を根底から麻痺させてしまったのでしょう」
『イッテQ! カレンダープロジェクト』と題されたタイ現地ロケの模様が放送されたのは、10年8月15日のこと。当時、制作スタッフは「カレンダーを作る」という名目で5千個のコムローイをあげている。
「その約1年後、今度は24時間テレビが同じ禁止区域でコムローイをあげたのです。制作スタッフの論理としては『前回もあの場所でコムローイをあげることができたのだから、今回も同じように村人に依頼すれば感動映像が撮れるんじゃないか』ということでしょう。至極安易な発想ですよ」(同前)
当サイトが指摘してきた24時間テレビの手法は、『イッテQ』から連綿と続くヤラセの系譜の中に存在していたのだ。だが、そこに「面白ければいいじゃないか」という論理は通用しない。言うまでもなく、24時間テレビは『イッテQ』のようなバラエティ番組ではない。『イッテQ』の制作スタッフは、感動を売り物にするドキュメンタリーの中にヤラセを盛り込むという禁じ手を犯したのだ。
いったい、彼らのヤラセの原点には何があるのか――。かつて週刊文春が報じた内容を元に「イッテQ」のヤラセの手法について改めて報じておこう。
参考記事:新証言が続々と 日本テレビは本当に大丈夫か 人の善意を悪用した『24時間テレビ』の罪が明らかに|久田将義 | TABLO
タイ人を馬鹿にした番組作り
タイ・バンコクから車で北上すること約6時間。避暑地で知られるペッチャブーン県の外れにあるS村に『イッテQ』の撮影スタッフが降り立ったのは17年1月のことだった。その日、約200人の村人が集まり、ある〝お祭り〟が行われたという。
〈カリフラワーの名産地で年に1度収穫を祝う祭りが開かれる〉
〈年に1度の祭りとあって村中の人が集まってきた〉
番組では、そんなナレーションに続き、「五穀豊穣を願う祭りです」という実況が流れ、村人たちの笑顔が画面いっぱいに映し出された。この日行われたのは、村人たちが二人三脚で泥沼を駆け抜け、20キロのカリフラワーを収穫する速さを競う勝ち抜きレース。この「カリフラワー祭り」の視聴率は歴代6位タイの22.2%を記録した。
だが――。S村の村長は文春の取材に対し、こう疑問を呈しているのだ。
「あれは、テレビ番組のコーディネーターを夫に持つN氏から『日本のテレビが来るのでラコーン・サン(短いドラマや芝居)を作りたい』と言われて行ったものです。『何かアクティビティをしたい』とテレビ制作側の話があり、話し合いの中で『カリフラワーを使ってやろう』ということになった。去年は野菜の値段がとても安かったので、カリフラワーを使ったゲームができたのです。あれは収穫を祝うものではなく、毎年1月の第2土曜日に行われる子供の日の行事です」
この日、会場には参加費用として500バーツ、優勝賞金として2,000バーツという金額を提示された村人たちが続々と集まったという。2,000バーツは日本円にして6,500円ほど。平均月収が4万円に満たないタイの農村民にとって願ってもない大金である。実は、それらの運営費はバンコクのM社がコーディネートを担当し、諸々の費用を負担していた。こうして「子供の日の行事」は「年に一度」の「五穀豊穣を願う祭り」にすり替わり、例年にない豪華景品を求めた村人たちが大挙してカリフラワー畑に押しかける騒ぎになったのだ――。
関連記事:これがヤラセのからくり 地元有力者が語る『24時間テレビ』とのやり取り 妄想ドキュメンタリーはこうして作られた! | TABLO
BPOの甘い判断
文春関係者が取材を振り返っていう。
「すべての企画運営を行っているのは、M社の社長ですよ。社長は文春の取材に対し、『最近は今までやってきたネタが尽きてきましたよね(笑)。いろんなことを〝お手配〟しながらやってきた』と捏造を認めていました」
名もない農村に彼らが残した爪痕は〝面白さ〟を至上命題とする人気番組の奢りだったのだ。一連の文春の報道を受け、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は「放送倫理違反があったと言わざるを得ない」との見解を発表。だが、一方でBPOは「バラエティ番組の企画として『祭り』を用意し、これを収録することはありえよう」と大甘の見解を披露した。それと足並みを揃えるかのように、一般視聴者の評価は『イッテQ』に同情的だった。「バラエティ番組なんだから面白ければ……」という声が大半を締めたのだ。だが、前述したように24時間テレビと『イッテQ』は同列に扱うべき番組ではない。
同番組を視聴した他局の制作スタッフが呆れ顔でいう。
「改めて放送内容を見ると『これ大丈夫か』という場面が少なくないんですよ。例えば、白いインクで『HELP JAPAN』と落書きされている象が登場しますが、これはどのような経緯で書かれたのか。また、スラムの人々が(日本の被災者のために)募金活動をしているシーンがありますが、あれは本当に日本のためだったのか。ヤラセということが分かった以上、今後様々な角度から検証が必要になってくる。ただ、〝チャリティー番組〟という分厚いフィルターを通じて番組を目にする一般視聴者が真実を見抜くのは困難でしょう」
善意の視聴者を欺き、現地のタイ人を貶めた日テレには猛省を促したい。(取材・文◎松井大志)
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