PTAが言葉狩り? 恥ずかしすぎる陰謀論がSNSで拡散中

TABLO / 2014年11月25日 17時30分

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 とある一枚の紙切れが、様々なまとめサイトで取り上げられ、TwitterなどのSNSで拡散されている。それは「PTAが酷い言葉狩りをしている!」といった内容で、保守速報などを情報ソースにしている方々からすると、反日・売国の証拠なのだとか。

 ではその紙切れに何が書かれているかというと、PTAや学校のプリント作成時に参考にするための、漢字とひらがなの使い分けについてだ。例えば「子供達」→「子どもたち」であるとか「益々」→「ますます」といった具合である。

 これが愛国戦士様たちの手にかかると「日本の文化を壊そうとする売国サヨク勢力の陰謀だ!」となる訳だが、どこぞの出版社や新聞社に務めた、もしくはライター経験のある人間ならば、どうしてこれが売国の証になるのか意味が解らないだろう。

 言葉や文章というものは、相手に伝わらなければ存在する意味がないものだ。したがって、それを読む人間の事も考えて、なるべく目に入りやすくする配慮をするのが当たり前である。私もそこまで日本語が達者な方ではないので偉そうな事は言えないが、少なくとも今回「売国! 反日!」とレッテル貼りをされている紙切れには、違和感を覚える内容はなかった。むしろ「どうしてそうする必要があるのか」がよく理解できる初歩的なものばかりなのだ。

 ではちょっとここで例文を出してみよう。下記の文章を「誰かに読ませて理解してもらう」という大前提があるものとして、どこを修正すべきか考えてみて欲しい。

(1) 絶賛発売中の司馬遼太郎大全集全二十巻を是非御購入下さい
(2) いまさらながらたくさんのふかわりょうのブロマイドを買ってしまった

 1の場合、一行の文章に漢字が多すぎ、これではパっと見て重たく感じてしまう。こうした場合は、もし私ならば「絶賛発売中の司馬遼太郎大全集」までは仕方ないとして、その後は「全20巻をぜひご購入ください」と続けた方が目に優しいと判断するだろう。

 2の方は、実は話題になっている紙切れの内容とは食い違ってしまうのだが、「いまさら」や「たくさん」は漢字にした方が良いと思われる。理由は1と逆で一行にひらがなが多すぎる(連続しすぎる)からだ。

 この辺りはこれという厳密なルールがあるのではなく、読む側へのデザイン的な配慮というだけである。 例えば段落や改行などには最低限のルールがあるが、それにしたって個人のブログと新聞社のニュースなどでは書き方が違って当たり前だ。紙媒体とネット媒体には、紙とブラウザという大きな差があるのだから、必要であれば「より読みやすいよう、伝わりやすいよう」に変えたって構わないだろう。

 漢字に変換できるものを全て漢字で書くというのは、考え方として一理あるのかもしれないが、読まされる相手の事を考えていない文字の塊では、どれだけ良い事を言っていたとしても情報として波及しない。単なるマスターベーションと受け取られて終わるだけだ。

 仮にもし貴方が 「日本が置かれた苦しい状況」や「日本を貶めようとする脅威」などについて書かねばならなくなったとして、相手に読んでもらえないような書き方をする事の方が「お国のためにならない」とは思わないだろうか? より多くの人々に主張が伝わるように配慮して書く事こそが、貴方がたの大好きな "お国" に対する誠意ではないのか?

 さて、今回のPTAで配られたとされる紙切れには、私が見る限りこのような当たり前の事しか書かれていなかった。一箇所だけ少し毛色の違う「障害」を「障がい」と書こうという注意はあったが、それもいらぬトラブルを回避しましょうという意味合いだろう。このように少し考えれば真意が理解できる内容なのだから、これを言葉狩りだ陰謀だと騒ぐ方がどうかしている。むしろそういう連中こそ、相手への配慮が足りぬ、また日本語の柔軟性や多様性を理解せぬ、日本文化を冒涜する者だと言わせていただく。

 たかだか漢字を開くかどうかなんて事だけで愛国者ぶれるなんて、実に幼稚で安上がりな愛国心である。日本をバカにするのもいい加減にしていただきたい。

Written by 荒井禎雄

Photo by Twitterより

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