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師走のヤクザ困窮事情「炊き出しの世界でのし上がります」

TABLO / 2014年11月12日 19時20分

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「自分はこの世界でのし上がりますよ」

 勇ましく、男らしい言葉であるが、この男が現在、身を置いている場所は「ネットカフェ」だ。彼は以前、暴力団に属していた。そして小さいながらも組長にまでなった人間である。今年で40歳。堅気になってやり直すにはギリギリの年齢だろう。

 この男性は昨今の不況のあおりを受け、現在はネットカフェ難民にまでなってしまった。その一方で現在は「炊き出し」をする団体のスタッフになっている。スタッフと言っても正式な雇用契約はなく、炊き出しの際に使う食材等を手配し、食事を作り、それを配っている「お手伝い」としての立場だ。だが、彼はこの「炊き出し」の世界で大きな夢を描いている。

「この世界に入ってまだ数ヶ月ですが、『炊き出し』はおいしい世界だと早々に気付いたんです。まず、匿名の寄付金がやたらと集まってくる。銀行口座に振り込まれるものもあれば、現金でそのまま届くケースもある。自分が見ただけでも、わずか2~3か月で数百万円の寄付金収入があった。今はこの『炊き出し』の世界を勉強している身。いずれは自分の団体を立ち上げて牛耳ろうと思っている」

 だが、そんな簡単にことが運ぶのだろうか。

「実は『炊き出し』というのはほとんど原価がかかっていない。食材は賞味期限切れのものを、ただ同然でメーカーやスーパーが分けてくれるので実際にかかる経費はほとんどない。寄付金はほとんど使わず、幹部の臨時ボーナスにしているところが少なくないんです」(前出・元組長)

 賞味期限切れの食材だけで「炊き出し」などして問題にならないのか。だが、ここにも絶妙なカラクリがあるようだ。

「炊き出しというのは、ほとんどカレーライスなんですよ。とりあえず食材が期限切れでも熱を通して殺菌すれば、あとはカレーの強烈な味でどうにかなる。もちろん肉なんか高価なので入れません。その代わり小麦粉を丸めたものを肉の代用として入れています。炊き出しだけに、それで文句を言われることもないんです」(前出・元組長)

 この男性が「炊き出し」をしているのは都内が中心だ。定期的に行っているため、関東近県からわざわざ自転車で駆け付けるものもいる。炊き出しの対象はホームレスに限定しているが、中には一般人らしき人物も多く紛れ込んでいるという。

「見分け方があるんですよ。荷物を沢山持って列に並ぶのがホームレス。荷物を持たず手ブラで並ぶ人間は生活保護とか単なる無職とかの貧乏人。そういう連中にはカレーの量も少なくするし、具が入っていないものをわざと出すんです(笑)。そうやってストレスを解消しながらも今は楽しくやっている。一度、ヤクザがここまで落ちたら、もはや失うものはない。今はどうにかこの『炊き出し』で成り上がってやろうと思っていますよ」(前出・元組長)

 暴対法、排除条例等でヤクザには厳しい時代が続いている。だが、ネットカフェ難民となった男の表情は思いのほか明るかった。もうすぐ寒い季節がやってくるが、「今年の冬はどうにか越せそうだ」と笑っていた。

Written by 西郷正興

Photo by jade.deakin

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