新成人の裁判傍聴 晴れの舞台に“前科”を背負う者たち 与えられた「自由」の代償とは
TABLO / 2020年1月13日 8時35分
黒沢翔大(仮名)は令和元年11月25日に20歳の誕生日を迎えました。新成人の仲間入り。とてもめでたいことです。これからは1人の立派な大人として頑張っていってほしいものです。
さてそんな節目となった誕生日の翌日。令和元年11月26日、彼は東京地裁の法廷に被告人としてやってきました。未成年であれば公開の法廷で裁判を受けることはないわけですから、さっそく大人としてのデビューです。
そんな晴れの舞台をしっかり傍聴席で見守ってきました。
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傍聴の際に取っているメモには彼の第一印象が、
「ガラ悪いガキ。いかにもヤカラ。半グレ」
と書かれています。いくら個人的なメモとはいえ、大人の方に対して「ガキ」と書いてしまったことは失礼だったなと反省しています。
彼の大人デビューとなった罪名は「千葉県青少年健全育成条例違反」と「職業安定法違反
」でした。
彼は高校中退後、実家を出て建築会社で働きはじめました。しかしそこはすぐに辞めてしまいました。建築会社の社長から、
「息子さんが最近仕事に来てないです。どうもスカウトみたいなことしてるらしい」
と連絡を貰った彼の父親はすぐ息子の暮らしている家に向かいました。
「会いに行ったら髪も金髪になってて、マトモじゃないと思いました」
このあとすぐ実家に連れ戻された彼ですが、しばらくして今度は、
「バーを友人とやる」
などと言ってまた家を出ていきました。
もちろんバーなどやるわけがありません。当時まだ未成年だった彼は汗水流して働くのはイヤだったのです。彼はまた悪い友人に誘われてスカウト業に戻りました。
そして令和元年10月10日。友人の紹介で当時17歳だった少女Aと知り合いました。2人は酒を呑みに行き、そこでAが、
「帰りたくない。泊まりたい」
と、ガキならではの雑な誘いをかけてきました。しかし彼も当時はガキです。2人はさっそくホテルに行きセックスをしました。この時点で青少年健全育成条例違反の構成要件が成立です。
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その後、2人は2回会っていますがその時はセックスはしていません。Aは彼と交際したいと思っていたようでしたが、彼はAと交際をするつもりはまったくありませんでした。にもかかわらず彼はAに対してラインで「好意を持っているかのような」メッセージを送っていました。
スカウトの仕事としてどこかに斡旋しようと思ったからです。A自身も、
「お金に困ってる。何か仕事があれば稼ぎたい。できたらガルバ(ガールズバーの略)で働きたい」
などと口にしていました。そこで彼は「カサイ」という人物に連絡を取りました。カサイが運営していたのはガールズバーではありません。いわゆるJKリフレと呼ばれる業種です。そもそもまともなガールズバーが17歳を雇うはずもないので、斡旋先は自然とこのような場所になってしまいます。
「オレの色恋に引っかかってるんで大丈夫です。まかせてください」
ガキの分際で何をつけあがっていたのかは知りませんが、このようなふざけたメッセージをカサイに送り彼はAを売り飛ばしました。こうして職業安定法違反も成立しました。
その後、Aは1人の男性客と「裏オプ」でセックスをした後、被害申告をして事件は発覚しました。
「気があるように見せかけて私を騙してJKリフレに紹介されました。気持ちをもてあそばれました。絶対に許せません」
と供述しています。
Aは知るよしもないと思われますが、カサイからスカウトバックとして彼に支払われた金額は1000円でした。
彼は今後は真面目に働いて生きていくそうです。大人ですから、それが当たり前のことです。華々しいデビュー戦を終え、彼は執行猶予と前科という重い荷物を背負うことになりました。
裁判官の、
「刑務所行かずに更正できるんですか?」
という質問には
「はあ…もうこれからはちゃんと真面目に…」
としっかり答えていました。
更正できるかどうかは知りませんが、1人の新成人の門出を心からお祝いします。(取材・文◎鈴木孔明)
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