ホームレス画家が逮捕 実家が裕福だったことがバレる 生活に困り果て思い付いた犯罪 裁判官の助言にも「今度は計画的にやります」
TABLO / 2020年1月26日 11時37分
山田佳林(仮名、裁判当時26歳)は半ば衝動的に実家を飛び出しました。
「実家で生ぬるい生活をしていたら、私の夢は絶対に叶わない」
彼女は画家になることを夢見ていました。美大を卒業後、ギャラリースタッフのバイトをしながら画家として活動していましたが当時は壁に突き当たっていたようです。
このままじゃいけない。
夢を追うために、「絵の修行」のために、自分を厳しい環境に置こうと考えての決断でした。
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夢を追いかけなければ……
実家を飛び出した彼女は知り合いのアトリエに間借りさせてもらって寝泊まりするようになり、そこで画家としての活動を始めました。作品の製作に明け暮れる毎日、そして絵画展を企画するなどしていました。
しかし、その生活もすぐに行き詰まってしまいました。
画材の費用、製作費、活動費、お金がかかることばかりです。開催した画展も赤字の方が多くその穴埋めもしなくてはいけません。
さらに間借りしていたアトリエは製作中の騒音などが原因で近隣からクレームがきて出ていかざるを得なくなりました。かといってアパートを借りるお金はありません。そんなお金があるなら作品を創るために遣わなくてはなりませんでした。彼女にとって、夢は全てに優先されるものだったのです。彼女は公園で寝泊まりするようになりました。ホームレスになっても、創っても創っても赤字にしかならなくても、創作を続けました。
しかしいくら切り詰めた生活をしていてもお金の問題は解決しませんでした。実家に戻れば解決できるのはわかっていました。彼女の実家はとても裕福な家なのです。
しかしその選択肢はありませんでした。
「実家に戻ったら夢はもう追えない」
それは絶望でした。そんな選択肢はあり得ませんでした。
それでもお金はやはり必要です。追い詰められた彼女の取った行動は「実家に侵入し金や通帳を盗む」でした。
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3000万円を持ち逃げ
――1年で20回も実家に侵入して、合計3000万円も無断で持ち出した理由って何なんですか?
「自分の家だしって思って甘えてました。ちゃんとした計画性がなかったと反省してます」
――20回も侵入したことについてはどう思ってますか?
「罪悪感はありました。でも、自分の夢を追いたかった。人の迷惑より自分の夢を優先してしまいました」
――カギを取り上げられた時とか、実家にセコムが入ってるのに気づいた時、どんなことを思いましたか?
「やめようとは思いませんでした。何も考えてませんでした」
――他人の家に入ろうと思ったことはありますか?
「一度もありません」
――これからも絵を続けるならまたお金かかりますよね?
「今後は計画的にできる範囲でやっていきます。私ならできると思ってます。できます」
被告人質問での検察官とのやり取りを聞いていてもあまり反省をしているような状況はうかがえません。家からお金を持ち出している犯人が自分の娘だとわかっていながらあえて警察に被害届を出し刑事事件にした父親は、拘置所に面会に訪れて
「きちんと反省して戻って来てもらいたい」
と話をしました。彼女はこの言葉に反発しました。
「絵を辞めろって意味だと思いました。でも、私は辞めません!」
この言葉からも反省はうかがえません。再犯の可能性さえ危惧される発言です。こんなことを言えば裁判で不利になるのはわかっていたと思います。それでも一切自分を取り繕うことなく話しました。これが彼女の本音であり、覚悟と信念なのだと思いました。
彼女が起訴されたのは住居侵入罪のみです。判決は罰金10万円でした。未決勾留日数分を差し引かれたため1円も払う必要はありません。
彼女は今後は新潟に拠点を移して創作活動を続けるそうです。
裁判官は判決宣告後に
「今後は地に足着けて生活してもうやらないように。自分の夢に向かって夢を実現してください」
とエールを送りました。このバイタリティーがあれば元ホームレス画家の夢が叶う日はきっと来るはずです。その日を楽しみに待ちたいと思います。(取材・文◎鈴木孔明)
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